第24話 撤退後の動き

◆◆◆ 24話 撤退後の動き ◆◆◆



「死ぬ気で走れ!!」



タタタタタタタタタタタタッ



SIG SG552アサルトライフルから5.56mmNATO弾がばら撒かれる!



曳光弾が混ざった銃弾は、光の筋を残しながら現れた大クモに向かっていく!


頭のカーブに弾かれ後ろの彼方へと弾かれる弾丸!


「チッ!」


ストックを肩に当て、後ろへとジャンプした際に狙いを定めて口へ狙いを定めた!


タタタッ!


三点バーストに切り替えた弾が吸い込まれるように開きっぱなしの口へと吸い込まれ、炸裂するように頭が爆散する!



「振り返るな!まだ来るぞ!」



音か振動か。

沈む大クモを乗り越え新手が現れる!


横穴はこいつらの巣か?!


タタタッ!  タタタッ!タタタッ!


当てども当てども現れる大クモを撃ちながら後ろへと撤退する。

だが、途中まで来ていたサポート部隊が気付くのに遅れ、速度が落ちだした!


空になったマガジンを入れ替え、迫る敵を撃ち殺して行く。


その撤退戦もマガジンが持つかどうかの瀬戸際だった。


徐々に少なくなるマガジン。

4つ持っていたマガジンが無くなるのはあっと言う間だった。

しかし、進化された兵士達はこの距離を20分余りで走り抜けた!


疲れて出口に上げられない負傷者を俺が上へと投げ捨て、最後の銃弾を全て打ち尽くす!

同時に小銃を大クモに投げ捨て、後ろ向きで脱出すると同時に新手が乗り越えて来た!



「蓋をしろ!!」


狭いトンネルからジャンプして出て来た大クモが俺に迫る!

寝ころびながら両脇からグロックを取り出しフルオートで腹を目掛けてトリガーを引き絞る!


ダララララララララララララララ

ダララララララララララララララ



両手からマシンピストルが火を噴き、衝撃で大クモが俺を通り過ぎて行く。

腹から胴体を打ち抜かれ重傷は確実!

弾の無くなった銃を捨てて新たに出て来た大クモに腰から抜いた両刃のトマホークを全力で投擲する!


ズシャアアア


真っ二つになるクモを乗り越え更に出てくるクモにもう一投した!


ズシャアアア


横を見ると、ヘリは飛び始めたばかりなのか、まだ鉄板が持ち上がっていない!


飛び道具が無くなったがまだ剣がある!


その一瞬の視線を外した際に連続して大クモが出て来た!



「うおおおお!」


真正面のクモの口に剣を突き刺し、下を転がる隙にもう一振りの剣で腹を切り割く!

真横にいるクモの足を斬り、乗り越えた先の背中から頭を切り落とす!


その瞬間、背後から飛び掛かったクモが背後から飛び掛かって来た!


殺したクモの前に転がり落ちる!

そこを狙って上から飛び掛かって来た!




ドウンッ!


バシャッ!



頭から爆散する大クモ。



「後は任せて!」


転がった頭上にいたのは太いグレネードランチャーを撃てる銃を持ったマリアだった!



ドウンッ!ドウンッ!ドウンッ!


改良された携帯型のXM25エアバースト・グレネードランチャーから発射される25mmの小型グレネードが秒速210mで撃ち出され、大クモに当たると一気に爆発し、その肉片を撒き散らす!



「急げ!」


デニスが声を荒げながら穴に向かってグレネードを打ち込んでいく!


漸く持ち上がった鉄板が、新たな土台となったH鋼で作った囲いの上に乗せられ工兵が外れないようにクランプしていく!



 大クモの体液でドロドロになった俺は、リュックから水筒を取り出し頭から水を被り、口を濯いだ。


タオルで顔を拭き、手を出しているマリアの手を握り起こしてもらう。

そしてデニスとハイタッチをし、漸く落ち着いた。





◆◆◆



「これはアメリカ海兵隊を攻撃していると同じだ!」


 佐世保に停泊している原子力空母ドナルド・トランプにいる艦長のロジャースは、日本陸軍幕僚長である児玉達治とテレビ電話を行っていた。


「あの映像を見るに申し訳ないと感じている」


「海軍の客人であるMr.田村はこの作戦のエグゼクティブパートナーであることは日本も分かっているはず。それにMr.田村はお前達の同胞ではないのか?その田村に向かって銃を向けるとは!この責任は重大だぞ」



 無事に生還した田村は、ヘルメットに付けられたカメラから無線で送信される映像が遮断され、カメラに内臓されたメモリーカードに映像を記録されていた。

その映像をオスプレイから空母に送信され、分析を行っていると、日本兵が田村に銃を向けている事が分かった。

そこで児玉幕僚長を緊急に呼び出し、アメリカ政府として抗議をしていた。



 型に嵌るとめっぽう強い日本兵と言うのは世界中が知る事にはなっていたが、戦争を知らない若い世代では、未知で予想外の事に遭遇すると上からの指令を待つ傾向があり、指揮権を持たない兵士達は今までの指令を付き通す事が多い事が分かっていた。


その分、アメリカ兵は最前線を何度も潜って来た実績があり、緊急時は独自の判断で切り開く事が出来る。

その経験の差が出ていた。



「今この瞬間から、タカチホは我々海軍が指揮権を持つ。これはお願いでは無い。指示だ!」


「それは困る!高千穂に米軍を展開すると言うのか?!」


「大統領命令が下りた。これは日本だけでは無く世界中へ向けた異生物からの敵対行動に対する軍事行動だ!今すぐ市民を避難させなさい。もう直ぐ那覇より作戦行動機が出る。そちらの首相へも通達済みだ」


