槍と短剣

カナは龍神さんの攻撃を受け止め、嫌味たらしく言った。

「余計なお世話かけないでくれる?」


「かけさせてるのはお前だろうが」


「はあ…」

ため息をつき、カナは龍神さんとしばし技を使わずに乱闘を繰り広げた。

カナは直刃の短剣を振るい、龍神さんは鎌のように湾曲した短剣…カランビットを振るう。

カランビットは珍しい武器だけど、カナは別に驚いたりはしていなかった。


「カランビットなんて、珍しい…」

アメルがつぶやいた。


でも、どうして龍神さんはあれを使ってるのだろう。

カランビットは普通の短剣とは異なる扱いが求められる上に、その扱いも難しい。

もともとは人間が農作業に使っていたものらしく、異人では防人、戦士にとっては馴染みのある武器だけど、殺人者であり、しかも刀と弓を主に使っている龍神さんがわざわざ使う理由はよくわからない。

短剣なら、他にも色々あるだろうに。


しばらく乱闘を続けた挙げ句、龍神さんはカナのお腹を切り裂き、カナは龍神さんの右手を切って乱闘が終わった。

カナは血が流れ落ちるお腹を押さえ、龍神さんは右手の肘を押さえる。


「龍神さん!」


「大丈夫!?…まさか!」


「そのまさかだ…」

彼が右手をだらんと下げて押さえるのを見るに、筋を切られたようだ。


「下がって!私達がやる!」


「だが…!」


「そんな状態で戦うのは無謀よ!今は、回復に専念して!」


アメルの意思が伝わったのか、彼は苦しそうな顔をしながら後ろに下がった。




「出てきたわね」


「狙いは私達なんでしょ?私達が相手する!」

アメルは、槍を抜いた。

「勇気あるのね。でも、大事なのは実力よ」


「それは見て確かめるのね。槍技 [ランスロード]」

アメルは槍を地面に突き立て、魔力を解き放つ。

あれは確か、開放の技。

体と武器の魔力を解き放って、最大のパフォーマンスを発揮できるようにする技だ。


「開放…ねえ。なら私も」

カナは両手を交差させ、魔力を開放する。

同時に、武器結界も展開してきた。

「…!」


武器結界は、特定の種類以外の武器の使用を封じる結界。

許可されていなければ術も例外ではなく、封じられた武器を無理に使おうとすると、使用者が傷を負う。


「たった今から、使えるのは短剣と槍だけよ。

まあ、あなたには大した影響はないわよね?」


「ええ…」

アメルは槍を構え、技を放つ。


「槍技 [セクトスパイク]」

まずは乱れ突きを放った。

カナはそれらを全てかわしつつ、短剣を振るってくる。

「刃技 [二連神刃]」


アメルは斬撃を槍で弾き飛ばしつつ、次の技を放つ。

「[スパイルポール]」

突っ込みつつ、槍を止められるとすぐに槍を離し、次の技につなげる。

「[車輪回し]」

槍を回してカナの両手を斬りつけ、そのまま薙ぎ払う。

カナが吹っ飛んだ所に、私も技を放つ。

「[氷刃五撃]!」

氷の力をまとった、五連続の攻撃。


「へえ…やるじゃない。なら、私も見せてあげる!」

カナは短剣を前に構え、魔力を迸らせる。

短剣が黒く光り、そして…


「奥義 [黒い刃の聖地]」

ビームのように魔力を飛ばしてきた。

私はそれを躱し、アメルは槍で受け止める。

しかし、アメルは槍では攻撃を受けきれず、食らってしまった。


「アメル!」


「呆気ないわね」


「っ…!」

アメルはすぐに立ち上がり、奥義を使った。

「奥義 [水炎の槍乱撃]!」

水と火の力をまとった攻撃を、連続で放つ。

でも、さして効いてないようだった。


「こんなもん?」

カナはあざ笑いながら、アメルの胴体を斜めに切り裂く。


「まずはあなたからいただきましょうか…うふふ…」

短剣をぺろりと舐め、カナは両手を振り上げる。


「そうはさせない![皇の刃]!」

私は斬撃を飛ばし、カナの両手を手首から切り落とした。


「…」

カナは血を流しながら、私の方を見てきた。


「やったわね…?」

カナの目が赤く光る。

その様子に、私は背筋がぞくっとした。

「そんなに死にたいなら、まずはあなたから捌いてあげる…!」

カナは短剣を宙に浮かべた。

手がなくても、短剣を操れるのか。


「本気でやってやるわ…奥義 [終わらずの12の刻]!」

短剣を12本に分裂させ、乱れ斬りを放ってきた。

スノーラルを使おうかとも思ったけど、武器結界の事があるから使えない…

なんて思ってたら、あっという間に全身を切り刻まれてしまった。


しかも、やたらと時間が長い。

一分以上に渡って、全身を無数の短剣に切り刻まれる。

「アレイ…!」

アメルが横から攻めたけど、あっけなくカウンターを食らった。


(まずい…このままじゃ…!)

全身を切り刻まれる痛みを味わいながら、必死で打開策を考える。

そして…



一か八か、結界を張った。

すると、短剣を防ぐことができた。

「[スナイパーエッジ]!」

斬撃を飛ばす。

カナは避けてきたけど、構わない。

壊れた機械のように、ただひたすら同じ技を飛ばし続ける。


そうしている間に、アメルが背後からカナを刺し貫いた。

「…」

カナは、素早く手を後ろに回してアメルを切りつける。

アメルはそれを食らう前に離れつつ、技を飛ばす。


「[ネザースプラッシュ]」

槍の先端を瞬間的に液状化し、飛ばす技。

カナは、それを全身に食らった。


「っ…!」


その隙に、私はカナに飛びかかる。

この時、私はぱっと新たな奥義を閃いた。

「奥義 [凍結刃乱舞ブリザーダンシング]」

瞬速の速さで短剣を振るい、7回の斬撃を見舞う。

さらに、斬った所に氷をつかせ、そのまま傷口を凍らせる。

そしてそれは間もなく砕け散り、血と共に傷口を広げる。


「きゃあっ…!」

カナは悲鳴をあげ、体勢を崩す。

そこをついて、私とアメルは技を放つ。

私が三角形にカナを斬り、アメルが飛び込んで刺し貫き、二人で畳み掛ける。 


「「合技 [セイマーナブラ]」」


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