第46話 目指すもの

 新しく弟子を迎えて、一週間が経った。

 俺たちはいつものように、川へと集まり修行を熟していた。

 

「レーラー、もう自分の能力は把握できたか?」

「ああ、能力の把握自体は出来たぞ。まだ、細かく制御は出来ないがな」


 俺はスタークに返事した通り、自分の能力をある程度把握することが出来た。

 一週間前の俺のお披露目のとき、俺の治癒魔法も軽く紹介したのだが、自分が思ったよりも多くの魔力を消費していることが感覚的には分かった。

 それから俺は、治癒魔法などの能力を完璧に制御できるように修行していた。


 一週間前のことを思い返していると、スタークは弟子たちの方を見ながら話を続ける。


「それにしても、弟子一号二号は強くなったな」

「ふん。まだまだ強くなれるだろうよ」

「結構やれるようになったと思うが、なかなか厳しい師匠だな」


 苦笑するスターク。

 これからスタークの言いたいことは分かる。

 俺もそろそろ許可してもいいかと思っていることのはずだ。


「レーラー、そろそろ弟子一号二号は狩りに出してもいいんじゃねぇか?」

「そう思うか?」

「ああ」


 スタークは弟子たちの方を見ながら、話を続ける。


「お前が進化したあたりから、弟子たちは確実に心境の変化があったはずだ。実際に、ここ一週間の修業の様子を見ていれば分かる。そろそろ頃合いじゃねぇか?」

「……」


 俺はスタークの問いかけに無言で返す。

 数秒の間、無言を貫き俺は口を開いた。


「スターク」

「なんだ?」

「集落の戦力増強したいか?」

「ああ」

「そうか」


 俺が聞きたかったことは聞けた。

 そして、スタークの返事を聞いて、決断した。

 



「さて、今日の修業は終わりだ。ついでに、弟子一号二号は話がある。三号も聞いていくか?」

「はい、聞いていきます」


 修行の終わりに、俺は弟子一号二号に命令を出す。


「弟子一号二号」

「「はい」」

「明日から森での魔物狩りに許可を出す」

「「?!」」

「さっそく明日から森に入るか?」


 俺の問いかけに、素早く頷く弟子たち。


「なら、明日から狩りに行ってきな」


 俺はそう言葉を発したあと、弟子三号に言う。


「三号」

「はい」

「お前はまだまだ狩りに行かせん。もっと強くなったら行きな」

「はい」


 そんなやり取りをした翌日。

 弟子一号二号は軽い怪我をしたものの、狩りを成功させて帰ってきた。

 その後、弟子たちは自分の狩ってきた獲物を喰らい、眠りについた頃。

 俺はスタークと話をしていた。


「今日は月が綺麗に見えるな」

「そうだな、天気がいい証拠だ」

「それで、何の用があったんだ、スターク」

「弟子たち以外の集落の皆も戦力を強化したい。頼めるか?」


 スタークは俺の方をじっと見て、言った。

 俺はスタークの視線を受け止めた後、月へと視線を戻した。


「スタークが望むことなら、やってやろう」

「そうか、ありがとう」

「礼を言われるほどじゃない」


 俺たちは無言で月を見る。

 そして、思い出したように俺は口を開く。

 

「今の集落にいるゴブリン全員を進化させるのか?」

「いや、俺とお前以外で五体進化出来たら良いと思っている」

「五体か。集落内の十分の一の数だな」

「ああ」

「スタークは戦力を増強して、何がしたい?」


 俺が常々したかった質問をする。

 スタークは戦力増強した先に、何を見ているのか。


「平穏な暮らしをしたい。誰も飢えることなく、森の魔物に怯えることのない暮らしをしたいんだ」

「そうか」

「あと、もう少し森の深いところに拠点を移したい」

「? 何故だ?」

「ここから人間の街は近すぎるからな。いつ人間が来るかと思うと、な」

「なるほどな。それなら尚更協力しなきゃな」


 俺はスタークへと視線を戻し言う。


「俺たちも強くなろう」

「そうだな」


 スタークは頷いた。


「これからは戦力をどんどん強化していこう」

「ああ。俺たちの未来のために」


 この話をした一か月の後に、弟子一号二号は進化を果たした。

 俺とスタークの戦力強化は順調に進んでいる。

 より平穏で幸せな生活をめざして、俺たちは戦力を増強していく。


___________________

あとがき

 この話で一章の本編は終わりです。


 ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。

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 本当にありがとうございました。

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