第32話 大人への階段

◆◆◆ 32話 大人への階段 ◆◆◆



「今度は丈夫さを追求して作らせた。トマホークは同じだけどな」


デニスが言ってる箱の中には新しい剣が入っていた。


チタンの短いサイズの片手刀、もう少し分厚い無くなった手作り大鉈代わりの両手用の刀。そして両刃の斧」


「全てが重くなっているが、今の圭一には問題無いだろう」


全てチタンの一本モノで作られており、無骨さは変わらないが、分厚く作られたモノは、確かな耐久性を表していた。


「ああ、これ位は軽いくらいだ。それに今度はこの鉄棒も持って行く」


もう少し長い方が好みだが、此処のトンネルダンジョンは狭い。

上手く行けば他のダンジョンはもっと長いモノの方が良いだろう。



「それは圭一の好きなように持って行けば良い」


「分かった」


いつものグロック二丁にM27を背中に背負う。ベストにはマガジンを大量に入れ、背中のリュックにはいつもの水やエネルギー飲料やタオルなどが入れられていた。




 暗くなりつつある実家の横で最終確認をした俺らは、再びトンネルへと突入する。


土台と鉄板を繋ぎとめていたクリップを取り、滑車を付けた支柱に渡したワイヤーをエンジン付きの巻き取り機で引っ張り上げる!



隙間が開いていく隙にこの前程では無いが、溢れ出て来るスライムモドキにグレネードランチャーを発射!


木っ端みじんに吹っ飛ぶスライム!

すかさず穴に肉薄する海兵隊が手りゅう弾をポンポンと幾つも中に放り込んだ!


ドンッ!ドドドンッ!


慎重だった日本とは大違いだ。

騒音?なにそれ?

衝撃?そんな間に殲滅するわ!


近代兵器を使い一気にザコのスライムを殲滅する!



「ゆっくり付いてこい!」


穴へ向けて突貫し、鉄棒の一振りで動いていたスライムが爆発するように飛び散り、足の一蹴りで同じように塵となっていく!


思っていた通りだ。


Bランクになって破壊力がいっそう上がっている!


ジャンプ体勢に入っているスライムを一振りで塵に変え、駆け足で先に進んで行く。

今度は海兵隊200名がエボリューションの対象だ!


のろのろ付いてくると出口までいくぞ!


意外に少ない敵対生物を鉄棒で爆散させながら先へと進んで行った。


次に出て来たサソリモドキを鉄棒で圧壊させる!

数匹だけを残しながら先へと進む!


今まで倒した敵対生物の残骸が無い事は以前から気が付いていた。これはダンジョンみたいに時間の経過と共に消えてなくなるのか、この壁や床に吸収されていくのだろう。



 駆け足で進む俺は、僅か1時間の間に以前撤退した狭角のトの字型の分かれ目へと出て来た。


アンブッシュ待ち伏せなんだろ!」


新たに持って来た手りゅう弾を一発ポケットから取り出し、安全ピンを抜いて放り込む!



ズボオオン!


大クモの手か足の一部が飛び散ってきた!


横穴に入った俺は、つま先に鉄板が入っている安全ブーツで残骸を蹴り飛ばしサラン出でて来た大クモに対峙した!



こいつらは体と手足で穴いっぱいになる大きさだ。

通常どちらも正面からぶつかり合うしかない。

だが、今の俺の速さなら!



「りゃああ!」


毛も生えていない気持ち悪い腕をすり抜け、一気に顔面を鉄棒でブッ叩く!


加速がついたままで振り抜く鉄棒が、頭を爆散させながら身体まで一気に寸断した!


「もう一匹!」


足を踏ん張り、今度は足場を作ってからもいっ切り鉄棒をぶん投げる!


逃げ場のない大クモは回転しながら向かって来る鉄棒を避ける事が出来ずにそのまま二つに分かれた!


「行ける!」


だが、この脇道は僅か50mも以下に内に行き止まりになり、慌てて戻って行く!


時々現れる大クモを一振りで寸断し、正に無双状態の俺は未知の世界へと進んで行く!


更に1時間程無双状態が続き、体液でヌルヌルになった俺は小休憩を取った。


タオルで顔や手を拭き、水筒から冷たい水を補給する。


十分も休憩をしていると、デニスが追いついて来た。



「やけに飛ばすじゃねえか。追いつくだけで大変だぜ」


「最強の道具として文句は無いだろ」


「…………まだ腹を立てているのか?黙っていた事は謝る。だがな、マリアも強制された訳じゃねえんだ。お前のデータを見て志願したんだぞ。それだけは分かってくれ」



「騙したのは変わらない、あの女と何が違うんだ?」


「中国女とか?簡単だ。今回は極東にいるシールズに本国から圭一の保護と観察の依頼があった。その中で女性と付き合わせる、出来れば結婚させ本国に連れて行くと言う指示も入っていたんだ」


「…………」


「色んなデータを見せられ、数少ないシールズ女性隊員や海兵隊の女性の中で唯一人手を挙げたのはマリアだったのさ。そしてこう言ったんだ、「気に入らなければ付き合う事はないけど、それでも良いのか」と。

今まで誰とも付き合っているのを見た事の無い鉄の女が手を上げて、今まで一緒にいたんだぞ。それは命令じゃ無くアイツの気持ちさ。命令は切っ掛けに過ぎない」



「それを信じろと?」


都合が良い。

そんな話を信じろと?



「同じ闘いを共にする仲間だぞ。信じられなくて背中を任せられるか?」


「…………」


「好きにならなくても良い。アメリカなど来なくても良い。仕事と私生活は別物だ。声くらいは掛けてやってくれ」


「…………分かりました、すみません」



仕事は仕事。

私情を気にして今まで上手く行っていた作戦を台無しにするのも…………な。



「そう言えばアイツは根っからのクリスチャンらしいぞ。一発やったら逃げられないと思えよ」



「ッ!」


ちょっ!

そんな一発やるって!

経験も全くない俺にどうしろと?



「男同士で何言ってんの、敵対行動中よ!エロ話は後でしな!」



そんな時、デニスの相棒であるマリアがゆっくりと歩いて来た。

学校じゃ白い目で見られるような与太話も、大人は平気で突っ込んでくるんだな。



「やべッもう追いついて来たか、ちょっと俺達も休憩させてくれ」



「全く、男ったら少し暇があればエロ話をするんだから!」


そう言いながらマリアは水筒から水を飲んでいた。



「まあ、男だからしょうがないですよね」


「ああ、良い女のケツは最高だからな」


「いや、ケツよりも胸でしょ!」


「へへへまだ若いな、ケツの魅力が分からないとは。だから童貞なんだよ。マリア、ここで一発ケツを見せてくれ、こいつ童貞らしいんだよ」


「簡単に見せるか!」


「おい圭一、簡単じゃねえけど見せてくれるってよ」


「ちょっ!勝手に解釈しないで!」


赤面するマリア

ああ、なんだか俺が勝手に思っていたのと少し違っていた。

やっぱ話してみるもんだな。金井よりも綺麗だもんな。俺って可愛いより綺麗系が好きなんだなぁ。



この時実感した。

やっぱり俺はマリアの事が好きなんだって。


だから裏切られたと思って怒っていたんだ。

俺もガキだよな。

少しは大人に成らないと、得られる物も無くなってしまう。




 薄暗いトンネルダンジョンの中で、俺の中の一つの星が輝きを取り戻していた。

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