第3話 謎の痛みと掲示板

◆◆◆ 3話 謎の痛みと掲示板 ◆◆◆



「痛ッ いて……いたたたたたた!」


 エボリューション進化とノーマルよりFランクへと言う言葉の意味を考える暇なく、全身に走る強烈な鈍痛が思考と身体の動きを奪う!


しかも何だかんだで25時間!?


レベルアップにそんなに時間が掛かるのか?!



まずい。

このままじゃ闘いにならない!

今はスライム程度だけども、変な物が出てきたら絶対死ぬ!



俺は抜いていた大鉈をどうにか鞘に納め、来た道を戻りだす。


「はあ はあ はあ はあ」


息をするのも力がいる。

手足を動かすのが三倍位は力がいる。しかもバランスまでおかしくなり、壁を支えながらやっと歩いているような状態だった。


目は霞み、耳も自分の吐く息が妙に聞こえ、壁を触る触感までもが変だった。


一本道で良かった。


それに出て来るのもスライムだけで良かった。

はやく家に戻らないと。


後ろを振り返る余裕も無く、ひたすら地上目掛けて歩く。


まるでズタボロの敗残兵だ。



長い


楽に歩いて来た道だったんだが、こんなに長い道を歩いていたのか。



まだ


まだなのか


早く来い


入り口は


まだか




「あっ」



何か手に当たる感触と ガシャン という音で気が付いた。


草払い機だ!



音も煩くて邪魔になるからと、立てかけていたんだった!


持って上がる力も気力も無く、上りになった通路に這いつくばいながら、俺は必死に登って行く。



「あ……出られた」


息も絶え絶えであったが転がるように地上へと出てこられた。



太陽の日を浴びて安心するも、まだ安心は出来なかった。

初めのスライムはココで発見したからだった。


「まだだ まだ持つんだ 俺 俺の身体」


どうしてこうなったかなんて言うのはどうでもよかった。

早く家に帰らなきゃ。


その思いだけで俺は勘を頼りに家に向かった。







ガララララガシャン!


玄関横の納屋から家に入ろうとして思いっきり転んだ。



ああ、家だ。

帰ってきたんだ。


殆ど無意識で帰った事に安心すると同時に声が聞こえる。



「何してるの! ちょっと大丈夫!」


ああ母さんだ。助かった。



頬や額に当てられるヒンヤリした柔らかい手の感触。


「ちょっと熱があるじゃない!」


「具合……が……悪い」



「ちょっとここで寝ないで!」


リュックや腰袋のベルト、脚絆きゃはんや靴を脱がされ強引に起こされる。


殆ど同じ身長の大柄な母に肩を組まれ、家に上げられどうにか自分の部屋のベッドまで運ばれた。



身体が痛くて経過を話す事も億劫な俺の額に冷たい感触が伝わる。


「ほら、これも飲んで。」


強引に上半身を起こされ、虚ろな目で前を見ると誰もいない。

ああこの背中の柔らかさは母が背中で倒れないように支えてるんだ。

懐かしいような安心出来るような感覚を思い出していると、強引に口に何かを入れられる。



「解熱剤だから、水も飲んで。」


唇に当てられたコップで入れられた物を飲んでいく。


どうにか薬らしき物を飲み干すと、ゆっくりとベッドに寝かされた。


柔らかい身体から離れると薄れる安心感。

だが、布団を掛けられ中で手を握られた。


ああ安心する。




「病院に行かなくて大丈夫?」


「だ……いじょうぶ」


顎を動かすのも痛い。



「暫く見とくから寝てな。」



母の柔らかくも少しヒンヤリした手を握り返し、そのまま俺は直ぐに意識を手放した。



その時、またあの声が聞こえた気がした。




『骨格のエボリューション進化を終了。第二フェーズへと移行します。』





◆◆◆



 その頃、全国では特に目立ったニュースは出ていなかった。


だが、一部のSNSやネット掲示板などで話題にはなっていた。






【歓喜】異世界トンネル開通記念【剣と魔法】




1:名無しの1勇者

うろ覚えだが、


『地球外生命体の初討伐に成功、現在では、地球上に展開された亜空間トンネルより湧き出る集団魔物暴走スタンピードの可能性が高く、地球滅亡の可能性は高い状態。選ばれし者は侵入する地球外生物の討伐を推奨する』


と脳内で聞こえたんだが、これマジ?



