第4話 お茶会(前編)

『アリア公爵令嬢様


  7日後に王宮でお茶会が開かれるのですが、

  もしご都合がよろしければ

  是非ご参加ください。


                  カーシャ』




そんな手紙がアリアの元に届いたのは、青の月に入った頃。そろそろ暑くなってくる、そんな時期のことだった。


「ティーナちゃん、お茶会に呼ばれちゃったんだけど、どう思う? お邪魔じゃないかしらねえ」


アリアがそう言いながら手紙を見せると、ティーナは目を丸くして、ついで笑顔になった。



「そんなことはありませんよ! なんといっても、姫様は龍なんですからね。龍は国の宝なんですから、邪魔だなんて思う人はいませんよ」


そう言うと、ティーナはアリアを連れて、とある部屋のドアを開けた。その部屋には、クローゼットがいくつも置かれており、等身大の鏡もあった。


「姫様のお部屋にある服も素敵なものばかりですけれど、せっかくのお茶会ですからね。1番良いドレスと宝飾品を使って、姫様の可愛さを皆様に知っていただけるようにしたいじゃないですか」


ティーナは躊躇なく部屋に入ると、すぐ側にあるクローゼットを開けた。クローゼットの中には、鮮やかな赤やピンク色の布で作られた、フリルの多いドレスが飾られている。


「こんな派手なもの……」


この年になって恥ずかしいと続けかけて、言葉を飲みこむ。アリアとしての感覚よりも恵子としての感覚の方が強いため、つい、老人としての振る舞いを心がけようとしてしまう。けれど、アリアとしては、まだ年若い少女なのだ。そう考えると確かに、派手なドレスを着るというのも悪くない。


「でも、それにしても、ちょっと派手すぎじゃないかしら」


思ったことを言葉にすると、ティーナは微笑みを浮かべた。


「今は青の月ですから、確かに、青か緑のドレスを着たご令嬢が多いかもしれませんね。でも、姫様は何色を着ても良いんですよ。龍は元から、自然の恩恵を受けていますから」


そう言って、ティーナは純白のドレスを持ってきた。


「白は、龍や皇族だけが身に纏うことができる色ですから、姫様にはこちらの方が良いのかもしれませんね」


そう言われても、アリアには龍である自覚はない。困り果てて周囲を見渡して、装飾が控えめな空色のドレスを手に取った。


「その……あまり目立つのも、良くないと思うから……」


「そんなこと、お気になさらなくても良いのに。でも、そうですね。姫様に似合わないドレスなんてありませんし、お好きなものを着るのが1番です」


ティーナは、持っていたドレスを全て、クローゼットに収納した。そして棚から、宝飾品を入れた箱を持ってくる。


「ドレスがお決まりになったのなら、次はこちらですね」


目の前で開かれた箱の中にある、豪奢な装飾品の数々。


(これは……長くなりそうね……)


アリアは内心でそう呟くと、せめて控えめなものを選ぼうと思いながら、箱の中に手を入れた。

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