22話 音田さん

 私は自らのスマホを見つめながら言う。


「これ、昨晩、若菜さんから送られてきたメールなの」


 そう言うと私は凛花に説明を始めた。


 真冬君の目撃情報を確かめようと、私は昨晩、若菜さんにメールした。もちろん、若菜さんが関係しているとは限らなかったが、調査できる範囲だけでもしておかなければ。そしてその範囲はアドレスを知っている人に限られる。そのうち凛花と真冬君とは昨日の帰りに話をしたから、その他の人物に聞いてみるしかなかった。太刀川、そして若菜さんに。


 私が若菜さんに送ったメールはシンプルなものだ。


『昨晩、私たちの部屋から帰ったあと、どうしていましたか』


 その質問に対し「探偵さんみたいね(笑)」と前置きしながらも、隠し立てすることなく、教えてくれた。


 それによると、夜中の十二時過ぎ、自分のバンガローに戻った若菜さんの部屋に、音田さんが尋ねて来たそうだ。それから二時間ほど、二人でお酒を飲んだり、整体マッサージをしてもらったりと、二時間ほど一緒にいたそうだ。その後、午前二時過ぎに彼は帰って行き、その後は朝、みんなに起こされるまで爆睡していた、と言うことだった。


「と言うことで、真冬君が見たのは若菜さんの部屋から自分の部屋に帰る途中の音田さんだった、って言う可能性が高いのよ」


 そこまで説明すると凛花の表情が曇る。


「アヤシイな・・・」

「ん? 音田さん? それとも若菜さんが言ってることが?」


 すると凛花は右手の人差し指を差し出すとチッチッチッ! と左右に振る。


「違う! マッサージってトコだ。う~ん、アヤシイ・・・」

「・・・・。」


「ウウンッ!」私は咳払いをひとつすると、話を続ける。


「とにかく! 音田さんと若菜さんは二時までは二人で部屋に居た。まあ、ウソを言っている可能性は否定できないけどね」


 深夜、音田さんは若菜さんの部屋に二人きりでいた。実際、何をしていたのかはわからないが、そこから出て来たところを真冬君に見られる。バツの悪い彼が多少、落ち着かないような行動を取ってもおかしくはないだろう。


 そんな時、手にしていたスマホがブルッ! と振動した。どうやらメールが届いたようだ。

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