第117話 教訓
乗り物が苦手なフェラクリウスの事もあり、二人は歩いて移動する事にした。
旅路はスムーズに進んだが、途中いくつか変わった出来事があったので簡単に記しておく。
「悪い、カートちょっと待っててくれるか」
道中、フェラクリウスが唐突に切り出した。
「どうした、何かあったか?」
「ああ、ペニケが蒸れちまった。
革製だからどうしても通気性に問題がある」
「…そう。
あのさ、ちんちん勃ってないときは
付けなくていいんじゃないか?」
カートの提案に答えず、フェラクリウスは近くにあった木の陰に隠れてペニケ位置の調整を始めた。
すると。
「この変態野郎!よくもやりやがったな!?」
いきなり中年の低い怒鳴り声が聞こえた。
罵られているのはどうやら自分らしい。
「なんだ、何の事だ?」
木陰でペニケを調整しているだけなのに、とでも言わんばかりにフェラクリウスが問う。
「アンタ、いまワシの
ヌこうとしていたな!?」
とんでもない誤解をされてしまった。
いくらフェラクリウスが日に最低三度処理する男だと言えど、こんな目立つところで抜くようなデリカシーの無い男ではない。目立つところでペニケを正すデリカシーの無い男ではあるが。
「違う、蒸れてしまったペニケの中を
換気していただけだ」
「嘘を吐くな!
ヌこうとしていたじゃないか、
ワシはこの目で見たぞ!」
「誤解だ。
第一こんな目立つところで処理なんかするかよ」
「だからこそだ!
男ならみんな目立つところで
思いっきりヌいてみたいと思うもんだ!」
確かに、目立つところで人目をはばからず思いっきりヌくのは男の夢と言えるだろう。
だが、自分がそうだからといって他の人たちもみんなそうだと思い込むのはあまり正しい事ではない。
そういうところを自制して生きている人も中にはいる。
「やれやれ。酷い誤解だが…。
確かに、紛らわしい行動を取ったという点では
こちらに非があるかもな。
ではどうすれば納得してくれるんだ?」
「そんなの決まっとろうが!」
オヤジは半笑いを浮かべながらフェラクリウスの方へにじり寄ってきた。
「ワシのもヌいてもらおう…」
そう言っておもむろに自分のズボンを降ろそうとした。
フェラクリウスは一心不乱に逃げ出した。
更に街道を行くフェラクリウスとカート。
少し進んだ先で何やら数人の男たちがたむろしている。
聞けば商人たちの引いていた荷車の車輪が溝にはまって動かないらしい。
荷車には山ほどの食料が積まれており、これらを降ろして荷車を持ち上げる必要があるのだというが、俵が重くて苦労しているらしい。
二人は手を貸す事にした。
怪力のフェラクリウスと、操氣術を学んだカート。更に道行く人々が次々に手を貸して、なんとか荷車は溝を脱する事が出来た。
商人は手助けしてくれた者たちに礼として酒を渡そうとした。
「特にこの酒はとても貴重な酒だ。
だが、残念ながら一本しかない。
みんなで分けるにはちと少ない」
なんやかんやのうちに手を貸した男手は八人にもなっていた。
そこで一本の高価な酒瓶を掲げ、商人は余興を始める。
「そうだ、みんなで地面に美女の絵を描こう。
一番早く描けた者がこの高い酒を飲めるというのはどうだ」
「絵なんて描けねえよ」
カートとフェラクリウスは競争を辞退し、普通の酒を受け取った。
残った男たちはこぞって参加する。
商人の合図でいっせいに描きはじめ、開始から三分。
一人の男が誰よりも早く、見事な少女の絵を描いた。
男はまだ描き終えていない男たちを煽るように笑った。
「遅いな、お前たちは。
俺なんてお前たちが描き上がるより先に、
ペニも描けるぜ」
自慢げにそう言うと男は少女の股間に立派なペニを一本生やした。
それから高い酒に手を掛けようとしたとき、別の男が待ったをかけた。
「待ちな、お前は失格だ。
ペニが生えてたらもう美女じゃねえだろう!」
「違う、この子の心は女の子だ。
だから、これは“美少女”だ」
「ペニが生えてりゃ“男”だ!」
「いいや“男”じゃねえ、“男の娘”だ」
「“男の娘”は“女”ではないだろう」
「いや、“男の娘”は部分的には“女”だ!」
「部分的には“男”だ!」
「“女”の部分があれば“男”の部分があっても“美少女”だ!」
「この子は“男”でも“女”でもねえ、
だが“男の娘”という立派な一つのジャンルとして
認められるべきだ!!」
話題が熱を帯びていく中、カートはフェラクリウスに目配せして先を急いだ。
残った男たちの談義は一晩中盛り上がった。
翌日、二人の男がこの道を通った。
男たちは地面に描かれた無数の美女の絵に気付く。
ひとつ、一段と上手く描かれている男の娘の絵を見た男が言った。
「おお、なんと可愛らしい少女の絵だ」
もう一人の男が訂正する。
「馬鹿、よくみろ。これは男だ。
ペニが生えている」
気が逸ってしまった。
描かれた男の娘を少女と勘違いした男は思わず股間を
「ははは、馬鹿な奴だ。
こいつ、男に勃起していやがる。
なんてみっともない奴だ」
男に勃起する事はみっともなくも恥ずかしくもないが、笑われた男は股間以外をしょんぼりさせた。
股間だけは堂々と
そこに偶然通りかかった老人が男たちに言った。
「ほっほっほ。
そう言って笑っているお主のペニも
半勃起しておるではないか。
勃起角が100度だろうと50度だろうと、
勃起してしまった事には変わらぬであろう」
そう指摘した老人を見て、男たちは驚愕した。
おそらく八十近い年齢になるであろう老人のペニは170度、先っぽツヤツヤにいきり立っていた。
以来、老人はペニ仙人として皆に崇められた。
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