File 4. 名探偵と学園祭
第1章 私の祖父
1話 祖父の退院
夏休みも残りわずかとなった八月のある日、私は祖父の退院手続きとその付き添いに来ていた。
六階の一番奥の個室、そこが祖父の病室だった。
「悪いな
「いいわよおじいちゃん、ちょうど夏休みだし。でも退院できてよかったわ」
「ああ。でもこれからが大変だ。先生から毎日のリハビリメニューももらっているし、マジメにやらんと歩けなくなると脅されているからな」
「そうよ、先生の言いつけを守って、早く前みたいに元気になってもらわないと!」
「ははは、もう『前みたいに』と言うのはムリだ。なんせもういい歳だからね」
そんなやり取りをしていると、病室のドアをノックする音がした。
『会長、失礼します』そう言って入って来たのは
以前、祖父が現役だったころの・・・まあ、部下みたいなものかな。真田さんはいつもこうやって何かと私たちのことを気に掛けてくれている。今日もきっと退院と聞いて駆け付けてくれたのだろう。
「お加減はどうですか?」
「ああ、
「・・・・。そうですか、それは良かったです」
私は二人の会話を適当に流す。
「それより玲」
それまで冗談らしきことを言っていた祖父の顔が急に真剣なモノに変る。
「うん? なあに?」
「真田もいるからここで聞いておくが・・・」
そう言うとその真田さんと何やら目配せ。何か深刻な話だろうか?
「お前・・・最近、何か変ったことはなかったか?」
私を見る目が現役だったころのものに変っている。
「変ったこと?」
「ああ、そうだ」
それだけ言うと押し黙ったまま、その鋭い視線を私に浴びせる。ベッド脇の真田さんも神妙な顔でこちらを見ている。
―――変ったこと・・・?
私はここ最近の出来事を思い浮かべてみる。
七月の上旬から立て続けに私の身の周りでは様々な事件が起こった。今はその全てが一応解決はしているが、何人かケガ人は出たし、警察沙汰になったものもある。
しかし、一番変ったこと、不可解なこと言えばやはり・・・。
私はキャンプ場で出会った奇妙な出来事を思い出していた。そう、そして祖父が聞きたい『変ったこと』と言うのもきっとその
言うべきか否か? 私は一瞬ためらう。
しかしそんな私の心中を祖父が見逃すはずもない。ゆっくり視線を落とした祖父は「言ってみなさい」とだけ口を開く。
そのひと言は優しく穏やかではあったが、有無を言わさぬ威圧感溢れるものだった。きっと私がどんなに言葉
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