17話 太刀川からの電話
「いやぁ・・・結局、根掘り葉掘り聞かれちゃったよ・・・」
私たちのところに来るなり、浅見さんはグチ混じりに盛大にため息を吐いた。
警察の取り調べ、私たち学生組に対しては簡易なものだった。それは学生と言うこともあるが、飯島さんとは昨日が初対面だったことも大きいだろう。その点、昔からの友人である浅見さんは、飯島さんとの出会いにまで遡ってアレコレ訊かれたらしい。もっとも話を聞くに、それは事件性と言うよりも、事故が起こった際の調書として、警察が履歴を残すための情報を収集した範囲のことのようではあるが。
それでも疲れた様子の浅見さんは、いつもの元気さが鳴りを潜め、少し不安そうな表情でソワソワしている。
そんな時、私のスマホが鳴った。病院に向かった太刀川からだ。
「もしもし、太刀川君! 大丈夫!?」
『ああ・・・俺は大丈夫だけど・・・叔父さんが叔父さんが・・・』
声が洩れて聞こえるのだろう、凛花と菅野さんも顔を見合わせて不安そうな顔をする。
『まだ・・・まだ意識が戻らないんだ・・・』
「そうなのね・・・」
『俺・・・俺、どうしよう・・・』
「しっかりして! 太刀川君がうろたえちゃダメ! 叔父さんはきっと助かるわ!」
我ながら無責任な発言と思いながらも彼を激励する。しかし私の言葉に幾分、元気を取り戻した様子の太刀川は「そうだよな、しっかりしねえとな」と、声を震わせながらも自分に言い聞かせるように呟く。
結局、彼から得られたのは『飯島さんの意識がいまだ戻らない』と言うあまり好ましくない情報だけだった。神妙な顔を付き合わせる私たち。特に真冬君はいつも以上に顔色が優れないようだ。
「これだけ経っても意識が戻らないなんてな・・・」
凛花の表情も深刻そうに曇る。
「あれからすでに半日近く経っている。あまり良い状況ではないかもしれないな」
元看護師の菅野さんもそう呟くと更に深刻な顔で続ける。
「縁起でもないけど、万が一ってことも考えないといかんな・・・」
するとそんな中、疲れた表情だった浅見さんがいつもの調子に戻って言う。
「まあ、彼は丈夫だから大丈夫さ。それよりハラ減ったよな。早朝から何も食べてない」
確かに早朝に起こされた私たちだったが、今はもうお日様も高く上がっている。予定ならとっくに朝食を食べ終わっている時間だ。しかし、この状況でお腹が空くなんて!
そこにこれまた取り調べを終えた音田さんと若菜さんが戻って来た。
「お、なんだお前たち、二人一緒に聴取を受けたのか?」二人に向かって浅見さんが訊く。
「あ、ああ。ちょっとな」
「なんだよ音田、歯切れが悪いな。まあ、言いたくないなら詳しくは聞かないがな」ははは、と音田さんに笑いかける浅見さん。どう言う意味かしら?
「オイ、玲。なんか浅見さん、意味深なこと言ってるけどなんなんだ?」
凛花も不思議そうに聞いて来る。私にだってわからないわよ!
「それになんか急に元気になったな、浅見さん」
「しっ! 声が大きいわよ!」
いつも通り、地声の大きな彼女に対し、自分の人差し指を口元に当ててそれを制する。でも確かに聴取後はあんなに疲れた様子だった浅見さんが急に元気になった気がする。若菜さんが来たから? ご多分にもれず、彼も巨乳好き??
そんな不埒なことを考えている私たちの輪の中に、今度は雪乃さんが戻って来た。どうやらこれで全員の聴取が終わったようだ。
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