第16話 新しい装備
◆◆◆ 16話 新しい装備 ◆◆◆
「男なら一旗立ててこい!」
「あら!カッコイイんじゃない?私の生まれたテキサスも肩にライフル抱えて歩いていたわよ~」
「肉とアイス食い放題なんだってな。一度招待してくれよ~兄貴」
岡田さんが派遣社員の契約書を持って説明しに来た。
そのまま俺は人身御供に出されるように契約された。
「圭一、お母さんが新しいピックアップが欲しいそうだ」
「圭ちゃん、パパがランボルギーニ―のトラクターが欲しいって!」
「兄貴、俺は原チャリ!原チャリ!」
「宝くじに当たったんじゃねえんだぞ!いいかげんにしろ!」
あの山口の騒動から丸一日以上開けた為に、俺はバリバリ元気でパワーアップしていた。
Dランクになってノーマル比で3倍はありそうな力だ。
久しぶりの丸一日討伐無しだったので、ゆっくりといつもの仕事を行い、今日は久しぶりに裏山を見に行く事にした。
やはり身体は軽い。
今まで苦にはなっていなかったが、更に身体が楽に動く。
飛び跳ねるように軽く20分余りでトンネルの現場に着いた。
テントには交代で見張りの隊員が張り付いていた。
その中に見覚えのある顔が座っていた。
「おはようございます、西田さん」
一番初めに来て対応をしていた西田さんだった。
「やあ、おはよう。こっちは大人しいもんだよ」
朝になって陽が刺しこみ、ライトは消されて自然の美しさが際立っていた。
見張りのテントとトンネルを塞ぐ鉄板が無ければ。
「みたいですね」
「山口は大変だったみたいだね。少し話は聞いたよ」
「ですよ!スライムは湧き出て来るし、米兵には絡まれるし!」
「その割には大活躍だったそうじゃないか」
「こっちのパワーも上がっているのに、あっちは平気で対応してくるんですよ!化け物かってつうの!」
「……シールズと行動を一緒にするんだってな」
「所属は海軍、海兵隊……派遣ですけど」
「俺達にとっては雲の上の存在だけどな、圭一君にとっては単なる戦争屋だもんな」
「同じ人間かって感じですよ。女の方もすごかったし……」
「へーシールズは女性隊員も多いと聞くけど、やっぱりすごいんだね」
「…………」
衝撃的な身体でした。
余り言えないけど。
「そう言えばこっちも女性隊員が入ったんだ。金井!」
「隣にいた女性隊員がシュタッと立ち上がった」
「今日からここに転属になった金井だ」
「金井麗陸士長です!山口では助かりました!」
少し長い髪を後ろで結び、パッチリしたクリクリ丸い目で俺を見て来る。
迷彩服を盛り上げるまあまあ豊かなお胸に目が行きそうになるが、全体的に可愛い感じの隊員だった。
「俺、何かしましたっけ?」
マジで覚えていない。
特に好みと言う感じではないんだが、こんなに可愛い感じの顔を忘れる事は無いと思うんだが……
「山口のトンネルの中で、外を塞ぐ準備が出来たと伝令で伝えに向かった者です。その後で抱きかかえられて脱出した……」
「あ!あの時の!」
「足には自信があったので伝令を務めたのですが、田村さんの邪魔になってたみたいで。この恩を返す為にこちらに転属して参りました!」
「わざわざこんな田舎に……よく来たね」
「あのまま追い抜かれていたら、あの粘体生物に飲み込まれていましたから。御恩を返すのは当たり前です」
「そう言う事だから、何かあったらこき使ってくれ」
挨拶もそこそこに、仕事に戻る二人。
目視だけじゃなく、震度計や熱探知も同時に行っている様子だった。
1日4交代で回しているらしいが、寝泊まりは高校の体育館を使っていた。
その周りにはテントや車が入り、食事やお風呂の設備が出来上がっている。
監視は続けるのだろうが、一生このままだと言う事も出来ない。
その事について、国も色々と考えているらしい。
俺はトンネルの側から離れ、山を見回りながら山を下りていると、持っていたスマホが鳴り出した。
「もしもし?」
表示には非通知と出ていたが、多分あそこからだろう。
「ハーイ!圭一、今どこにいる?」
その声はシールズのマリアの声だった。
「家の山から下りる所だよ」
どうせ、GPS機能でどこにいるか分かってての言葉だろう。
「もう少しで迎えに行くから待っててね!」
「オッケー!」
その直後に派手な音と共にオスプレイが斜めになりながら上空を通過していく。
白っぽいグレーの機体横には、星マークとNavyの文字が入っている。
アメリカ海軍だ!
「さあ、もう一つの仕事か」
山を下り自宅で支給された迷彩服に着替え、準備を整える俺だった。
砂漠の様な薄い茶色い軽自動車のようなジープが家に止まった。
「ジャングルかと思ったぞ圭一!」
流暢な日本語を話すデカい男が狭い車の中から出て来た。
この二人組のリーダーを務めるデニス・ワトソンだった。
英語しか話せないと思わせといて、実は数ヵ国語もペラペラ話せるらしい。
「馬もいるのね!故郷を思い出すわ~」
そしてもう一人の女。色々な所がデカいマリア・ミラー。今日も黒っぽいデジタル迷彩がパツパツになっていて今晩のおかずになりそうだった。
「で、仕事なのか?」
「その前に我らからプレゼントだ」
軽トラックのようなジープの荷台からケースを渡してきた。
「開けても?」
二人に聞くが笑みを浮かべて早くやれと顎を振る。
長いアルミケースに入っていた物は剣……いや、刀?
黒い刀身に刃先だけが鉄で出来ているような片刃の刀だった。
「カーボンとチタンのブレードだ。どうだ?いいだろ」
当然、鍛造じゃないんだろうが、チタンだったら堅そうだ。それに強度を上げる為か、肉厚が結構分厚い。それに、刃の長さは指定した50cm程度。
入れ物から取って握って見るが、悪くない。重さは少し重くなったが、パワーも上がっている為に問題無かった。
ただ……
「何で三本も?」
「一本はスペアだ。もう一本はスペアのスペアだ」
「どこかの海賊狩りや巨人討伐隊じゃねえんだからそんなに要らないだろ」
「早急に作れとの要求で出来た物だからな。実践で役に立つか分からないだろ。そのトマホークは本国で本場の奴に作らせている。それまでそのちっさいので我慢しろ」
いや、デカいのを作ってるんじゃないんだろうな。
お前みたいな化け物じゃねえんだぞ。
「で、そのブレードが役に立つか実験だ。いくぞ」
「ど、何処だよ」
「まあ、飛びながら説明する。まずは乗れよ」
マリアは既に小さいジープに乗っていた。
「いらっしゃい!貴方の席はここよ!」
助手席をポンポンと叩いていた。
「俺は広い機銃席で十分だ」
デニスはそう言いながら後ろの機銃が設置されるであろう場所に座り込んだ。
俺は仕方なくマリアの隣に……
「Could you please driving」(運転をお願いします)
「You're welcome!」(ようこそ!)
肩が触れそうな距離で車は走り出した。
「オスプレイでどこかへ行くのは分かりますが、それから何処に?」
「本拠地の一つ、佐世保だよ。ステイツの第七艦隊の一部が来ている。先ずはそこへ向かう」
おいおい、太平洋艦隊の主力じゃん。
俺が入っても良いのかよ…………
これからそんな事も言っていられない事が待っているとも知らず、車は学校まで走り、オスプレイに乗せられて飛んで行くのであった。
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