8話 文芸部
階段を登ると、上からピアノの
玄関に貼ってあったポスターを見るに、明日は午前と午後に一回ずつ、独演会の予定が組まれている。きっとどちらの回も音楽室は満員御礼になるだろう。
そんな音楽室の方を横目で見ながら私たちは図書室の扉を開ける。
文芸部の会場―――
本来、部員五名以下の我が文芸部は正式に『部』としては認められていない。正式な部活となれば教室を一部屋借りられるのだが、さすがにそれは認めてもらえなかった。その代わり、当日は閉館する図書室を借り受けることになったのだ。
図書室をパーテーションで区切った扉側の三分の一ほどのスペース、それが私たちに与えられた場所だ。従ってパーテーションの裏側には山積みになった机やイスがところ狭しと置かれ、その奥にはもちろんたくさんの本棚が鎮座している。
その与えられた扉側のスペースに長机を二本並べ、その上に機関誌を並べて販売する。
その他にはイスを十脚、窓側に向け二列に並べて配置。機関誌を購入したり、あるいは立ち読み(座り読み?)する人がドリンクを飲みながら本を読むスペースだ。
機関誌を並べた机の内側には私たちの私物はもちろん、明日は大きめのクーラーボックスが用意される。中には一本五十円で販売予定の飲み物を何種類か用意することになっている。
要するに機関誌とドリンクを買って、窓辺のイスに座り読書にいそしんでもらおう。そう言う主旨の催しである。
「明日はたくさん、来てくれますかねー」
珍しくミズキちゃんが弱気な言葉を発する。
「大丈夫よ、先輩たちが出した機関誌も毎年好評だったらしいし」
「そうですかねぇ。だってこんな三階の一番奥まったところまで人、来ますかねぇ? そうでなくても特別棟なんて他にあまりイベントやってないし」
確かにミズホちゃんの言うとおり、特別棟、特に図書室のある三階はあまりイベントで使う部は少ない。廊下中央にある美術教室で美術部と書道部の展示、そのこっち隣の音楽室では高倉先輩の独演会があるが、それとて正味一時間くらい。あとは突き当たりで我々文芸部が機関誌を販売しているくらいだ。普通教室棟の賑わいに比べれば雲泥の差だろう。
「一冊も売れなかったらどうしよう・・・」
「大丈夫よ
根拠なく後輩を励ます私も実は自信はない。でもこう言うことって楽しんだもの勝ちだよね。
明日は年に一度の学園祭、私たちの作品の発表の場でもある。
私は長机の上に歴代の機関誌とともに、私たちの作品集を並べ始めた。
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