15話 校長室
例によって教頭先生の
その後、私から大体の流れを聞いた教頭先生に連れられ、私たちは校長室に行くことになった。校長先生はじめ、他の先生の前でその詳細の聞き取りが行なわれるのだろう。
校長室に向う階段、私は教頭先生の目を盗んであかりちゃんにひとつだけお願いをした。幸い、まだ事件のことを知らない生徒で階段や廊下は賑わっている。少し前を歩く教頭先生に会話が聞こえることはなさそうだ。
「ねえあかりちゃん、どこまで聞こえていたか知らないけど、短刀のことは伏せていて欲しいの」
「あ、あの男が奪っていった袋のことですか?」
「ええ、あとで説明するから、先生方の前では・・・ね、お願い!」
私がそう言うと、その大きな目で私を見たあかりちゃんは「わかりました!」と力強く
これから警察も来るだろう。彼女にウソを着かせるのは本当に心苦しいが、アノ短刀のことだけは何とか伏せておきたかった。
私のことを知っている凛花、そして後から説明すると決めたあかりちゃん以外に、私の家族がヤク○屋さんと関係があることはバレたくはなかった。
校長室に着いた私は用意していた言葉を述べた―――
昼休憩から戻り、一人になったところでゾンビに
私が一人でいることを確認した彼は、扉にカギを掛け私に近付いて来た。そして拳銃を取り出した彼はその銃口を私に向けると、売上の入った手提げ金庫を渡せと迫ってきた。売上やお釣りを入れるためにと
それを差し出すのを
そうそう、その前になぜあかりちゃんがその場に現れたかを説明しなければならない。
彼女はクラスの催し物『かくれんぼ中』に絶賛参加中だった。午後一時に始まったそのイベントで「隠れる側」だった彼女は、真っ先に図書室へやって来た。そしてそこで番をしていたミズキちゃんに一声掛けると、自分はパーテーションの奥へと隠れた。
一方昼食を終え、すこし遅刻して図書室に戻った私。交替で休憩に入るミズキちゃんは、私に何か言いかけたが、クラスメイトが彼女を迎えに来たため慌てて部屋を出て行ってしまった。きっとあかりちゃんが来ていることを告げたかったのだろう。
そんなワケで、パーテーション裏で身を潜めていたあかりちゃん、どこまで私とゾンビ男の会話が聞こえていたか定かではないが、ヤバそうな会話の流れとスキ間から見えた光景にただ事ではないとそこを飛び出し、ゾンビ男のアゴに得意の真空飛び膝蹴りをお見舞いした―――。
とまあ、これがあかりちゃん登場の真相だ。
そんな成り行きを校長先生はじめ、校長室に集まった三~四人の先生に説明する。あかりちゃんは終始、私の話に頷いてくれている。
「その金庫がこれかね」
校長先生が図書室から持って来た金庫を眺めながら言う。
「はい。そしてこちらがその拳銃で・・・」
そう言って教頭先生がハンカチに包んだ拳銃をそっと差し出す。でももうソレ、あかりちゃんが思いっきり触ってるんだけどね。
「どう見てもオモチャの拳銃のようだな」
「とんだことになりましたな・・・」
予想通り教頭先生は重大な事件にオロオロしている。彼にとって警察沙汰は世の中で一番避けたい出来事だった。
その時、窓の外からパトカーのサイレンが聞こえて来た。
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