第15話 人間との戦闘②
人間は額に汗を滲ませながら、俺たちを睨みつけるように見ている。
その間、エアストは普通のゴブリンを装って逃げていくフリをしながら、気配を消し、周りのゴブリンに紛れていく。
人間を中心に、俺たちゴブリンが周囲を囲っている状態のいま、人間はどうするのか。
「ははは、ゴブリンを甘く見過ぎていたか……。まさか、身体強化をできる普通のゴブリンがいるなんてな……。だが……」
独り言を話しながら、人間は残った左手で短剣を構える。
「一匹でも多く道連れにしてやる!!」
人間は威嚇するように叫んで、俺との距離を詰めてくる。
だが、俺はその場を動かない。
何故なら、俺の弟子がいるからだ。
「フン!!」
俺と人間との間に入ったのはシュッツだった。
シュッツの右手には盾が装備されている。
その盾で、人間の短剣を弾いている。
そんな光景を見ながら、俺とスタークは呑気に話し出す。
「おい、レーラー。あの盾どっから持ってきたんだ?」
「ん? 前の集落からそのままになっていた物だぞ?」
「そうなのか? 武器はほとんどダメになったって聞いていたんだが。それに、武器があるなら狩りも楽だったろうに」
「いや、武器はある程度の実力がつくまでは使わせるつもりがなかったんだ。それに、残りの使える武器はかなり少ないしな」
「ほ~ん」
そんな風に、話している間にも戦闘は続いている。
「チッ、ゴブリン風情が!!」
「何、言ってる、分からん」
人間の焦ったような言葉に、淡々と返事をするシュッツ。
人間とゴブリンでは操る言葉が違う。
だからこそ、シュッツの反応は淡白だ。
数分ほど戦い続けた人間とシュッツ。
人間は肩で息をするほどに疲弊している。
それに対してシュッツはというと、少し息が切れる程度で疲れた様子は見られない。
「はぁ……はぁ……。クソがっ……。なぜ、ゴブリン如きに」
こんな状況に至ってもなお、人間はゴブリンを下に見たような発言をする。
「追イ詰メラレテイル癖ニ、良ク俺タチヲ馬鹿ニ出来ルナ、人間」
「うるせぇ!! 俺は本来接近戦なんてしないんだよ!!」
「ソウカ。ダガ、ソレガドウシタ人間。イマ死ニソウニナッテイルノハ、人間ダ。ツマリ、オ前ハゴブリン以下ダ」
「~~ッ!!」
いまにも血管が切れそうなほどの憤怒を見せる人間。
だが、何を思ったのか、人間は左手に持っていた短剣をシュッツへと投げた。
「クソッ、クソッ。まさかゴブリンに負けるなんて……。だがもういい。俺はここで死のう」
何やらぶつぶつと物騒なことを言った人間は、魔力を練り始める。
そして、その魔力を左腕に集め、前へと突き出す。
「死ねゴブリンども!!」
どうやら人間は自爆するつもりで魔力を練っていたようだ。
明らかに制御できないほどに魔力を集めているところを見るに間違っていないだろう。
だが、そんなことなどさせない。
「エアスト!!」
俺が名前を呼んだ瞬間、人間の首が落ちる。
「師匠、俺を呼ぶのが遅いですよ」
そんな風に悪態をつくエアスト。
俺はそんなエアストに軽口を叩く。
「いや、エアストなら言わなくても行動するかなと」
俺とスタークは人間の遺体に向かって歩き始める。
もちろん、周囲に他の人間がいないかどうかを探りながら。
だが、魔力感知には何も引っかからなかった。
「それにしても、何で人間がここにいるんすかね?」
「さぁ」
エアストがシュッツに聞くも、シュッツは適当に返事をする。
シュッツに変わって、俺が推測を言う。
「おそらくだが、周囲の魔物を狩り過ぎたのが原因だろう」
「そうなんですか?」
「ああ。人間も魔物を狩っているはずだからな。いつも狩っているウサギ型の魔物が減れば、警戒もするだろうよ」
「レーラーの言うとおりかもしれないな。これは早急に力を付けるべきかもしれない」
スタークの発言で、俺たちの間にピリッとした空気感が発生する。
続けて、スタークは言う。
「集落の皆を集めてくれ。簡単にだが、今後に関して話す」
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