2:名無しの冒険者

お薬出しときますね



3:名無しの冒険者

エイプリールフールはまだ早い



4:名無しの冒険者

トンネルを抜けると、そこは雪国だった



5:名無しの冒険者

俺も聞こえた!



6:名無しの冒険者

俺も!俺も!



7:名無しの冒険者

集団妄想乙



8:名無しの冒険者

新手の釣り乙



9:名無しの冒険者

それって7時頃だよな

学校に行っている時だったけど、回りでも何人かが聞いている

でも聞こえてない人もいた



10:名無しの冒険者

敵国からの新型兵器か



11:名無しの冒険者

残留放射能障害だろ



12:名無しの1勇者

よかった

俺だけじゃなかったんだ



13:名無しの冒険者

聞えてないけどパーティー組もうぜ



14:名無しの冒険者

どこのネトゲだ?



15:名無しの冒険者

現実だよ

学校では話題になってる



16:名無しの冒険者

同じく大学で話題になっている

でも教授方などの年上には聞えていない様子



17:名無しの冒険者

そうそう!若い先生に聞こえている人もいたけど

おっさんやババアには聞えて無かった



18:名無しの冒険者

このスレ加齢臭くさい



19:名無しの冒険者

で、俺も聞いたんだが、亜空間トンネルってどこだ?



20:名無しの冒険者

SNSでいくつかそれらしい物があがってる

https://******

https://******

https://******



21:名無しの冒険者

捜索班乙

ダンジョンってマジやんけ!



22:名無しの冒険者

コラ乙



23:名無しの冒険者

ちょっと富士山行ってくる



24:名無しの冒険者

俺もポーション買ってくる



25:名無しの冒険者25

武器屋行ってくる



26:名無しの冒険者

宿屋はうちの山賊亭をお願いします



27:名無しの冒険者

で、身ぐるみ剥がれると



…………


………


……



145:名無しの冒険者

また聞こえた!



146:名無しの冒険者

俺も!俺も!



147:名無しの冒険者

今度は


『討伐隊一人の累積値が一定数に達した為、ノーマルよりFランクへ移行します。

亜空間トンネルより湧き出る集団地球外生命体暴走スタンピードの可能性は依然高く、地球人滅亡の可能性は高い状態です。選ばれし討伐隊は侵入する地球外生物の討伐を推奨致します。』


だとよ



148:名無しの冒険者

記憶力流石



149:名無しの冒険者

>>147

ありがと



150:名無しの冒険者

1が>>12から消えている件について



151:名無しの冒険者

奴は魔界へと行った

そして英雄になったのさ



152:名無しの冒険者

本題に戻すぞ

誰かがレベルアップしたと言う事でOK?



153:名無しの冒険者

SNS捜索班

全国の謎のトンネルを捜索汁!



154:名無しの冒険者

ゲームだとギルドにて冒険者登録をすると

そこでFランクへ登録されるパターンだが



155:名無しの冒険者

それと選ばれし討伐隊と言うのが引っ掛かる

若い人全員じゃないのか?



156:名無しの冒険者

誰しもが冒険者=討伐隊にはなれないって事?



157:名無しの冒険者

情報不足だ



158:名無しの冒険者

こちら山口

山口駐屯地で自衛隊の車両の動きが活発化してる



159:名無しの冒険者

SNSにもあった秋芳洞か?



160:名無しの冒険者

こちら北海道釧路市

阿寒湖周囲にダンジョンがあると話題沸騰中



161:名無しの冒険者

こちら千葉県にある東京ドイツ村

ぽっかり空いた穴に誰か落ちた模様

人だかりが出てきててカメラクルーもいっぱいいる

芸能人らしい



162:名無しの冒険者

それドッキリや



163:名無しの冒険者

開通記念カキコ



164:名無しの冒険者

今北産業



165:名無しの冒険者

1が魔界転移

全国にダンジョン

誰かがFランクにレベルアップ



166:名無しの冒険者

意味分からへん



167:名無しの冒険者

おっさんハブられ

若い勇者爆誕

我々は討伐隊



168:名無しの冒険者

余計分からへんねん



169:名無しの冒険者

取り敢えず親父の散弾銃を持ち出してみる定期



170:名無しの冒険者

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