第35話 災害
カリンのワンパンによって地面に叩きつけられ動かなくなった影狼。
あまりにもあんまりなその有様に一瞬時が止まったかのような沈黙が満ちる。
が、次の瞬間にはカリンと影狼の両チャンネルでコメントが爆発していた。
〝ファーーーーーーーーーーーー!?!?!?!?!?!wwwwwwww〝
〝ワ ン パ ン ア ン パ ン マ ン〝
〝影狼お前……あんだけ煽りまくって……〝
〝知ってた速報〝
〝草草の草ァ!〝
〝お吐瀉物様の自信満々演説を聞いてガチ心配してたわたくしがバカみたいですわ!?〝
〝いや、え、お嬢様の底力を信じてはいたけどさ……マジで?〝
〝【速報】カリンお嬢様、正真正銘完全なステゴロでフル装備の影狼虐殺〝
〝ゲロがまた死んだと聞いて〝
〝これもうゲロの芸風決まっただろwwww〝
〝ゲロがワンパンされるGIFと耐久MADが作られるに100万ジンバブエドル賭けるわ〝
〝唖然としたあと時間差でクッソワロタwwwwwww〝
〝これもう歴史に残る完全敗北やろwwwww〝
〝なんなら「影狼」「ゲロ」が「完全敗北」って意味でミーム化するレベル〝
〝今後10年は擦られるぞwwwwwwwwwww〝
〝俺今回はさすがに影狼を笑えねぇ……仮にも若手最強の探索者があんだけがっつり
〝いやこれカリンお嬢様別に魔法装備で底上げとかしてなかったみたいだし、そもそもメタなんて張れてなかったんじゃあ……〝
〝おい影狼お前……そのカリンお嬢様メタ(メタじゃない)装備にいくらかけたんだ……?〝
〝可能性のあるダンジョン素材をざっと計算しただけでも最低数千万は間違いなく飛んでる……〝
〝魔法装備を無効化するなんて対人アイテムは普通の店じゃ取り扱ってないはずだから特注仕様で普通に億単位突っ込んでるのは間違いない〝
〝うっっっっっわ……〝
〝草すら生えない〝
〝ま、まあ影狼クラスの探索者なら配信や探索でがっぽり溜め込んでるはずだから……〝
〝だからって億単位の金ドブに捨ててワンパン全国配信は……〝
〝まさか影狼を応援したくなる日が来るなんてな……〝
〝アンダードッグ効果〝
〝なんやそれ〝
〝同情で応援が増加する現象。通称負け犬効果〝
〝負け犬効果(火の玉ストレート)〝
「な、んで……なにが……魔法装備で底上げしてねぇなんて……んなバカなことが……」
「ああ良かった! ちゃんと意識がありますのね! 今回はちゃんと手加減できましたわ!」
爆速でコメントの流れるカリンの配信と考察めいたコメントの流れる影狼の配信がともに別種の盛り上がりを見せるなか。
ギリギリで意識を保っていた影狼にカリンが「良かったですわ~」と声をかける。
「あ、けどもちろん本気は本気で迎え撃ちましたわよ? ここで手を抜くのはお優雅ではありませんもの。ただ……本当に全力でやってしまうと素手でも間違いなく殺してしまうので、力加減についてだけはご了承くださいですわ。それで、ええと……これでお詫びになったんですわよね?」
「……っ!? ……う、そだろ……!?」
〝カリンお嬢様さすがにそれ以上はやめてあげて!〝
〝カリンお嬢様の死体蹴りがお吐瀉物様に刺さりまくりですわ!〝
〝自業自得とはいえわたくしも男ですの。死体蹴りシーンの切り抜きだけは勘弁してさしあげますわ……〝
〝↑男なのかお嬢様なのかはっきりしろ〝
〝お嬢様は女の子だけの専売特許じゃねぇぜ!?〝
〝漬物石くらいでかい一石を投じてきましたわね……〝
〝おいおいおいおい! 「ゲロリベンジ」と「ゲロワンパン」で速攻トレンド入りしたうえに同接も30万超えてるぞwwwww〝
〝トレンド2コマ堕ちすこ〝
〝同接新記録やんけ!〝
〝お吐瀉物様の醜態が爆速で広がっていきますわね……〝
〝おいこれカリン様たちの騒ぎ聞きつけてリアルの現場に野次馬集まってないか?〝
〝ちょうど渋谷にいたわたくしそろそろ現場に到着する模様〝
〝これ影狼が場所明かしたせいで渋谷ダンジョンの周りが凸祭りになりそうwwww〝
〝リアル晒し者か……なにからなにまで自業自得すぎる……〝
「……っ!? 嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ!」
「え、ちょっ、影狼様!?」
突如、影狼が正気を失ったように喚き始めた。
時間差で自分が完全敗北したことを自覚したようで、怪我を心配するように見下ろしてきたカリンに凄まじい形相を向ける。
「ありえねえ! 絶対になにか種があるはずだ! じゃなきゃそんな強さ、あり得るわけねえだろうが!」
「そんなこと申されましても……ほら、アイテムボックスもまだ機能停止してますし。これがわたくしの素の強さですのよ?」
「……っ! ふ、ざけんなぁ!」
きょとんとするカリンにいよいよ影狼の目から正気が失われる。
「ふざけんな……! 絶対後悔させてやる! 俺に二度もこんな屈辱……どいつもこいつもバケモノみたいな強さで俺をバカにしやがって! 勝てるなら配信でも炎上でもなんでもいい……絶対に秘密を暴いて、今度こそぶっ殺してや――」
気絶寸前の怪我で今度こそ本当に錯乱しているのか。
カリンから這って距離を取った影狼が支離滅裂な言葉とともに洒落にならない発言をしかけた――そのときだった。
ドクンッ……!
「っ!? え……」
まるで影狼の怒りと共鳴したかのように。
あるいはただひたすらダンジョンの悪意の赴くままに大地が脈動した。
そして――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!
地面が大きく揺れた。
「――っ!?」
〝は?〝
〝おいなんだこれ!?〝
〝地震!?〝
〝いやこれまさか――〝
〝おい嘘だろ!?〝
「全員いますぐこの場から離れてくださいまし!!!」
気配感知によってかなりの野次馬が集まってきていることを察していたカリンがあらん限りの声を張り上げた。それはお優雅さよりもとにかく遠くまで声が届くよう意識した大音声。
だがその警告が野次馬たちの行動を変える前に――ビキビキビキビキッ
ドゴオオオオオオオン!
ダンジョン周囲に広がる半径300mはあろうかという建設禁止エリア。
ダンジョンを擁するその地面が大きく割れて――そこから大量の魔力が吹き出した。
「「「グルオオオオオオオオオオオオオッ!」」」
そして噴出した魔力を追うようにして現れるのは、本来地上に湧き出ることはない大量の異形。すなわちモンスター。
ダンジョン崩壊。
無限に生まれる未知の資材――その恩恵とバランスを取るかのように現実世界へもたらされた厄災が、渋谷のど真ん中で産声をあげた。
―――――――――――――――――――――――――――
34話のコメント数が異次元すぎて笑いながら驚いていました
全部読んでます、皆様ありがとうございます!
※お吐瀉物様の痴態をもっとたくさんの人に見てもらうためにも、面白いと思っていただけたら↓の星や右メニューからのフォローでの応援よろしくお願いいたします! ランキング上がると読んでくれる人がどっと増えるので…!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます