第22話 突然の襲撃

◆◆◆ 22話 突然の襲撃 ◆◆◆



 朝靄の漂う中、俺はテントから起きて出て来た。

 標高が高い為、この4月後半でも肌寒い気温になっていた。

今日は特に寒く、息が白くなる程に気温が下がっていた。


既に部隊は動き出しており、靄の立ち込める中、色んな人員が動いていた。

n

進化した身体は燃費が悪いのか直ぐに腹が減る。

その腹の減りを満たす為に良い匂いのするテントに向かった。


そこには幾人もが早くからご飯を炊いて準備をしていた。


「田村2等陸士であります!」


「シールズさんでしょ。腹いっぱい食って頑張ってくれ」


 トレイを受け取りご飯に味噌汁にチキンカツとサラダを盛ってもらいがら空きの席に着いて黙々と食べる。

トレイを戻し軽く柔軟運動をしてオスプレイに置いていた装備を付けていく。



 両脇にはハーネスに装着したグロックG18C。フルオート発射出来るマシンピストルのグリップ強化版が二丁。

両尻上には昨日貰った両刃トマホークが二丁。

右の腰から太ももに固定している鞘にはこの前まで使っていた炭素とチタンで作った複合素材の剣。グリップ止めをハイテンションボルトで固定した改良版が3振り。そして左腰から太ももには俺が作成させた剣のジャックが重みを効かせている。

背中にはリュックを背負い、滑り止めのベルトとタオル、水筒、高カロリーゼリー飲料、緊急エイドセット、そしてリュックに括り付けたM27 IAR(Infantry Automatic Rifle:歩兵用自動小銃)とそれらの弾薬がリュックに納められる。


メインは刃物だが、デニスが持って行った方が良いと言うので小銃も追加となった。

全てで20kgを遥かに超え、30kgにもなっていた。


これで泳げと言われたら沈むに違いない。



早く置き過ぎたのか、暇だったので、顔にクレヨンの様な迷彩色を塗って行く。


「おっ中々イケる!」


日本人顔にしてはホリが深く、外国人にしてはあっさりしている顔で、似合わないと思っていたが、思ったよりも似合っていた為、色々塗りまくってしまう。



「気合が入ってるじゃねえか」


俺の戦化粧いくさけしょうを見てデニスが唸っていた。


「カッコイイだろ」


「だがな、それはお前、歌舞伎のクマ取りじゃねえか。俺ならこうやるぜ」



クレヨンを持って俺の顔に追加していく。



「二人で何してるの?」


マリアがやって来て二人で何やら書き出した。



「少し変じゃねえか?」

「今の流行りはこんなもんよ。あんたみたいにゴリラにしないで。圭一は可愛いんだから」

「フェイスペイントに可愛いもねえだろ」

「そんなに塗って、誰か分からないじゃない!」

「普通こんなんだろうが!」

「いいえ、私が塗ります!」

「俺が先にやりだしたんだぜ!」


二人で喧嘩腰になりながら顔に塗られまくった。


結果、色々と塗られまくってほぼ真っ黒に近い焦げ茶と濃い緑の顔になってしまった。


自分らは目の下や頬に軽く塗るだけで終わったクセに…………



 トラックすし詰めで実家に向かい、ピストン輸送でゾロゾロと山へと昇って行く。

ムッチャ装備品を持っているのだが、身体は軽い。右足に付けた三本の剣がカチャカチャ言うのが気になる位で全く問題は無かった。


裏山の監視テントに行くと、俺ら米兵だけにセンサーでバイタルサインをモニター出来るパッドなどをつけられる。

それらは、脈拍、呼吸、体温を測定し、ヘルメットに付けられたカメラ画像も同時にテントのアンテナを介し、衛星ネットワークを中継し、どこかの軍艦へと送信される。それらの設備に+3kg掛かるが誤差程度しか感じられない。




 準備が整うと、鉄板に付けられたワイヤーへ飛んで来たヘリに装着し、合図と共に上へと引っ張り上げられる!


簡易的なコンクリートなど無かったように上にあがって行く鉄板!


そしてその隙間から見慣れたスライムモドキが現れる!



タタタン!タタタタタタン!タタタ!タタタ!タタタタタタン!


陸軍の20式小銃から一斉に火が噴く!

守備防衛隊と呼ばれる専門の部隊があ地面に空いた穴から溢れ出すスライムを駆逐する!


「あ!」


団子状になったスライムが弾け、後ろ側の沢の方へと転がって行くのが見えた!



「逃げたぞ!一匹も見逃すな!」


思わずトーチカ代わりの鉄板から立ち上がって声を張り上げた!


周りには人工物が無いので、跳弾は無いと思っていたが、横にいたデニスから引っ張られる!


「分かってる!」


数人が沢野方へと走って行くが、こうなったら任せるしかない!



「一番隊準備!」


やはり富士に比べると圧倒的にスライムが少ない!

一斉射撃をする時間もアッと言う間に終わり、俺の時間になる。


「突撃!」


走りながら複合材の剣を抜き、穴からジャンプして来たスライムをタイミング良くバシャッと切り割く!


左下の沢を見ると、沢の水に落ちたのか、隊員が沢に入って探しているのが見えた。



「チッ!」


頭を切り替えるように穴へと入り、無人の荒野を行くが如く、剣を振り回しながら活路を切り開く!


