第25話 拉致

◆◆◆ 25話 拉致 ◆◆◆



 俺はオスプレイに戻り、置いていた自分のスマホの電源を入れた。


直ぐに弟の俊仁に電話を入れると、俊仁は家に戻っているらしかった。



「大丈夫なんだな」


「学校にいたんだけど、兵隊から呼び出しされてビビったわ。まあ、俺が手伝ったから問題ないぜ」


「無理難題言って来たら断って良いからな」


「うん、大丈夫だって。それと、兄貴Bランクになったんだな」


「ああ、まだ骨がギシギシ言ってるわ。だんだんん分かりやすくなってきた。その内人外になりそうだわ」


「そうそう!陸軍の可愛い金井さんって麗さんって名前なんだな、お菓子貰ったよ。お礼言っといて」


「麗さんね……分かった言っとく」


「ニヒヒヒヒ、兄貴にもやっと春がやって来たか?」


「うるせえ!何も無いいなら切るぞ」


「既成事実を作ろうと思って連れ込むなよ」


「そんな仲じゃねえわ!何かあったらメッセージ入れとけよ」


「了解!」



 俺は電話を切り、ついでに電源も落とした。


家から持って来た刃物を研ぐシャープナーを取り出し、持って来た新大鉈とチタンの剣、そして回収した斧の刃を見て研いでいく。

自分の命を守る物だ、こればかりは気を抜く事が出来ない。

小銃は穴の中に投げ捨てた為、グロックを点検して分解掃除を行い、新しい小銃を準備する。



「良いヤツあるじゃん」


備品の中からベストを見つけ、そこに大量のマガジンを確保していく。

これから数時間で筋力のエボリューション《進化》が始まるが、握りつぶさないように何度もリラックスして構えられるように練習した。



「だんだん様になって来たな」


フル装備で銃が撃てれるように練習しているとデニスが戻って来た。


「命が掛かってますからね」


「アイツら、次はやれるか?」


アイツらと言うと、当然あの大クモの事だろう。実際、デニス達の援護が無ければヤバかったかもしれない。

だが、あの闘いの中である程度の算段は付いていた。


「やれますよ、意外に裏側は弱いですからね。それと正面にトマホークをぶち込めばイケると思います」


「エボリューションもしたし……か?」


「そうですね。トマホークの追加をお願いします」


「弾丸じゃねえんだぞ。一応連絡はしとく」



デニスは無線で何処かに連絡をしだした。

俺はそれを見ると、脳内で奴らとの闘いの構成を考える。

これ位で負けられるもんか!

やられる前にやってやる。





 軽く仮眠を取っていた。

岡田さんの言い方で、何かあると思いオスプレイの中で。


 すると、優しい香りと共に肩に手を置かれ呼ばれた。


「圭一、ご飯食べに行くわよ」


「オーッケー」


2時間程眠ったか。

興奮して眠れないと思っていたが、意外に俺の精神は図太く出来ているらしい。

デニスはパイロットと何かを話していたので、俺らは二人で陸軍の食堂へと向かった。



 腕時計を見ると、夕方5時になっていた。

進化が終わるまで後21時間。

何故か胸がザワザワしていた。


他愛も無い話が盛り上がり、飯を食べてゆっくしとしていたが、突然町内の防災用のサイレンが鳴りだした!



『危険生物を殲滅する為に、動ける市民は早急に町外へ避難してください。繰り返します、危険生物を殲滅する為に、動ける市民は早急に町外へ避難してください。動けない市民は戸締りを行い、絶対に外へは出ないようにしてください!』



 役場の人間だろうか、慌てた様子で避難するようにと指示を出していた。


「何があったのか確認してくるわ」



マリアさんは席を立ち、オスプレイの方へと走り出す。


俺も忙しくなると思い、トイレへと駆け込んだ。




「圭一君!丁度良い所に!少し手伝って!」



トイレから出た所で偶然金井さんに出会い、呼び止められた!


