助っ人

カナは倒れ、動かなくなった。

その体は、その身から流れ出す血に沈んだ。


「…OKね」


「アメル…!」

私は、アメルと合技を出せた事、それで相手を…それも、上位種族の異人を倒せた事が嬉しかった。


「ずいぶん嬉しそうね、アレイ」


「だって…あなたと合技を出せて、しかもそれで上位種族の相手を倒せるなんて思わなかったもの…!」


私は元々、レークの水兵の中では弱い部類だった。故に、町でも有数の戦闘経験者であるアメルやセレンなんかと一緒に戦ったり、ましてや合技を出したりするなんてことはまずないと思っていた。

合技は、相応の経験がある者が集まらないと出せないし、私と同じ位の実力の水兵はそう多くなかった。


「…はあ。あなた、もう少し自分に自信を持ったら?」


「え?」


「あなたは、もう町にいた頃とは違うのよ。世界を救える…かはわからないけど、少なくとも再生者を倒す事くらいは出来るだけの実力がある。

それに…正直私は、あなたがこうなる事はわかってたしね」


「どういうこと?」


「前、あなたが見つけてきたマチェットを磨いたでしょ?実はあの後、あれなんか見覚えあるな、って思って調べてみたの。そしたら、それは始祖の七つ道具の一つ、『星巡りの刀』だってわかったのよ」


「星巡りの刀…」

そう言えば、尚佗もそんなことを言っていた。

でも、これが始祖の七つ道具の一つだったなんて…

いや、でもよく考えれば自然な事か。

尚佗はこれを見て、それはかつてシエラが使っていた武器だと言っていた。

なら、始祖の七つ道具になっていてもおかしくはない。


「それはね、本当にすごい武器なのよ。生の始祖が、自身の魔力を金属に込めながら、1年かけて鍛えた武器で、形はマチェットみたいだけど、刀の一種なの。

それ一つで、剣、刀、短剣の3種類の武器の技を使える。持ち主の魔力と技量、発想力を増幅させて、新しい奥義を閃きやすくさせる力もあるし、「星」の術の効果を高める力もある。

いくつかの伝承や記録には、生の始祖はそれを使って星巡りの技を繰り出していた、っていう主旨の記載があって、もしかしたら星巡りの技とも何か関係があるんじゃないか…なんて言われてたりもする」


なるほど。どおりで、これを手にしてから新しい奥義をやたら閃いたり、魔力が強くなったりしたわけだ。

でも、そうなると一つ疑問が湧く。


「でも、そんなすごいものがなんであんなボロボロに?しかも、ゾンビが持ってるなんて…」


「それはわからない。けど、星巡りの刀は、もう長い間行方不明になっていたから…」

そこまで言って、アメルははっとした。

「もしかして…いや、そんなまさかね…」


その時、何かが私の足を掴んだ。

驚く間もなく、ふくらはぎのあたりに激痛が走った。

まるで、噛みちぎられるかのような。

 

「!!」

ふくらはぎの一部が食いちぎられ、血まみれになっていた。

そして、カナがそれを貪るように食べていた。


「カナ…!」

カナは食いちぎった私の肉をもちゃもちゃと咀嚼しながら、にんまりと笑った。


「んふ…美味しい…」


よく見ると、さっき切断したはずの手が元通りになっていた。


「相変わらずゾンビみたいな奴だな…!ったく、しぶとい奴だ!」

龍神さんが悪態をつく。


「あぁ…美味しかったぁ…」

カナは口の周りの血を手で拭き取り、それを舐めた。

「なんか、ちょっと人間みたいな味がしたわ…あなた、やっぱり人間上がりね?」

私はそれには答えず、足に回復魔法をかける。

そうしないと、痛みで立ってられないからだ。


「あなたの肉もそうだし、血も美味しい…これなら、内臓とかはどうなのか気になるわねぇ…」

さっきまで与えたダメージがなかったかのように立ち上がり、妖艶な表情で私を喰らう事を楽しんでいるように見えるカナの様子には、純粋な恐怖を感じた。


「くそっ!」

龍神さんが電撃を飛ばしたけど、カナはそれを避けつつ短剣を投げ、彼の左の脇腹に刺した。

「邪魔はさせないわよ。今から、この子達をじっくり堪能するんだから…」


アメルも、槍を持ったまま震えていた。


「ちょっと手こずっちゃったけど、まあいいわ。

うふふ…いただきまあす…!」

カナが舌舐めずりをし、私達に飛びかかろうとしたその時…




突如私達の後ろから、空気の塊が飛んできて、カナを撃ち落とした。



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