第19話 気だるい授業と、昼食
風香から解放され、教室に戻って来た俺は、大きなため息をついた。
「はああああー」
「どうした?広哉。そういや、渡辺お嬢様に呼び出されてたけど」
怪訝な目をした泰正がそう尋ねて来た。
「そんなふうに呼ばれてるのか、あいつ。まぁ、ちょっと聞きたいことがあったらしいぞ」
「はーんそうだったのか。おっと、もう授業始まるな」
そう言うと、泰正は自分の席に戻って行った。
泰正が席につくのとほぼ同時に、1時間目の数学を担当する教師が入って来た。
今日も長いようで短い、ようでやはり長い1日が始まった。
なんとも学校というのは面倒くさい代物である。
50分きっかり授業を受ける、ということを1日に6回も繰り返さなくてはならない。
その上、その授業で学んだことを定期テストで紙に書き、教師たちに「自分はこれだけ勉強しましたよ、あなたが教えたことは身についていますよ」と、示さなくてはならない。
俺は親に小言を言われたり、テストの点数が悪いせいで日常生活になんらかの制限をかけられるのが嫌なので、テストだけは真面目に取り組んでいた。
もっとも、テストだけだが。
今受けているのは数学の授業だ。数学の得手不得手は、人によって大きく異なる科目だなぁと心底思う。俺はさほど苦手としていないが、泰正なんかは「数が苦だぁー」とか言って苦しんでいる。
別に苦手ではないからというわけではないが、この授業は退屈だ。先生には失礼な話だが。
先生が用意したプリントの問題を解き、それを先生が黒板にびっしりと書いた数式とともに解説する。
俺はなんとなく隣の席に目を向けた。そこには
女子高校生の平均より少しだけ高い身長と、丸く小さい顔に烏の濡れ羽色をしたショートヘア、という
ふと彼女と目が合い、気まずくなって俺たちは目を逸らした。
その後は睡魔と戦いながら2,3,4時間目と乗り越えていき、お待ちかねの昼休みを迎えた。
「やっと昼だぁー!なんか今日、長くなかったか?」
「そうかもな、いつにも増して眠かったし」
「何よ、寝不足?」
「ゲームしてたら気づけば1時だった」
「ヤバすぎ、昼夜逆転してるニートじゃねぇか」
泰正と話しながら食べる飯は、とても美味しい。
「それで、今日も保健室行くの?」
泰正と話しながら食べる飯が不味くなった瞬間だった。
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