悪風顕現
最初に、私達それぞれに一人ずつ影喰らいが突っかかってきた。
私は「祭事斬り」を決め、一撃で相手を真っ二つにした。
カイナさんとニルパさんもまた、技を出して相手を沈めていた。
そんな中、龍神さんは技も使わずに相手を斬り捨てていた。
すぐに次の敵が押し寄せてきた。
先頭のものが槍を構えて回転しながら突っ込んできたので「針氷樹林」で返り討ちにし、次に来た斧持ちを「水平閃光」で近づかせずに倒す。
そして素早く弓を抜き、「コスモウェーブ」で目の前の敵全てを倒す。
横に目を移すと、ニルパさんが剣持ちの相手に手を焼いているように思えた。
なので、魔弾を飛ばして相手を吹き飛ばす。
ニルパさんはお礼を言ってくれたけど、私はその顔を見ずにその横の敵に魔弾を放った。
こう言ってはなんだけど、わずかな事に反応して会釈してる暇はないのだ。
固まった敵を「ブリザードレイ」で片付けようとしたら、カイナさんが岩を落として倒してくれた。
それで気づいたのだけど、カイナさんはかなり善戦している。
ハンマーを派手に振り回し、時折術を使っては敵を潰したり壁に叩きつける。
それは、おおよそ皇魔女のものとは思えない戦い方だった。
「[ダークネルス]!」
一度に複数の弾を撃ち出すニルパさんの術で、一気に7人の影喰らいを倒した。
さらに龍神さんも技を繰り出し、8体の影喰らいを一撃で仕留めた。
そうして、あっという間に影喰らいの群れは片付いた。
その速度に、リッチは驚いていた。
「あら、驚いてるの?」
「むむ…よもやここまで出来るとは。しかし、私は簡単に倒れませんぞ!」
リッチは飛び上がり、杖を目の前で浮かべる。
「我が主の力、お見せしましょう。風法 [
リッチの背後に青くて丸いものが現れ、そこから猛烈な風が吹き出す。
「ううっ…!」
カイナさんが偶像を取り出し、何かを唱える。
すると、暴風に吹かれても平気になった。
異能を使い、私達が飛ばされないようにしてくれたらしい。
リッチはそれに気づいたようで、「なっ…!」と驚いていた。
「ならば、次はこうです!風法 [カーレイストム]」
杖を振りかざし、丸い風の球を生成した。
それは徐々に大きくなり、やがて破裂すると同時に強烈な風圧を放った。
けれど、やっぱり私達は平気だった。
「あら、こんなものかしら?」
「…ば、バカな!これは流未歌様の力…そんな用意に防がれるはずが…!」
「私は魔女ですよ?再生者には敵わないまでも、その部下などには遅れを取りません」
「っ…おのれ!」
その時、天井に異変が起こった。
奇妙な風が吹き、謎の黒い空間が現れた。
そして、その中から何かが現れた。
それは、一人の若い女だった。
髪は白、目は緑色で、赤い和服を着ている。
一瞬異人のように見えたけど、すぐにその正体に感づいた。
「…!流未歌様…!」
リッチは、彼女の姿を見てひさまずいた。
「この女が、再生者流未歌…!?」
ニルパさんが声を上げたけど、それ以外は誰も喋らなかった。
「おぉ、我が主よ!今一度、この哀れな異人どもに制裁をお与え下さ…」
言い終わる前に、リッチは吹き飛ばされた。
「…ジストよ。数十もの生者を変えておきながら、たかだか4人の生者に手を焼く弱者など不要だ」
そして、流未歌はこちらを見てきた。
自然と、龍神さんとカイナさんが私の前に出た。
「ほう、ミジーの皇魔女と…お前か」
「久しぶりだなあ流未歌。少しは踊りも上手くなったか?」
「ふん…お前に見せるようなものはないわ。ものの真の価値を見抜けぬ者に見せるものなど、持っていない」
「価値って言葉の意味を知らんのか?昔と一緒だな。そもそもの根本的思想が間違ってるのに、価値もクソもあるか」
「…貴様にはそうとしか感じ取れぬのだな。だが、それはお前が未熟で愚か者であるからに過ぎない。
して、皇魔女よ。お前は私を知っているか?」
「もちろん…忌まわしき再生者、皇京流未歌。その名は、この地の誰もが知っている!」
「そうか…まあそうだろうな。言っておこう、お前達蝿がどんなに喚こうと、運命は変えられぬ」
蝿、という言い方にカイナさん達が驚いていたけど、私はそうでもなかった。
流未歌は根本的に生者を見下している。
かつてシエラに倒された時も、彼女らを始めとした生者を蝿と呼んで卑下していた。
「私達が蝿であるならば、お前は何だと言うのです!」
「私は風だ。ただ、一介の風。ただし…意思がある風だがな」
そして、流未歌は私の方へ漂ってきた。
「アレイ…だったな。星羅こころの妹と聞いたが…なるほど、確かに似ている。あいつにも、あの陰陽師にも」
「彼女を覚えているの?」
「当然だ。あの女共は、私が見てきた中で最も哀れな者たちの一人だった。よもや私達に楯突いた挙げ句、あのお方にまでも楯突くとはな…」
私は、一つだけ聞いた。
「死の始祖は…まだ生きているの?」
「あのお方は兼ねてより生きてなどいない。あのお方は『死』そのもの…私達が封じられている間も、彼の地で存在し続けていた。そして今は、再び私達の指導者となられた…」
「死の始祖…?奴が、またお前達を指揮していると!?」
カイナさんが声を上げる。
「これ以上言う必要はない。星羅の妹よ。詳しい事を知りたくば、あるいは自身の因縁に蹴りをつけたくば、我が住処まで来るがいい…生きては帰れぬ事を承知の上でな」
そうして流未歌は消え、黒い空間も消えた。
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