第20話 オンファロスの一夜


その夜はオンファロス城に一泊する事になった。


夕食は質素な軍用食であった。


客人も満足にもてなせず申し訳ないとダンテは詫びてきたが、フェラクリウスにとってはむしろ好印象だった。


その席でも二人は雄弁に語り合った。


フェラクリウスもダンテも、互いに旧知の仲と再会したように饒舌じょうぜつになっていた。


ほんの半日前に出会ったばかりだというのに、はたから見れば二人は気心の知れた親友にしか見えなかった。



夕食後に案内された客室は王都ネーブルを一望できる高い塔の上層にあった。


窓から差し込む月の光を浴びながら、この一日を振り返る。


シオンは親を説得出来ただろうか。


…別れ際の様子を見るに心配はいらないだろう。


マテオは今も民の為に奔走しているという。


思えば彼の言葉に偽りはなかった。


次に会ったら感謝を伝えなくてはな。


…ダンテとの決闘は肝を冷やした。


だが、奴と出会えて本当によかった。


旅の中、尊敬出来る人間とは数多く出会えど自分と互角以上に戦える者を「友」と呼んだのは初めてかもしれない。


フェラクリウスは男と交わりたいと思ったことは無い。


それは今も変わらない。


だが、美しい尻に貴賎きせん無し。


ダンテは紛れもない「ええケツ」であった。


激しい夜になるな…。


フェラクリウスはベッドに横たわるとまぶたに焼き付いた尻を想い夜の剣に手をかけた。

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