「どうしたんですか?!」


「訳は車両の中で!急いで!」



俺らは道路で待っていたパトカーらしき赤ランプが回っている車に取り込んだ!後部座席に入れられ、金井さんは助手席に座った。



「陸軍の大部隊で一挙に大攻勢をする事になったわ!その前に市民に避難させて万が一に備えるの!」



水のミニペットボトルを渡しながら運転している警官に行先を指示していた。


警察の無線も無く少し普通の車に似ているが、覆面パトカーか?

金井さんは同じ水のペットボトルを開けて飲みながら行先を指示している。


避難誘導の手伝いをすればいいのか?

町の中心から東へ外れて行くが、遠い所から避難を進めるんだろう。

俺もペットボトルの蓋を開け、一口、二口飲んだ。


「自分の町なんで、何か手伝う事があったら何でも言ってくだひゃ……くだひゃ……く……だひゃ……い…………あれ?」



口が麻痺してる?


「そのままで良いわよ圭一君。ゆっくり寝てて」


後ろを振り返る金井さん。その顔がぼやけて来た。


それが俺の最後の記憶だった…………





◆◆◆




 18時。

マリアはデニスのいるオスプレイの中に入り佐世保の海兵隊隊長と話をしていた。


『では、二個中隊200名をこのタカチホに投入するのですね。ええ、分かりました、シールズが指揮権を取ると。彼は?…………分かりました。当初の方向性でいきます。ではバックアップを日本陸軍に。了解です!』



デニスは陸軍の岡田をオスプレイまで呼び、そこで一部道路の閉鎖を指示、輸送トラックの準備を行っていた。


慌ただしくなる高千穂基地にマリアは圭一に話しをするべく、先ほどまでいた食堂へと向かう。


だが、緊急指示の出たテント内には誰もいなかった!



「圭一!」



テントを出たマリアが叫ぶが、回りに叫び声に反応する人はいなかった。


作戦司令部へと行き、地域アナウンスを行うブースへと行き、マイクを取ってスイッチを入れた!



「圭一、オスプレイに戻りなさい!Hurry up!」



トイレかと思いアナウンスを掛けて戻るが、5分、10分経っても戻ってこない!

イライラするマリアにデニスが声を掛けて来た。


「まだ戻手t来ないのか?」


「おかしいわ。離れないように言ったのに」


「やられたか!?」


「圭一はスーパーマンよ!」


「薬……か、銃?家族は?」


「調べるわ!」


「俺は基地で目撃情報を集める!」



司令部からアナウンスで圭一の目撃情報を募るデニス。そして実家へ電話を掛けて全員の安否を確認するマリア。


圭一の実家には弟の俊仁は居らず、陸軍に話を聞く為に連れて行かれたとの事を言われ、その事を基地司令に確認する。



「そんな話は無い?!なら誰が!」



そして目撃情報を募っていた事で司令部には二人兵士が来ていた。



「食堂からトイレへ向かうのを見ました。町内アナウンスの直ぐ後だったので間違いないです」


「私は女性隊員が田村殿を連れて行くのを見ました。学校の出入口へと向かっていましたが、そこからは分かりません」



そこからの岡田は早かった。


「県警に協力を要請!九州横断道路の降り口を全て封鎖!大分と宮崎への分岐を全て止めろ!」


それを聞いたマリアも早かった!


「隊長やられたわ!圭一がさらわれた!」



吉責任者の岡田がどこかへと電話するのを横目で見ながら時間と事実を説明していく。



先に電話を終えた岡田は真剣な表情でマリアの電話が終わるのを待っていた。

そして電話が終わったマリアに言う。



「大陸からのスパイの可能性がある。高速道路は全て封鎖。県警に検問を要請した。海に面する都市は最大10万人ていどしかない。港は全て封鎖し海上保安庁にも臨検してもらう。熊本方面は熊本県警と陸軍が直ぐん位封鎖する!」


「こっちには海兵隊が200名飛んで来る途中よ。圭一の事で第七艦隊が動くわ。近くの監視カメラを徹底的に調べて!車種などを特定するのよ!」



「第七艦隊が……分かった。指示には従おう。岡田は再び受話器をもって電話を掛けだす。

そしてその後、防衛相の大臣にも…………

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