デカい穴の富士とは違い、3m程の直径しかない此処では短い複合素材の剣、面倒だからチタンの剣と言うが、その方が使いやすかった。

まるで木の枝を振っているかのような軽く感じる剣を振り、活路と言うまでもないザコを蹴散らす。

ものの5分もすると疎らになって来たので次に控えていたデニスと交代した。



一振り、そしてまた一振り確実に切るデニス。

デカい身長のデニスには狭く感じるのだろうが、それを物ともせずに切り割きながら先へと進んで行った。



「OH! YES!」


叫ぶデニスはエボリューションしたようだ。

デニスとマリアは、富士でかなり切りまくっていた為、共にEランクだったが、この戦闘でDランクへ進化したようだ。

分かっていた通りに痛みもそれほどでは無いが、後ろに控えていたマリアと順を交代した。



30分もすると、


「Awwww yeah!」


と喜ぶ声が聞こえた。これで二人ともDランクだ。


その後直ぐに日本兵へと代わり、殲滅しながら先を進んで行く。

サソリが出始めると、一度俺が手本を見せてチタンの剣で危険な尾を切り硬い殻を叩き割ると、同じように切りだした。

初めての場合は5匹程度で進化する為、サポート部隊が後方へとストレッチャーで避難させていくが、奥へと進むとFランクが揃いだして来る。

その中には紅一点の金井さんも入っていた。


「お願いしますね」


ニコッと笑って先頭と代わりながら俺に微笑み出て行く。


マリアほど積極的じゃないが、戦闘服姿であっても可愛い者は可愛い。

二人とも4歳程年上だが、余り歳は気にしないので俺的にはオールオッケーだ。


金井さんは50匹のノルマを40分近く賭け達成した。


「やったっ!」


軽くピョンッ!と飛ぶ姿が見えた。

あざといと言われればそうなのだろうが、戦闘服とのギャップに萌える。


「やりましたよ!」


「おめでとうございます!」


作戦行動中なのでそれしか会話が出来なかったが、手袋越しのグーパンチを交わし、笑顔を振り向けてくる。


だが、楽しみは此処までだった。

30~40分で交代する兵士の後ろで待機し、ひたすらゆっくりと先へと進む俺ら。

既に俺が進んだ時間・距離共に超えていた。

休憩がてらにリュックから水筒と高カロリーのセリーを取り出し、待機していたサポート隊を前に行かせる。


 4時間を超えて疲れは無いが、休憩を取る事にした。

少し前下がりになっているトンネルは、つま先に負担が掛かりっぱなしになって来る。

靴を脱いでリラックスしたいが、何かあった時に動けなくなる。壁にもたれてゼリーを飲み一呼吸してラクナ体勢を取る。



その時、一人の兵士の声が響いて来た。



「分かれ道発見!!」



馬鹿が、大声だすなと伝えただろうが!


俺は急いで荷物を整理すると、再びリュックを背負い先へと急いだ。


数人の兵士が知己している所へと辿り着く。


「どこだ?」


その先を見ながら言うと、横の壁に同じ高さでトの字型に道が分かれていた。



同じ角度で鋭角的に来た道へと分かれている道。


「へッ、ダンジョンらしくなってきたじゃねえか。無線は?」



サポート部隊の兵士に聞くが、


「駄目です!通じていません!」


思った通りに繋がらなかった。


この分だとバイタルセンサーもカメラも繋がってないか。富士の時は広かったからか、奥まで進んで無いからか、カメラは生きていたはずだが。

しようがない。


「先頭は此処まで後退。横穴手前で待機する。戻り次第俺が中に入る。それと緊急時以外は大声を出すな」


入って四時間強。何も無い道から分かれ道を発見して興奮するのは分かるが、それに依って敵を増やしたくは無い。


10m程先で警戒をしている先頭に、ハンドサインで戻って来るように伝えた。

ゆっくり前を見ながら後退してくる兵士。


「穴の手前で待機、俺が中に入って調べてくる」


穴を横目で見ながら先頭に立っていた男に伝えた。


「了解です」


そう言う男だったが、何故か肩が上下に動いていた。

まるで走って来た後のように。



「息が苦しいのか?」


「空気が薄いような気がします。圭一さんはどうもないのですか?」


「いいや……」



よく見れば此処に集まっている兵士達、俺を含む8名で俺以外の全員が肩で息をしていた。

なんだこれは。

そして次の瞬間!



パタパタパタパタ



右に開いた横穴から何かが近づいてくる音が聞こえた!



「後ろに下がれ!先頭準備!」


皆がサッと後ろへと下がった!俺と話していた男も後ろへ。

そう、俺と対面で話していた為、そいつは俺らとは反対側の先へと一人下がっていた!



パタパタパタパタ!


「来るぞ!」



自家製大鉈を抜き構えた!


その男はこっちに来るかどうかを迷っていたが、そのモノが見えたのだろう、


「ひぃ!」


一声上げると後ろへと下がりだす!



「キシャアアアア!」


甲高い声と共に緑色のモノが突然姿を現し、一人になっていた男に襲い掛かった!



☆☆☆あとがき☆☆☆

作者の永史です。

ここまで読んで頂きありがとうございます。

毎日読んで頂きありがたいのですが、書き貯めがなくなりました。

明日からは不定期投稿になりますのでよろしくお願いします。

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