3話「ミラクル☆パピよん」

◆◆◆


 ──人気迷宮魔導書作家、パピよん☆。

 個人同人サークル『ミラクル☆パピよん』代表であり、作家。

 数年前から活動を始め、瞬く間に最大手の座を掴んだ。

 繊細かつ大胆なコーディングによる質の高い魔導書グリモアルは、なんと通販限定。

 売り出されると即時完売であるにも関わらずトッププロ探索者シーカーも愛用しているほどだ。

 魔導書作家としての腕の確かさはもとより、SNSでのパピよん☆も人気の一端を担っている。


 端的に言えば、露出が激しい。

 麗しき黒髪ロング、眼帯、ゴスロリ。

 顔はほとんど出さないが、足と鼠蹊部が丸出し。

 どこに出しても恥ずかしくない、病み系美少女である。

 ついでに、病み病みアピールも激しい。

 男心をガッツリ掴む投稿を欠かさない。


 超凄腕の魔導書作家。

 そして、壁サーの姫。


 迷宮魔導書グリモアル作家パピよん☆の人気は揺らがない。


「……これでよし、と」

 パピよん☆は、黒のニーハイを引き上げる。

 自室のパソコンの前で、くるりとまわってポーズを決める。

 よし。眼帯も、にんじん色のうるうるグロスもばっちりだ。

 これから作業配信に挑む。

 赤スパチャちゃりんちゃりんの、お布施ガッポガポの未来へ向けて出発だ。

「あ、いけない」

 カメラの先に置きっぱなしの学生鞄をしまう。

 身バレは全力で避けなくてはいけない。

 ──樹学院高校の指定カバンだ。

「さて、やるか」

 最後の仕上げに、パピよん☆は──

「……準備おーけぃ」

 麗しき黒髪ロングのウィッグをかぶり、美少女に変身する。


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