5話 飯島さんの友人たち
勢いよく開いたドアから入って来たのは、二人の男性と、一人の女性だった。
「おおーっ、飯島! 久し振りだなー!」
「おお、
どうやら飯島さんの友人のようだ。駐車場に停めてあったのは彼等の車だったのだろう。
「ここでは狭いから」と管理棟から出た私たちは、すでに張られていたタープの日陰に移動すると、各々の自己紹介を始める。
それが終わるやいなや凛花がやって来ると、少し困ったように首を傾げる。
「おい、急に登場人物が増えてきたな。一気に言われても覚えられないぜ」
「そうね。でもおいおい覚えれば良いんじゃない」
「この辺で一旦、まとめようぜ!」
「何についてまとめるのよ?」
「そりゃ・・・オレかオレ以外」
「・・・・・。」
でも確かに凛花の言うとおり、一旦ここでメンバーを整理しておこう。
まず一人目、飯島さんに声を掛けてきた浅黒い肌に陽気そうな彼。
飯島さんの大学時代の友人で、今は事務機器会社の営業をしているらしい。営業マンは人当たりが良いと聞いたことがあるが、彼もどうやらお喋り上手な陽キャな感じがする。
浅黒く日焼けしてて陽キャそうだから浅見陽太、そう覚えておこう。
二人目の男性、
今は整体師をしているらしいこの人、会った時からイヤフォンを耳にしたままリズムを取っている。そこから時折漏れる激しい目の音楽。―――こんな場所に来てまで一人で音楽聞きますか!
まあいい。じゃあ彼のことは音楽が好きそうで整体師だから音田整司、そう覚えておこう。
で、最後の女性、
こちらは飯島さんたちの後輩で、雪乃さんとは同じ歳だ。
真っ赤なノースリーブの服の胸元からは、はみ出すくらいの大きな胸が覗いている。私の何倍くらいあるのかしら・・・? んんっ!
少し失礼だけれど、丘のように大きな胸、そして若々しさ溢れる格好で悩殺して来るから丘部若菜さん、そう覚えておこう。
それにしても『雪のように肌の白い白杉雪乃さん』を始め、どうしてこうもみんな名前と特徴が一致しているのだろう? なぜかしら・・・?
(これぞまさしくミステリー! )
ま、取りあえず今回のメンバーはこれで全員のようだ。
そこへ菅野さんがバンガローのカギを持ってやって来た。
「ええっと、部屋は五部屋でよかったよね?」
「はい、そうですね」飯島さんはそう言ってそのカギを受け取ると、手のひらの中で部屋の番号順にカギを並べている。
―――そう言えば部屋割りってどうなるんだろう?
するとまたもや同じ事を考えていたらしい凛花が聞いて来る。
「おい、部屋割りってどうなるんだ?」
「そりゃ・・・そりゃあ私と凛花が同じ部屋じゃない?」
「だ、だよな。でもまさか太刀川のヤツ、不埒なこと
「それはないでしょ、さすがにみんないるんだし・・・」
「ま、そうだな。もしそうだとしたら、ヤツの股間に一撃入れてやるだけだがな」
しかし、当然のごとく割り振られた部屋は、男女・年齢別に割り振られたものだった。
私は凛花と、太刀川は真冬君とだ。
―――そりゃ、そうよね。私は何故か肩の力が抜けるのを感じた。
結局、五棟借りたバンガローはこのような部屋割りになった。
C棟
D棟
E棟 太刀川、真冬君
F棟 凛花、私
G棟
なんでも飯島さんは自他共に認めるほどイビキがスゴイらしく、浅見さんたちやフィアンセである雪乃さんにまで同室を拒否され、唯一、一人部屋をあてがわれた。
ちなみにG棟まで七棟あるバンガローのうち、A棟、B棟は空室らしい。
菅野さん曰く、夏休みも旧盆を過ぎると毎年めっきりお客さんが減るらしく、今日も私たちの他にはテントサイドを利用する子供連れの家族が二組いるだけだ。
私たちはそれぞれのカギを受け取ると、荷物を置きに一旦各部屋へと別れた。
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