「うっ! 分かりました。早速避難の手配を行います」



 お互いテレビ電話を切る二人。

陸軍幕僚長である児玉は首相官邸に緊急の確認電話を行い、その旨を確認し、緊急事態として高千穂の町に避難の命令を出した。

 そして一方の太平洋第七艦隊指令のジョリー・ロジャース大佐は、艦長室でほくそ笑んでいた。


「ニッポンに主導権は渡せないのだよ。悪いがこれは全世界を巻き込む非常事態なのだ」


葉巻を吹かす艦長へ那覇基地より作戦行動機が離陸したとの報告が入るまでは直ぐだった。

そしてもう一つの報告が入り、急いでデッキへ行くのであった。




◆◆◆



 日米が慌てだす少し前の事、高千穂の現場では後始末と報告や新手の敵対生物の事で落ち着きない状態だった。


 俺は装備品一式を渡し、軽自動車の様なジープで高校の基地まで帰る。

トマホーク二個は近くから見つかり、グロックも無事に見つかったが、小銃は穴に投げ捨てた為に発見出来ず、チタンの剣も口に突き刺した物は、牙にでも当たったのか、一部が大きく欠けていた。


 塩素を多く含んだ消毒液を振り掛けられ、流れ出た液体と共に全裸にされ、アソコを手で隠したままお風呂に向かう。


「It's cute!」

「可愛いお尻!」



 何故か近くに居たマリアと金井さんがお風呂に向かう俺の先におり、隠す事の出来ないお尻を並んで鑑賞されてしまった。


お風呂で頭から塩素臭い液体を洗い流し、身体をゴシゴシ洗って湯船に浸かる。


「ぷは~」


誰も入っていない割と大きな湯船に浮かび、浮遊感を楽しんでいた。



「お湯に入るのは今でも慣れないな」


 お湯を大量に出した事で湯気が充満しているお風呂には、もう一人デニスが入っていた。

シャワーで洗い流すと小さい風呂椅子に座り、湯船から洗面器で時々肩にお湯を掛けていた。


「身体が痛いんだろ」


この戦闘でDランクへエボリューション《進化》したデニスは、少しの痛みを感じているようだった。


「動けない程じゃない」


「俺も動けない程じゃないな」


俺も最後の最後辺りで大クモと場外乱闘をしていた時、進化のアナウンスが聞こえていた。



『討伐累積値が一定数に達しました。データリンクに登録……CランクよりBランクへ移行。全世界へ発信・共有し、これよりエボリューション進化します。エヴォリューション進化完了までの予定時間は25時間』




『討伐隊一人の討伐累積値が一定数に達した為、CランクよりBランクへ移行しました。

亜空間トンネルより湧き出る集団地球外生命体暴走スタンピードの可能性は依然高く、地球人滅亡の可能性は高い状態です。選ばれし討伐隊は侵入する地球外生物の討伐を推奨致します。』



 少し早い気もするが、あの大クモを何度か剣で切り割いた事で進化したんだろう。

骨がギシギシ言ってる気がするが、動けない程じゃ無かった。


13時位にエボリューションしたので、進化終わりは明日の14時頃だろう。

それまで休もう。


だが、そう簡単に休めるはずも無く、お風呂を出ると新しい海軍の戦闘服に着替え、学校基地での報告が待っていた。


どのくらいの敵対生物がいて、そして何故二人の兵士達が骨を砕かれているのかと。


俺は事細かに説明した。カメラに記録されている動画を見てもらえば一目瞭然だが、作戦が続行と言う事で死んだ生物の構造を調べようとしたら難癖付けられ、警告を無視された為に排除したと。

そしてそれを見ていた兵士に銃を突き付けられ忠告を無視された為に正当防衛で徹底的に、気力をゼロにする為に、自らの命を守る為に無力化したと。



「これって政党防衛ですよね!俺なんてちょっと経験を積んだ素人ですよ!殺しの技を習った事もない一般人に銃を向けられてはいそうですかと軍門に下るなんて出来ないっしょ!」


「普通は大人しく指示に従う所なんだがね~これはまいったな~」



西部陸軍方面隊の責任者である岡田さんは頭を掻いていた。


「何が参ったか知らないですが、殺されそうになったんですよ!作戦を継続するなら検体は前線が優先でしょ!こんな感じだったら協力は出来ないと思っててください!」


「まあ落ち着いてよ田村君、ボーナスに色をつけとくからさ~」


「もらうモノは貰いますけど!同士討ちなんて二度と御免ですからね!」



視線から弾丸が出そうになる位に岡田さんを睨んで言った。

だが、フラフラと躱す岡田さんには全く効いていなかった。

仮にも西部陸軍方面隊の責任者。伊達に1等陸佐ではないか。



「状況は大体理解した。何か動きがあるかもしれないので、夕方までは休んで下さい。余り遠くに行かないようにお願いしますよ」




「そう言えば入る時に逃がしたスライムはどうなりました?」


突入時に出て来た団子状のスライムが沢へと落ちるのを思い出した。

あの沢は山の下にある俺の家の横、更にはそこから町を縫うように流れて川へと合流しているのだ。



「アレは弟さんの協力も扇いで殲滅しました。直ぐに下で網を張ったので逃がしてはいないでしょう」



その話を聞いて少しホッとした。

それと同時に弟を狩りだした事でそこまで対応できていなかったのかと日本軍の対応を残念に思ってしまった。



 俺は岡田さんの話を聞いて夜間の再突入もあり得ると思い、備品が揃っているオスプレイに戻る事にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る