第13話 辺境の街

とある冒険者視点


 ここは辺境の街サクリ。

 建国時から国を魔物から防衛するために作られたのがこの辺境の街だ。

 建国時は防衛の最前線ということで敬いがあったが、年月が経つにつれて、この街は中央の都から田舎風情とバカにされるようになってしまった。

 そんな辺境の街の冒険者ギルドには他の街とは比べ物にならないほど強い冒険者が集まっている。


 当然だが、防衛拠点が必要になってくるほど、この辺境に面する森は危険な魔物が多い。

 ゴブリン程度の魔物だって、定期的に狩らなければ街を崩壊させるきっかけになってしまう。

 そういった事情からこの街の冒険者はかなり強い。

 俺はそんな優秀な冒険者たちの中でもトップに近い存在だ。

 だから、よく依頼が回される。

 どんな依頼が回さられるか。

 それは……。


「三か月近く前に熟してもらった依頼だが、今月も君に頼みたい。実力者の多いこの街の冒険者ギルドでも、狩人としての能力が一番だと言われる君に」

「現役時は最強に最も近づいた男であるギルド長にそう評されるのは光栄ですが……。また、森の調査ですかい?」

「そうだ」


 そう、俺にはよく調査依頼が回される。

 ギルド長が言ったように、俺は狩人や斥候としての能力がかなりの高水準で備わっている。

 罠への察知能力から罠の解除、さらには気配を消す技術だってこの街で負けたことはない。

 

「ギルド長。俺ばっかり調査依頼を熟していいんですかい? 能力のあるやつに、狩人としての実践として鍛えた方がいいのでは?」

「ああ、その考えは考慮するべきだ。だが、前回もそうだが、今回もそれなりの理由があるのだ」

「それは?」

「いつもだったら、複数のパーティでの持ち回りで依頼を頼んでいたのだが、今のギルドに調査を頼めるようなパーティがいないのが一つ。前回の魔力の放出を感知した原因が発見されていないことが二つ。最後に、街に近い森の中でウサギ型などの小型の魔物が減っているのが三つだ」

「なるほど……。調査依頼を受けられるようなパーティがいないってのはなぜですかい?」

「一つはダンジョンに挑戦するって出ていったな。他は、護衛依頼を受けていたはずだ。そんで困ったことに護衛依頼で出ているパーティがそこそこ多くてな……。あとは、結婚するとか何とかで引退したなぁ」


 ギルド長の理由に、俺はついついため息をついてしまう。


「はぁ……。んで、二つ目の魔力の放出の件は俺が関わっていた奴ですね?」

「そうだ。おそらく何らかの強力な魔物が発生したものだと思っていたのだが、まだ発見できていない」

「確か、俺が三か月前の調査に出たんでしたよね? 何かしらの魔物の戦闘跡を見つけたんですが、その後の足取りが消えちまったんですよね」

「ああ、お前なら見つけられるかと思ったんだが、運悪くお前が依頼に出ているときだったんだ。かなりの魔力の放出を感じたから実力の足りない奴を調査に出すわけにはいかなかったからな」


 ギルド長が言っている通り、何らかの魔力を感知したわけだが、その量がこの街近辺で感じるには大きすぎたわけだ。

 確かに、辺境の街で高レベルな冒険者が多くいる街だが、下手に魔物を刺激したくはなかったがために、気配消しが上手い冒険者が必要だったわけだ。


「そして、最後の件だが……。どうやらウサギ型の魔物が近辺からどんどん減ってきているらしい」

「らしいってのは……、曖昧っすね」

「ウチのギルドにも若手の冒険者ってのはいるんだが、ウサギ型の魔物が取れづらくなったって報告はまだ数件しかないんだ。だから、曖昧なんだ」

「でも、無視はできない、と」

「そうだ。もしかしたら魔力の放出の件と関係しているのかもしれないという考えがちらついてな」

「それはギルド長の勘ですかい?」

「そうだ」


 俺たち冒険者で長く成功していたやつの多くが自分の勘に敏感だ。

 今日は何かおかしい、調子が悪いように感じる、探索地域での足取りが重いなど感じ方はさまざまだが、高レベルの冒険者ほど自分の勘を大事にする。

 その常識に従って、ギルド長の言葉を受け取ると、今回はギルド長ほどの実力者が気にかけなくてはいけないことが発生し始めていると考えるべきだろう。

 

「わかりました。その調査依頼受けます」

「そうか、受けてくれるか!」

「ええ、それにギルド長の勘を信じて、今回は前回以上に本腰を入れて調査します」

「おう、そうしてくれると助かる」


 という訳で、俺は冒険者ギルドを後にした。

 依頼を受けたその日はとにかく入念に準備した。

 翌朝、街の門が通過できる時間になったらすぐに街を出て、俺は森の方へと向かっていった。

 森に着いた俺は、三か月前の戦闘跡を中心に探索していった。

 結果、何も見つからなかった。

 だが、俺は珍しい場面に遭遇する。


 進化していないはずのゴブリンが魔法を放っていた場面に出会ったのだ。

 その場面を見たとき、俺はもしやと思い、行動に迷った。

 街に報告しに戻るか、そのゴブリンを追跡するかだ。

 進化してもいないゴブリンが魔法を放っているというときは、知能の高い指揮を取れるようなゴブリンが生まれた可能性がある。

 だが、あくまで可能性で、確定したわけではない。

 俺はその情報を確定させるために、そのゴブリンを追いかけていった。


 結果、俺はゴブリンの集落を発見した。

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