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人を刺すなら言葉に限る。

そんな文章を読んだのは、耳にしたのは、いつだったか。まさにその通りだとこの身をもって味わった時には、取り返しがつかなくなっていた。

事の発端はほんの些細な事だった。あの日は虫の居所が悪くて、このままじゃダメだと自身の機嫌をとろうとした時だった。優しすぎる君は、それが故の発言で僕に油を注いで火を放った。悪意があっての言動では無い。そのことは頭では分かっていたのに、君に拒絶されたように聞こえて、刃物のような言の葉は僕の胸に深く突き刺さった。

「本当に、すまなかった」

決して許されることのない謝罪が君の部屋で反響する。こんなことを言ったところで時は戻りやしない。それでも言わずには居られなかった。あの日、言の葉で刺し返したことを、悔いずには居られなかった。

僕より体温が低いとは言え、あまりにも冷え過ぎている君を抱き締める。いつもより青白い顔で微笑む君は、何を思っていたのだろうか。その答えは僕には分からない。だから。

これから会いに行くから聞かせて欲しい。

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