5話 翌朝

7月21日(火曜日)―――


 翌朝の教室は、優子の「サドル盗難事件」で大いに盛り上がっていた。


 芸能人やドラマの中での話でさえも盛り上がるのに、いくら小さな(?)出来事とは言え、それが自分たちのクラスで起こったともなれば大事件だ。特に男子にはこう言った話が大好物のようで、太刀川に至っては自分が探偵にでもなったかのように、男子全員に聞き取り調査を行なっている。


 彼に言わせると「女子のサドルを盗むなんて、女好きな変態男子の仕業に間違いない」と言う推理のようだ。昨日は凛花もふざけて似たような事を口走っていたが一応、解らなくもない。しかし彼は、その理論で言うと自分が容疑者候補の筆頭になると言うことを解っているのだろうか。


 だが、その話題で盛り上がったのは午前中だけ。昼休みとなるともうその話題をする生徒はほとんどいなかった。太刀川に至ってはスマホマンガを見ては、教室中に響き渡るような大声でゲラゲラと笑っている。


 人のウワサも七十五日、高校生のウワサは七十五分。そんなものだ。

 私も優子には悪いが、昨日のことはただのイタズラ、もしくは優子に気がある男子のちょっと歪んだ下心、そう高を括っていた。


 だが事件はそれだけでは終わらなかった。


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