第3話 プロローグ3 〜なんで俺が?〜

思いがけず理子に呼び止められ、俺はたじろいだ。

「え、なんですか」

「ほら、この子を紹介したくてさ」

そう言って理子は隣に座る女子生徒を手で示す。

「古賀柚希ちゃんね。広哉と同じ高1だよ」

「初めまして、古賀です」

理子にそう紹介されたその美少女は、ペコりとお辞儀をする。

「は、はあ。あ、南條広哉なんじょうひろやです。」

「よろしくね、南條くん」


俺と同じ高1ということに驚きを覚えつつ、何がよろしくなのかはわからなかったが、俺も一応頭を下げておいた。

「まぁ柚希ちゃんはいろいろあって保健室登校してる感じなんだ」

「そうだったんですか」

あまり興味がなさげに相槌を打つ俺を見て、理子が口を俺の耳に寄せてきた。

「美人でしょ?仲良くなりたいんじゃないのー?」

「っ…」

鏡を見ずとも自分でもわかるくらい頬が紅潮したのを、俺は自覚した。

「なっ、何言ってんですか!やめてくださいよ」

俺は柚希に聞こえないよう、小声で理子に抗議する。


その様子を見た理子はニヤリと笑って

「あー、そう言えば柚希ちゃん、勉強苦手だったよね?広哉って実は勉強できるんだよー」

と言い放った。俺も柚希も予想外の爆弾発言である。

「えそうなの!?」

「いや、そんな自慢できるほどでは…」

理子の発言は完全に不意打ちだったが、美少女に憧憬の眼差しで見られては、思春期の男子高校生は照れてしまうのである。

「謙遜しないの、毎回テスト順位高いじゃん。前は学年4位だったっけ?」

「うわ、すごっ。私勉強は全然だからなぁ…」

「そうだ、広哉放課後とかどうせ暇でしょ?勉強、教えてあげればー?」


女性陣の会話のスピード感についていけなかった。が、最後の聞き捨てならないフレーズだけが、脳内で何度もリフレイン。

(勉強、教えてあげればー?勉強、教えてあげればー?勉強、教えてあげればー?)

俺は数秒したのちに、やっとの思いで喉の奥から声を絞り出した。

「はへ?」

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