第45話 打倒宣言


気を失っていた賊の一人が目を覚ました。


…意識が混濁している。


身体を起こすと目の前には雲を衝く大男。


隣にもスラっとした背の高い若者が立っている。


こいつらは…!


自らの任務を思い出し、腰に差した剣に手が伸びる。


…が、無い!


立ち上がろうと膝をつくも、脇腹に激痛が走りぐらりとよろけて崩れ落ちてしまった。


ようやく彼は自分が置かれている状況を理解した。


賊たちの武器は全て取り上げられ二人の後方に乱雑に打ち捨てられている。


「波紋党の人間だな」


フェラクリウスが問いかける。


「…あんた何者だ?」


「まずは聞かれた事に答えろ」


質問を返そうとする賊との会話にカートが割って入る。


腕を組んで仁王立ちのフェラクリウスに対し、カートは抜き身の剣を手に威嚇していた。


「もう一度聞くぜ。

 波紋党の人間だな?」


「…ああ」


三人のやり取りに反応して、気を失っていた他の盗賊たちも目を覚ます。


「俺たちは国王から遣わされた

 波紋党討伐の先遣隊だ」


「軍人…」


いよいよ、お終いだ。


そういった絶望の色が表情から見て取れた。


「とうとう国王が

 討伐隊をよこしてきたか…」


「心配するな。

 お前たちを罰するつもりは無い」


フェラクリウスは盗賊たちを安心させる言葉をかけた。


おいおい、勝手に決めていいのかよ。


カートは心配そうにフェラクリウスの顔を伺う。


真っ直ぐ、力強い眼差しで相手を見据えていた。


…これでいいのだ。


きっと国王も同じ判断を取る。


だからこそ、国王はこの男に任せたのだ。


「事情は聴いている。

 老師に脅されてやむを得ず

 従わされていたのだろう」


「…俺は、俺たちは…」


こみ上げてくる感情を言葉に出来ず、男たちが顔を伏せる。


苦しかったのだろう。


よくよく見れば、みな頬がやつれ疲れ切っている。


心身ともに相当の負荷がかかっているようだ。


「俺たちの目的は老師ただ一人。

 奴のアジトへ案内してくれないか」


「!!

 アンタ、まさか…」



「俺が老師を倒す」


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