訳あって…?
第5話 自宅にて
昼休みの後は、5,6時間目の授業を適当に受け、部活もなかったのでそのまま帰宅した。
「ただいま」
両親とも仕事に出ているので家には誰もいないが、俺はつぶやいた。自室へ行き、荷物を置く。堅苦しい制服を脱ぎ、パジャマに着替える。ちなみに我が家には部屋着という概念がないため、俺のクローゼットには、出かけるときに着る私服、制服、パジャマの三種類しか入っていない。
この日は季節外れの陽気で、ワイシャツも俺の汗で少し湿っていた。部屋の中も少し暑かったため、俺はエアコンのスイッチを入れた。しばらく使っていなかったためか、エアコンから出てくる風は少しだけカビ臭い。リビングへ行って、冷蔵庫から麦茶の入ったボトルを取り出し、適当にコップを取って注ぐ。それを持って自室へ戻り、俺は携帯ゲーム機を起動させた。普段、母さんが帰ってくるまではたいていゲームをして過ごす。
ゲームを始めて1時間くらいが経ち、玄関のドアが開く音がするのと共に、母さんが帰ってきた。
「ただいま~、今日も疲れた~」
「おかえり」
俺は自室を出て玄関まで出迎えに行く。そして母さんが荷物を置き、パジャマに着替えて(当然母さんも部屋着など持っていない)手洗いうがいをし終わるのを、俺はリビングでテレビを見ながら待っていた。
「すぐ夕飯作るね、今日は肉じゃがにしようと思ってるの」
「あぁ、わかった」
そう答えるのとほぼ同時に、母さんが冷蔵庫を開け、夕飯の準備をする音が聞こえてきた。
30分ほどすると、肉じゃがのいい匂いがリビングに充満してきた。ちょうど空腹がピークに達してきた頃合いだったので、俺の期待も膨らんだ。
「できたよー」
少しして、母さんが俺を呼んだ。はーい、と返事をして、ダイニングテーブルの椅子に腰を落ち着かせた。
「いただきます」
「召し上がれ」
いつもの通り挨拶をしてから、俺は夕飯に箸を伸ばした。俺はおかずから食べる派の人間なので、初めに肉じゃがに手を付けた。じゃがいもをかんだ瞬間、まろやかな出汁がじゅわっと染み出してくる。俺が肉じゃがを堪能していると、母さんが、あ、そうだと話し始めた。
「理子ちゃんから連絡あったんだけどさ、なんか、女の子に勉強教えることになったんだって?」
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