第18話 変な作戦名
◆◆◆ 18話 変な作戦名 ◆◆◆
結局、話合いは俺の言っていた事を中心に変更する事になった。
その事は防衛相にも連絡を送り、許可を得られたと全員に伝えられた。
「何か
昼飯をデニスとマリアの三人で食べていた。
「そうでもないさ」
「作戦変更は良くある事よ。今回は偵察とブレードの試し切りが主な目的だから、安全は確実に確保しないとね!」
お昼ご飯のかつ丼を器用に箸で食べる二人と話しながら景色を眺めていた。
プレハブから見えるのは、数々のプレハブであり、何処かしこに日本軍の兵士が見えていた。
ライフルは抱えていないが、腰には拳銃が入っているだろうホルスターが付けてあった。
拳銃か
スライムには効くんだろうが、サソリは外骨格と言うか甲羅のような殻で弾きそうだよなぁ。
あのトンネルがダンジョンであるならば、先にはもっと変なモノがいるに違いない。
何故か一本道ってのも変だけど、分かれ道が無い事はないだろう。
次はゴブリンか?
「銃が欲しいのか?」
近くでご飯を食べていた日本兵の腰に携帯されていたホルスターをボーっと見ていると、デニスがそれに気が付き声を掛けて来た。
「いや、拳銃が効く相手が出て来るのかなと」
「切らないとエボリューションしないんだろ?」
「長崎では離れた距離から銃で撃っていたけど、誰もエボリューションはしなかった。近くで斬った時に匂う鉄粉塵のような煙を吸う事でエボリューションが始まるんじゃないかと思ってるんだ」
「接近戦ね!」
「もし回りを囲まれた時に、拳銃で一気に殲滅出来ればエボリューションは起こるかもしれない。だけどもその銃は効かないかもしれないと思って」
「Armor Piercing(徹甲弾)かGrenade launcher(擲弾発射器)だったらいけるんじゃない?持ってきてるでしょ」
「ハンドガンじゃないんだぞ、保険で持って行くのか?慣れない剣を使うんで、身軽に行きたかったんだがな」
「APに対応したハンドガンは持ってきてないし、念の為にライフルは持って行くべきだわ」
「ならば、圭一にも練習させよう」
「へ?」
「この場所は便利だな」
「
「20式小銃はM27(歩兵用自動小銃:海兵隊正式銃)と同じ5.56mmNATO弾だから弾も撃ち放題だぞ!」
ニコニコしながらM27と言う兵兵隊の使う小銃を渡してきた。
バトルジャンキーかよ。
そのお陰か、陸軍演習場にある射撃場でイヤと言う程小銃の練習をさせられた。
「圭一もマリアは嫌いじゃないだろ」
と、背後から手取り足取り…………いや、足は持たれて無いが、背中にマリアのボンッとした柔らかい何かを押し付けられながら射撃のフォームを教えられ、平静を保つのに一杯一杯だった。
シューティンググラスを付けた硝煙香るマリアは、とても危険な香りがする良い女性で、このまま海兵隊に就職しようかと思ったくらいだった。
所詮、高卒の男なんてこんなもんさ。
撃っては分解・掃除を繰り返し、夕方までみっちりと射撃訓練を行った。
俺が慣れだしてからは、二人は慣れない剣を持ち、逆に俺が教える側に変わる。
俺もいい加減に覚えていた事もあるので、自己流が多いんだが、戦いを生業とする二人は覚えるのも早く、何かサマになっていた。
そして次の朝…………
「それでは、日米合同に依る軍神作戦を実行する!」
陸軍のお偉いさんなんだろうが、ネーミングセンスが無い。
砂漠の嵐だとか、スカベンジャー作戦だとか、不屈の自由作戦とか星の屑作戦とか……色々あるだろ。
時代錯誤も甚だしい。
そう思っている間に無人のリモートコントロールで動く作業者が、直径15mの穴を塞ぐ鉄板をガスで切断しだしていた。
四角に切っている鉄板上部には、フックとワイヤーが付けられており、鉄板を切断後に車両で引き倒す。
そこにハンヴィー後部に装着したミニガン、GAU-17 M134 と呼ばれる6銃身、口径7.62mmの弾が毎分2000発以上で出て来たスライム等を蹂躙する。
ある程度撃ち払った所で、抜刀隊と呼ばれる俺を主とした剣士達が探索をしながら奥へと進む作戦だ。
上から下まで戦闘服一式を着こみ、背中にはM27を背負い、両脇にはマシンピストルと呼ばれるグロック・G18C、フルオートで撃てるハンドガンをぶら下げている。代わりの弾倉はバックパックに入れており、ついでに幾つかの復刻したカロリーメイトのフルーツ味を入れている。
シールズの仲間はゴムの用意をしたか?と聞いて来たので、俺のモノはゴムを突き破るぜと返してやった。
もう少しで鉄板が切り終えると思う頃、全体の雰囲気が一気に真剣な物に、闘争心剥き出しに変わって行く!
ハンヴィー後部に装着してあるミニガンが回転を始めた!
「ドアを開けるぞ! 3・2・1、引け!」
合図と共に鉄板と繋がっていた車両が動き出す!
ワイヤーで繋がれていた鉄板は、ゆっくりと引き倒され、そのまま地面に砂煙を上げながら倒れていく!
その砂塵の中から溢れ出すスライムモドキ!
バララララララララララララッ!
扇形に陣形を取ったハンヴィーからガトリングガンの掃射が始まった!
四台のハンヴィーから凄まじい射撃が始まり、凄い勢いで空薬莢が飛び出て来る!
俺達は跳弾を防ぐ為に鉄板で作ったトーチカに身を潜め、掃射が終わるのを待つ。
もし、溢れ出るスライムを押し返せない場合は、歩兵は後退し、100式戦車の榴弾を穴目掛けて撃つ予定になっていた。
数分も掃射が続いただろうか。
「討伐隊準備!」
拡声器で届く準備の声。
その瞬間を待つ俺らは少し緊張した様子でその時を待った。
「リラックスしてるな」
「一度経験してますからね、それよりも俺の近くの背後には――」
「分かってる近づかない。それに俺らは早々にエボリューションして後退する予定だからな。後は頼むぜ」
ヘルメットに装着された動作撮影の機械を小突いてきた。
「出来る限り奥まで行ってやりますよ」
その時、顔を横から腕で絡め取られ、唇に暖かくて柔らかいモノが当たる。
「んんッ!」
驚き眼前を見ると、目を瞑ったマリアさんだった!
「勝利のおまじないよ」
唇から離れていくマリアさんの唇!
一瞬の事に何も出来なかった。
「ヒュ~」
何処らからともなく口笛が消えていた。
「揶揄わないで下さい」
「あら、私は結構本気なんだけど」
笑みを浮かべながら俺を見て来るマリアさん。
「おい、ソロソロだぞ!」
少し良い感じの所にデニスさんの横やりが入った。
その直後、ミニガンの射撃が止まり、拡声器が木霊する!
「抜刀隊突撃!」
何時の時代かよと思いながらトーチカを飛び越え先陣を切って走り出す!
辺り一面は、スライムの水分なのか濡れていた。
そこを一気に飛び越え最高速で鉄板を通過する!
身体を反転させながら予想されて居た残っている鉄板の裏に潜むスライムを新しいカーボンとチタンの複合材で出来た剣で切り裂く!
「うぉりあああああ!」
十数匹残っていたスライムを次々に叩き斬り、回りに居ない事を確認すると来いというハンドサインを送り先へと進んで行く。
今日もまた長い一日になりそうだ……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます