第4話 プロローグ4〜帰っていいですか?〜

「あははははははは!」

保健室に女性の甲高い笑い声が響く。その声の主は指田理子である。彼女は、俺があまりにも間抜けな声を出すので、それにツボって、かれこれ3分ほど笑っているのであった。


「い、いや笑いすぎです」

「いや、はへって面白すぎでしょ、あはははは!」

「しょうがないですよ、いきなりそんなこと言われて。古賀さんもびっくりしましたよね?」

理子は話ができる状態ではないので、俺はこの場における唯一の頼みの綱である、柚希に話を振った。

「いや?私はむしろありがたいかなー、ホントに勉強できないし」

「えぇ…」

蜘蛛の糸にすがる思いで柚希を頼ったが、その糸は切れてしまったようだ。


「あー、よく笑ったわ。あとは広哉がいいよって言えば決まりだけど、どうするの?」

やっと笑いが収まり、まともに話せるようになった理子にそう聞かれる。

「えぇ…いや、一応写真部だし、放課後空いてない日もあるよ」

「来れる日だけでいいのよ、そんな、毎日勉強してても柚希ちゃん疲れちゃうし」

「あ、そうですか。まあ、検討します。とりあえず、帰ってもいいですか?昼休み終わっちゃうんで」

時計を見ると、昼休みが終わりに近づいていた。

俺は曖昧あいまいに返答し、この場から去ることにした。

「うん、いいよー、いい返事待ってる」

理子にそう言われ、ほっと胸を撫で下ろした。

「それじゃ、怪我の手当て、ありがとうございました」

「じゃーねー」

2人に見送られ、俺は保健室を出た。

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