第2章 それぞれのメンバーたち
7話 飯島さんと浅見さん
鉄板の上のお肉も残り少なくなり、野菜だけが微妙に残っていた。
隣のタープ下からは先ほどから飯島さんと浅見さんの大きな声が聞こえている。
きっと彼等も束の間の休日を楽しんでいるのだろう。缶ビールを片手にした飯島さんの顔が真っ赤なのは日焼けのせいだけではなさそうだ。
私たちが残りの野菜を全部鉄板に乗せていると、缶ビールを片手にその飯島さんがやって来た。
「みんな楽しんでるー!?」
「あ、叔父さん・・・なんだよ、もう酔ってんのかよ」
「まだまだこれからだよ!」陽気に答える飯島さん。
「はい、楽しませてもらっています!」私は太刀川との会話を遮るようになったが、そう答える。
「そう! それは良かった! で、俺も少しココにいていいか?」そう言いながら手にした缶ビールをゴクリと飲む。
「はあ? 大人は大人、別行動って言っただろ」慌てて
「まあ少しくらい良いじゃないか。そうそう、凛花ちゃんに玲ちゃんだっけ? 君たち写真に興味ある?」首にぶら下げた例のカメラに手を添え、そう言ってくる。
途端、無口になる私たち。するとそんな空気を察したのか、またもや気遣いに目覚めた太刀川が大きな声を出す。
「やめろって! だいたい雪乃さんがいるのに、他の女の子に声掛けんなよ」
「声掛けるって、そう言う意味じゃないだろ。それにだいたい、なんでお前が怒るんだよ」
「別に怒ってねーけどさ・・・」
「さてはお前・・・」
そう飯島さんが言いかけたところに浅見さんがやって来た。
「なんだ飯島、こっちに来てたのか」
管理棟の方から何やらチラシを手に戻って来た彼は、訝しげな表情で飯島さんを見やる。
「ああ浅見。今、彼女たちにモデルになってもらえないか頼んでいるところだよ」
「モデル?」そう言って私たちをチラリと見ると、少し呆れた口調で続ける。
「お前なあ、雪乃さんのことも考えろよな」
「なんだよ、お前に関係ないだろ!」
「関係あるさ。昔からそうだ。綺麗な子を見ると片っ端からモデルに誘う。彼女の気持ちにもなれっての!」
「別にそんなつもりはねえよ!」
そう答える飯島さんをなおも不審な目で見つめる浅見さん。
しかし何かを思い立ったかのようにその表情を変えると「それより面白いモノを見付けたんだ。とにかくこっちに来いよ」そう言うと、自分たちのターフに飯島さんを連れて行こうとする。
「なんだよ」しぶしぶそれに従う飯島さん。すると戻り際、浅見さんが振り返る。
「悪かったね、酔っ払いのオッサンが絡んだりして! 気を悪くしないで、ジャンジャン楽しんでね!!」
そう言うと明るい笑顔でそのまま背を向ける。さすが営業マン! 少しお喋り好きな印象はあるが、とても感じの良い人だ。
「飯島さん、気を悪くしたかなあ」
「いや、大丈夫。叔父さんはいつもあんな調子だから」
「なら良いけど」
「それになんだかんだでアノ二人は仲が良いんだ。今はわかんねえけど、お互いに彼女がいた時は良く四人で旅行とか行ってたみたいだからな」
「そうなのね。でも卒業してからもずっと仲が良いなんて素敵ね」
「お、俺たちもさ・・・」太刀川がまた何か言いかけたところで、隣のタープからその二人の大きな声が聞こえて来る。
「おっ! すげーじゃん!」
「だろ!? ここはお前の腕の見せ所だろ!?」
「そうだな!!」わははは・・・!!
どうやら太刀川の言うとおり、彼等はさっきのコトなど忘れ楽しんでいるようだ。
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