短編集の予定。
まゆずみ
1
「何故この世は生きたい人間が死に、死にたい人間が生き残るのだろうか」
突然静寂の中に響く独り言にも取れる質問。それ発した者は不気味なぐらいいつも通り本から目を離さずに時折ページめくっている。今読んでいる本がその発言を生んだのか。そう仮定をして本の背表紙を確認したが知らない文字が綴られていて。それ以上の考察は出来ないと理解した。
「キミはどう思う?」
「ボク、は」
何を言えばこの場合正解になるのだろうか。そもそもその問いに解はあるのだろうか。きっと解は質問者の求むものである。それを当てれば自ずと必然と正解になるのだろう。だが、それが分からない。頭脳をいつも以上に動かしてみるが、どれだけ思考してもまとまらず空中分解していく。相変わらず本から視線が外れない質問者は一体何を求めているのだろうか。
「明日、答えを聞かせてよ」
視線が本から外れたかと思えば、そう言って笑みを浮かべている。それはあまりにも綺麗で不気味で。見惚れていたら、本は閉じられてしまった。
了承出来なかった後悔を今日に閉じ込められた。明日なんてこの世には無いのに。
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