第8話:一奈(いちな)

こんにちわ〜・・・お兄ちゃんいる?


ピンポンも鳴らさずいきなり入ってきた女。

まるで自分ちみたいに、ずけずけ僕に部屋に入り込んできた。


で当然プリンと、ばったり出くわすわけで・・・。

はじめて会った猫同士みたいに敬遠し合う。

片方は本当はインコだけど・・・。


「あ、一奈いちな・・・なんで?」


「やっほ〜お兄ちゃん・・・学校がお休みだから出てきちゃった」


一奈ってのは僕の妹。

本当の妹・・・本当の妹なんだけど、実は養女。

僕の父親の親友だった人の子供だったんだ。


父親の親友夫婦はふたり揃って事故でお亡くなりになって、身寄りがない一奈が

乳児院に預けられるって話を聞いて、父親は、一奈をほうっておけず情にほだされて、うちで引き取ってしまった。

だから彼女は「棚橋 一奈たなはし いちな」になった。


だから僕と一奈は血が繋がってないんだな。

戸籍上、社会的表向きは兄妹なんだけどね。


一奈はプリンを見るなり


「誰、この人?・・・」


「誰って・・・あなたこそ」


「あなたこそ誰?」


「私はプリンです」


「それ、あなたの名前?」


「そうですけど・・・」


「まあ美味しそうな、お名前?」


「あ〜プリン、ごめん・・・こいつ僕の妹」

「一奈って言うんだ・・・本物の妹だよ」


「そうなんですか・・・お邪魔虫が去ったと思ったら、またお邪魔虫? 」


「お邪魔虫ってなんですか?」


「まあまあ、ふたりとも仲良くしなよ・・・」


どうやら火花バチバチみたいな、プリンと一奈、最初っからこれだと先が

思いやられる・・・。


「一奈、何にしに来たんだよ」


「それなんだけど、あのね私、来年高校卒業するから、そしたら上京して

くるつもりだから・・・」

「ひとりで暮らすつもりだったけど、マンション借りたら家賃とかもったい

ないでしょ 」


「で、閃いたの・・・お兄ちゃんちにお世話になろうって・・・ 」


「なろうってって・・・一奈・・・そうか大学に進学するんだった」


「え〜ちゃんと教えたよ、大学合格したよって」

「忘れたの・・・ひどい、大事な妹のことなのに」


「あ〜ごめん、ごめん」


「で、それよりなに?・・・僕のところに?来るわけ?」


「と思ってその報告に来たら・・・いつの間にか彼女作ってるし」


「だな・・・そう言うわけだから、悪いけど他にマンション探してくれる?、ね」


「ヤダ・・・私、そのプリンちゃん?なんかに負けないもん」


「負けないからって、なに言ってんの?」


「プリンちゃんは今から、私のライバルになったの」


「ライバル?って・・・なんの?」


「恋のライバルだよ・・・お兄ちゃんは誰にも渡さないから」


およよ・・・それは耳を疑うような予期せぬ一奈の言葉だった。


つづく。

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