第20話 進化の影響

◆◆◆ 20話 進化の影響 ◆◆◆



 二日目が始まった。


 夜間は哨戒チームが監視に当たり、俺らはゆっくりと休む事が出来た。


 入口の鉄板は巨大なヒンジが取り付けられ、隙間なくロックが掛けられるようになっていた。

そして鉄でスロープが取り付けられ、巨大な穴に車両が入れるようになっている。



 そして今日も日本軍のレベル上げが始まった。

それは昨日と同じようにトレースするように始められたが、昨日の俺が午後3時頃にエボリューションした為に今日は余り使い物にならない。

せめて午前中だけだと言われ、スライムばかりを動く事なく100m程入っただけで終わらせた。

それでも約100名余りを進化させ、体調も万全となった三日目に入る。




「やべッ!身体が軽すぎる!」


全力で振ってもないのに樹脂で作られた握り手の部分から刃先が飛んで行く!

手斧も重さを感じる事無く7割程度で刃先が飛んで行った!

慌てて力をセーブするが、何か物足りない。

スライムなどのザコを相手にすると完全にオーバーキル状態にまで進化していた。



「伝令を頼む!鉄パイプでも良いから頑丈な一本素材のモノを持って来てくれ!10kg以内で!」



30分後に持って来た物はガス管なのか?中に穴が開いている鉄パイプだった。

2m程の長さのパイプを7割の力で振り下ろすと、止めた所でパイプがぐにゃりと曲がった!


「次ぎ!」


お次はL字型のアングルと言う建築素材を持って来た!


こんな形のモノを握れるかと思いきや、握力を込めると指の形に凹みが出来る。

数回スライムをブッ叩いて爆散するように破裂させたが、10回目にはヒビが入った根本の所から千切れて飛んで行った!


「次ぎぃ!」


鉄筋コンクリートの配筋に使うデコボコした鉄棒を持って来た。

随分細いが大丈夫かと思ったが、振った瞬間曲がった!


「お次ぎぃ!」


単純な金属バットを持って来た!

「ふんッ!」と一振りすると、スライムが爆発するが、グリップの部分が完全につぶれてしまった。


「お願い次ぃ!」


「ありません!セーブして使って下さい!」


「なにぃ!」



俺は一人寂しくアメリカ御禁制の複合素材の刃物でペシペシ切った。やる気も失せてしゃがんで切っては、横に向けた刃の上にスライムを乗せて上に放り上げている。

横や縦移動もしゃがんだままで楽に出来る。

とうとう人外になってしまったか。




「あら、スーパーマンってカッコイイわよ!」


虚しい作戦行動が終わった後、俺の心情を思ってか、元気になったマリアが慰めて来た。


「普段は可愛いボーイ。中身はモンスター。理想じゃない。私を襲おうとした圭一には似合ってるわよ」


「襲った?!圭一それは本当か?」


ぞろぞろとシールズの男連中が集まって来る!


「弱った私を解放するように見せかけて、彼は私に乗って来たわ!」


「ウオオオオオ」

「ウソです」


「野獣の目で私のグラマーな胸を透視して、置いていた水をライオンのように飲むと私に口を付けて強引に飲ませて来たわ」


「ノーオオオオ」

「自分で飲んだじゃん」



「痛みで動けない私の服を引き破り裸にすると、ウタマロを私の可愛い子猫ちゃんにあてがい、一気に!」


「オオオオオオ!」

「直ぐに帰ったでしょ。変な情報を与えないで下さい」


「そう、それは夢だったのよ」


「クソッ!」


「だから言ったじゃん、違うって。 むぐッ」



悪戯っ子の様な顔をしたマリアは、俺の首を掴むと、そのまま自分の胸に俺の顔を持って行く。

爽やかな汗の香りと女の香りのする大きなクッションに押し付けられた俺は、腹癒せとばかりにその人間を駄目にするクッションの柔らかさに身を任せた。



「ノオオオオ」



このノリについていけない…………





◆◆◆



「田中先生!魔核の総合結果が出ました!」


 軍より魔核、及び正体不明生物の研究を委託されている田所は、興奮を抑える事を出来ずに室長である田中医師に検査データーを見せる。



「ふむ、耐熱100度まで変化無し、耐寒は液体質素の中でも変化は無しか。ん?構造はナノマイクロ以下の大きさの集合体で有機化合物と未知の金属の可能性?田所君、これは人工的に作り上げた物だというのか?!」


「それなんですよ!ナノマイクロメートル以下の金属の集合体!熱変化に強く、酸素のあるなしに関わらず魔核は動きを見せている。これは地球外生命体の作ったロボットですよ!地球侵略ですよ!」


「エネルギー源は不明……電流、衝撃に弱く、有機化合物を含む金属体?サイボーグだと言うのか?いや、これ自体が生命体?だが、レーポートにはこれを壊すと進化が始まると書いてあったぞ」


「破壊実験では10秒後に採取・密閉。採取した物質は酸化鉄で僅かな有機化合物の混合だったと。所謂、空気中で直ぐに錆びたんですよ!目の前で壊さないと進化は出来ないと言うレポートと合致します!追加の魔核を希望します!」



 田所の目は爛々と輝き、口角からは泡が噴き出ていた。



「そうだな、もう過ぐに現物が来る予定にはなっているんだが、追加の魔核も収集するように伝えておこう。」


「ありがとうございます!」



お礼を言う田所のキャビネットの中にあるケースには、魔核が更に増え、計20個になっていた……




◆◆◆



 合計5日間にも及ぶ、軍神作戦は一応の成果を上げて終了した。


 日米の兵士はF若しくはEランクになり、その人体構造の変化の研究も始まっていると言う。

入口の鉄板は、隙間を樹脂で埋めてモスボール化されている。

次の作戦までこのままの状態を保つらしい。


 エボリューション進化した兵士達は全国へと散らばって行く。

そして俺達もUS NAVYのC-17輸送機に乗り一路佐世保へと帰還する。



「圭一、例のトマホークだが、お前のパワーが上がった為に作り直す事になった。もうしばらく待ってくれ」


「握力が450kg以上もあるんじゃ仕方ないですね」



 俺は帰還する前に動物の噛む力、大学に置かれていた咬合力測定を使って握力を計った。

握りずらいモノだったが、なんと450kgを記録した!

以前の約9倍!

道理で力を込めると、鉄は曲がるし、グリップは壊れる訳だ。



「ゴリラかオラウータン並みだな」


「ゴリラはデニスの方だろ!」


俺は隣に座っているデニスの肩を叩いた。

加減さえできれば何も問題は無かった。鉛筆だって握れるし、箸で豆腐だって食べれる。危ないのは緊急時や興奮した時だ。



「今、幾つかのメーカーでスペシャルモデルを作らせている。圭一お望みのマシンピストルだ。AP《徹甲弾》が撃てれるスーパー仕様になるそうだからな、期待していろ」



 当然ながら反動を押えようとするとハンドグリップを潰してしまう。

アメリカ軍もエボソルジャー対応の銃や小銃を作るそうだ。

これは日本も同じだろう。

通常の兵士が持てない重量に強化された小銃で、人間が撃てない程の弾丸を撃つ。

小銃サイズの対物ライフルやガトリングなども出て来る可能性もある。

そんなキチガイ兵器は保守的な日本じゃ出来ないだろうが、是非アメリカには魔改造の銃を作って欲しいな。


 暗くなった窓の外を見ながら、俺らはハンバーガーを食べながら佐世保へ着陸しそこで一泊、次の日にオスプレイにて故郷である高千穂へと帰ってきた。


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