第31話 苛立つ心
◆◆◆ 31話 苛立つ心 ◆◆◆
その後、デニスと握手をして、俺のエボリューション《進化》の事を話した。
「スゴイじゃないか!」
「こんなの頑張れば誰にでも出来る。道具だよ俺は道具。さあ、戻るんだろ。サッサと高千穂に戻って先に進もう」
余りの豹変ぶりにデニスも固まっていた。
何かむしゃくしゃする!
その思いを発散する事が出来ずに、俺はよこが凹んだ車を思いっきり蹴り飛ばす!
「おりゃあああ!」
ドガッ!ゴロゴロゴロゴロ
2m程飛んだ車は転がっていく。
「こんな力があるなら、そりゃあ道具にでもしたくなるわな。少し浮かれていた俺がバカみたいだわ」
持っていた小銃を真ん中から折り、そこら辺に捨てる。
「どうしたんだ?」
デニスがマリアに聞いていた。
「全てバレたわ。ごめんなさい」
「でもマリアは――」
「いいの、元々そう言う計画だったのは確かだったから」
そう言う声が聞こえたが俺は全てを無視し、パーソナル搭乗口の建物の中へと入った。
「ああ、腹が立つ!」
さっきマリアに恐る恐る聞いてみたが、やはりどこの国も同じだった。
世界中とは言わないが、世界の国々で同じ様な事が起こっている事は教えられていた。
日本、アメリカ、中国、ヨーロッパにアフリカ。
どこも同じ様な感じで、数少ない討伐者を中心にトンネルダンジョンの中へと入っているらしい。
そして世界初と言うアナウンスが流れるように、俺がこの世界でトップを走る一人らしいのだ。
中国もこのトンネルダンジョンを攻略する為に俺を拉致し、被害を押える為に利用しようとしていた。
では他の国……アメリカは…………
「なあ、マリア。俺達は仲間だよな。
アメリカは俺を利用する為にマリアに俺に近づくようにさせて、アメリカに行って欲しいんじゃないのか?
俺がマリアに好意を持たせ、ひょっとしたら付き合うように仕向け、そして軍隊では無くて家族を守る為にアメリカに行かせようとしてる指示が出ているんじゃないのか?」
この質問に対してマリアはそうだと答えた。
今までスキンシップを取っていたのも、俺を懇意にして気に入っていた訳では無かったのだ。
単なる上からの指示
金井と同類だよな。
急にモテた意味が分かったよ。
どうせ、田舎の男。こんな男と付き合うなんてある訳ない!
アメリカ?中国?山口?
どうせ此処よりも住みやすいんだろ!
腹を立てながら暫く待っていた。
「圭一、迎えのヘリが来た。帰るぞ」
表に出てみると星マークにUS Navyと書かれたヘリが来ていた。
黙って後部に乗り、ヘッドセットを付けてシートベルトを付けた。
空の帰宅は早かった。
光速を使っても1時間ちょい掛かる地方都市のこれまた北外れを20分少しで辿り着いた。
その間、俺は誰とも話さなかった。
人間不振になりそうだった…………
「俺これからでもやれますよ!」
「良いから少し休め。幾らスーパーマンでも、休みは必要だ少し飯を食って仮眠しろ」
「……分かりました」
俺は学校に着いたヘリから降りて、日本軍陸の作っているご飯を食べに行く。
「大丈夫ですか?」
「これからも料理でバックアップしますので!」
「大盛りにしときますね!」
料理を作る人からねぎらいの言葉を貰い、唐揚げ定食を食べる。
この作戦に参加していた海兵隊だろうか、少し多めの外国人が「ワオッ」「デリシャス」などと大袈裟に言いながら食べている。
どうせ、本音じゃないんだろ。そんなに盛るなよな。
食べ終わる直前にマリアがやって来た。
「隣……良い?」
「もう食べ終わるから良いよ」
トレイを置いたマリアを放置し、残りを掻きこみ食べ終わる。
「ご馳走様」
トレイを返し、立ちすくむマリアを残してテントを出た。
停まっているオスプレイに入り、破れていた服を脱ぎ捨て新しい服を取り出し着て行く。
弟の携帯に電話をすると直ぐに出た!
「お疲れ兄貴」
「おお、大丈夫だったか?」
「マリアさんが中で爆弾処理をしてくれて助けられたよ」
「……あんまり女を信用するなよ。何処かに連れていかれるぞ」
「それあんまりじゃね?一応命の恩人だよ」
「そうやって騙そうって魂胆かもしれねえだろ。金井みたいに」
「何かあったの?あのデカいおっぱいで迫られたとか?」
「そうかもな」
「うひょー裏山~付き合ったらハワイのお土産頼むよ!」
「なるか!切るぞ」
「うん、無事で良かったよ兄貴。無理すんなよ」
「分かった……」
電話を切り、誰もいない機内で寝転がり、腕を頭の後ろで組んでそのまま寝不足の頭を休めた。
仮眠と言ってもそう簡単に眠れるかよ。
そう言いながらも、やっぱり疲れていたのか直ぐに眠ってしまった。
ゴソゴソと言う物音で目が覚めた。
「あ、起こしてしまってごめんなさい」
目の前にはマリアが着替えている所だった。
汗でも掻いたのか、Tシャツを脱ぎ、スポブラの様な物を付けてタオルで拭いていた。
「………………脱いで見せろよ」
「…………見たいのなら自分でしてれば?」
俺はイラつきながら立ち上がり、俺の目を凝視していたマリアに近づいた。
そしてブラの真ん中の部分を握る。
だが、マリアは動じずに俺の目を見ていた。
「ふんッ!」
苛立つ心を解き放つようにブラを一気にずり上げた!
そこには真っ白で見た事も無いような豊かな女性の胸があった!
腹癒せでやった事とは言え、全く動じないマリアは俺の目を見たままだった。
「これで何人の男をだましたのか?」
ブラから胸に手を移し、崩れないプリンの様な物に指を沈めた。
「信じないでしょうけど圭一が初めてよ。この胸を見られるのも、触られるのも初めて」
「それも演技か?それとも指示が出てるのか?」
「そこまでの指示は出てないわ。騙したのは悪かったと思ってるわ。でも私はクリスチャンよ、男の経験なんて一つもないわ」
「それを信じろと?」
「信じられないのなら私を抱けば良いわ。苦痛に歪む私の顔と破瓜の血を見れば分かる、私が嘘を付いていない事が」
俺は握っている胸へと少し力を込めた。
「痛いわ。嘘を付いた罰なのだろうけど、初めてなの。もう少し優しくしてもらえると良いんだけど」
蚊をを歪めながら笑みを見せるマリア。
下に目を移すと綺麗な胸が握力で歪んでいた。
「…………クソ!」
俺は横のハッチから逃げた。
なんてバカな事をしたんだ!これじゃ女に飢えたセクハラやろうじゃねえか!
どうして良いか分からず、校舎の方へと歩いて行く。
グラウンド端にある鉄棒が目に留まり、鉄棒で懸垂をしてみた。
筋肉の組織自体が変異しているのか、身体の重さが全く感じられない位に軽かった。
スコスコと身体が持ち上がり、全く筋トレにならない。
避難指示が出ており全く誰もいない校舎を見ながら鉄棒を破壊し、鉄の棒を木の長棒に見立てて昔習った棒術を思い出しながら稽古した。
一振り、一振りを考え、空想の敵をどうやって倒すかを考えていく。
そしてそれに没頭していた。
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