装備品

 もらってきた火をランプに灯し、明るくなった室内で。


「はい、良いですよ。どうですか?」


 腹ごしらえして食休みして、いざ装備品チェック! なんだけど。


「なんか、硬い」


 腕を回したりしゃがみ込んだりして、イグル様は眉をよせた。


「うーん、動かし辛いですか?」


 調節を終えたジャケットとブーツを着てもらってるんだけど、合わないかなあ。

 防寒防風防塵防刃……イグル様のまんまの見た目だと色々巻き込まれそうだし、カモフラージュもしたいんだけど……。


「んー……ちょっと、こう」


 イグル様が手を、胸にあて脚にあて──


「ん、よし」

「? 何したんですか?」

「合わせてもらった」


 言って、また腕を回して足を曲げる。


「???」


 あ、でもさっきより滑らかに動けてる?

 あれ?


「ブーツ、そんな形でしたっけ?」


 ジャケットも体にそった形になってる? ええ?


「ぼくの方に合わせてもらったから、そのせいじゃない?」

「ほ、ほおぉう?」


 あわせて…………ま、いいか。


「じゃ、この鞄を持って、マントを羽織ってもらえれば完成です」


 肩掛け鞄とフードつきのマントを掲げる。


「ハナは、服は変えないの?」

「私はこの上からマント着て、鞄とか背負って完成です」


 もともと山歩きの格好だからね! あまり変わりません!


「かばんの大きさ、けっこう違うけど」


 私の鞄はイグル様の五倍はある。


「ああ、大きいのとか主な食べ物は私の鞄に入れますので」

「重くないの?」

「大丈夫ですよー私力持ちなんです。ほら、ここにある荷物も全部、私がここまで持ってきましたし」


 ざっとベッドの上の小山を示す。

 念のため五日分の食料と、携帯の食器類と小さめの天幕テントと寝袋と……。


「……ああ……」


 出発する時にはイグル様の持ち物分軽くなるし。


「…………あっ忘れてた! 一番大事なもの!」

「?」

「イグル様、これ、これも持って下さい」


 少し大きくていかつめのダガーをベルトごと渡す。


「これ……」

「丸腰だと何かと狙われやすいので、牽制の意味もあります」


 イグル様は手にしたダガーを鞘から外し、刃を明かりに照らす。


「持ってるだけでいいの?」

「そうなることを願いますが、何かあった時には躊躇いなく使って下さい。……使ったことあります?」

「似たものなら、ある」


 イグル様は刃を鞘に戻し留め具をはめ、その上から優しくダガーをなでた。


「よろしく」


 柔らかく笑む顔に映る、緋の光と蒼の影が揺らめいて。


「ハナ……ハナ?」

「っ! いえ、はい」


 ……あっぶな! 怖! 美形怖!



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