数分間の防衛
「[マッドスピア]」
「[残影斬り]」
アメルと龍神さんは次々に強力な技を繰り出し、ウィスプを倒していく。
対して私は、「拡散氷矢」のようなあまり強くない技しか使えない。
私は能力を使うために集中しなければならないのだけど、それを維持しつつ戦うのはなかなか大変だ。
だから、本当は一思いに異能を使って過去を見切り、それから彼らのサポートをしたいのだけど…そうも言ってられない。
龍神さんがいるのにそう思った理由は、自分でもよくわからない。
強いて言うなら…私の中の何かがそう思わせた、といったところだろうか。
ウィスプは動きが割と素早く、背後を取られたりすると知らないうちにぐっと近づいてくる。
私も何度か背後を取られ、危なくなった。
でも、その度に龍神さんが助けてくれた。
なにも今回だけではない。
彼は、強さはもちろんだけど、私達のこともしっかりと見てくれている。
まさしく、最強の吸血鬼狩りと呼ばれるに相応しいだろう。
―本当に、彼のような人がいてくれてよかった。
「アメル!」
「なに…!?」
「火使えるんだろ?焼き払ってくれ!」
「!?…わかった!」
アメルは背中を私にくっつけてきた。
龍神さんもまた、私に背を向けた。
「炎法 [ファイアカーペット]」
アメルが槍を振るうと、その動きに合わせて炎が広がる。
その炎があたりのウィスプを焼き払い、一気に10体近くのウィスプが消え去った。
そして、残ったものは龍神さんが術で消し飛ばした。
これでいいかな、と思ったのも束の間、すぐにまた新たなウィスプがやってきた。
それも、今倒したのより大きな群れで。
「…なっ!」
「[バーニングストライク]!」
アメルは驚きもせず攻撃を放った。
「ありゃ、驚かないのか?」
「そんな暇あったら迎撃よ。驚くのは、安全を確保してからでもいくらでもできる」
「ほう…感心だな」
そう言いながら、龍神さんは電撃を放った。
二人が一気に大量のウィスプを倒しているのに、私は…。
いや、考えるな。今の私の一番の役目は彼らのサポートではない。
集中して、早く過去を…
と、顔を下げた直後、ウィスプが前から襲いかかってきた。
「!」
咄嗟に魔弾を放って撃退したけど、消せてはない。
でも、すぐにアメルが火球を飛ばして追撃してくれたから問題なかった。
その後私は、弓を射って二人の手助けに回った。
正直、霊体のウィスプには効果は薄いだろうなとは思ったけど、仕方ない。
それより、私にはしなければならない事がある。
でも、これを完遂するにしても、なかなか上手くいかなかった。
龍神さんとアメルは、私の背を守るようにくっつきつつ、全方位から来るウィスプを迎え撃っている。
私達は3人、対して敵は数十体。
しかも、彼らと背中を合わせている私は弱い物理攻撃しか出来ないため、どうしても倒し損ねて近づかれる事がある。
すると、二人のどちらかが振り向いて倒してくれる。
もちろんありがたいのだけど、その隙に私を助けてくれた方が背後から攻撃を受ける事もある。
ウィスプは「霊弾」と呼ばれる弾を吐き出す遠距離攻撃が出来るので、これを受けてしまうのだ。
一撃の威力はそこまででもないのが幸いだけど、それでもあまり長く続けばまずい。
あと少しだ。
あと少しで、過去を遡り終わる。
どうか、それまで持ってほしい。
それから程なくして、私は過去を見終わった。
そして、それを二人に報告する前に術を使う。
「[霜降のスノーラル]」
口で言わなくとも、術を使えば察してくれるだろう。
「アレイ…!」
アメルは驚きつつも喜びをたたえた表情で、一気に6体のウィスプを粉砕した。
龍神さんも、刀を振るって7体のウィスプを打ち砕いた。
そして、それを最後にウィスプは全滅した。
もう、新たに寄ってくるものも見えない。
「終わった…のね?」
「ああ。アレイ、終わったんだよな?今のうちに、結果を教えてくれ」
「はい。」
私は空中に映像を映し出す。
それは、実に一ヶ月前まで遡る。
□
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