第47話 戦士の覚悟
「カート、お前は街に戻ってろ」
今まさに波紋党のアジトに向かおうというタイミングで掛けられた言葉に、カートは耳を疑った。
「…どういう意味だ?」
つい先程相棒と呼ばれ気をよくしていたカートにとっては冷や水をぶっかけられたような心境だ。
話が違うじゃねえか。
「ここから先は守ってやれん」
それも昨日の話と矛盾している。
「そりゃあおかしい!
テメェのケツはテメェで拭くって条件で
同行させてもらったはずだぜ。
ハナっから守ってもらうつもりはねえ」
カートがフェラクリウスを睨みつけて
「足手まといにはならねえ!
俺もついて行くぜ!!」
強い想いが乗り移った熱いまなざしだった。
対照的にフェラクリウスは静かに、冷ややかなまなざしをカートに向けた。
「…構わんがカート」
フェラクリウスはカートの肩を抱き寄せると、案内人に聞こえないように耳元で囁いた。
「俺が死んだら
なんとしてでも逃げろ」
その言葉に一瞬でカッとなったカートが腕を振りほどいて怒鳴った。
「馬鹿にすんじゃねえ!
そんなみっともねえ真似が出来るかよ!!」
何事かとビーディーが振り返る。
フェラクリウスはカートを窘めるように落ち着いた口調で説明を始めた。
「カート。
これはそんな小せぇ話じゃねえんだ」
「ああ!?」
「俺が死んだらお前が城に戻って伝えるんだ。
ここで何が起きているのかを、ダンテに。
これは俺たちにとって何よりも大切な任務だ」
「国民が納得する理由がなければ
ダンテは動けない。
だが俺が死ねばそれは
ダンテが動く理由になる」
「お前まで死んだら、
誰がそれを伝える?」
これから死地へと赴く者の覚悟。
万が一のことを想定し、その先をカートに託すつもりだった。
カートはフェラクリウスと最初に会った時の言葉を思い出した。
俺は…まだまだ甘い。
「…あんた、
そのために俺を連れてきたのかよ…?」
「そんなんワケねえだろ。
俺だって死ぬつもりは無い」
自身の力の至らなさを噛み締めるカートの肩を、フェラクリウスは優しくポンと叩く。
そういうケースもあるという事を、フェラクリウスは伝えたかった。
先に示し合わせておくことが実戦経験の乏しいカートにとって重要なのだ。
「これは単なる心得だ。
この先何が起こっても
感情に流されず果たすべき行動を取れ。
今は国家の一大事なんだ」
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