最初の武器庫を飛び出し、6階にあるという王の部屋を目指して階段をかけ上がる。

そして6階につくと、廊下を走って先にあった大扉をぶちやぶるようにして開く。

豪華絢爛な家具と装飾に飾られた部屋には誰もおらず、空っぽだった…

「王の部屋なんて来ても、何もないと思うけど?」


「いやいや、そんなことはない。

寧ろここにしかない物があるはずだ」

部屋の左右に2つあるうち、左側。

火のついていない暖炉を覗き込み、カモフラージュの灰を避けると…

やはりあった。

「こんな所に、隠し通路が…」


「やっぱりあったか…ついてこい」

四つん這いになり、這うようにして進んでいく。




通路の中は暗かったので、術で明かりをつけた。

「ずいぶん狭っ苦しいわね…」


「アメル、ちゃんとついてこれる?」


「大丈夫よ…あなたこそ、早く進んでよね」

後ろが騒がしい。

「あの…龍神さん。なんで、ここに隠し通路があるってわかったんですか?」


「ジークの城の王室には、暖炉とかダクトに見せかけた抜け穴がよくある。

ここもその一つだろうと思ってな」


「そうなんですか…」

アレイとそんな話をしながら進んでいく。

やがて、にわかに光が差し込む所が見えてきた。

「やっと出れそうだぞ」


四角い木の蓋を押し開け、出た先は城の中庭だった。

それにしても、蓋に雪が積もっていなくてよかった。

逆に、中庭には雪が積もっていてくれてよかった。

その理由は簡単。奴らの足跡が残っていたからだ。

「この先にいるはずだ」


「ユキさんが?」


「…と、王様がな」 


「え、それじゃ王がユキさんを連れていったって事?」


「ああ。奴にとって、ユキは特別な水兵だからな」


「どうして?」

いや、逆にわからないのか?と思った。

ユキの事は、レークの外部にも広く知られている。

それこそ、別の大陸からはるばる来た俺でさえ知ってるほどには。

まあ、俺は少々無駄…というか、知ったところであまり意味がないような事ばかり知りたがる癖があるのだが。


「君らならわかるだろ。まず急ぐぞ!」

足跡を追って走っていくと、突然地面が崩れた。

(しまった!落とし穴か…)


視界が雪に埋まる。

雪に埋もれた時は、窒息しないよう口を塞ぐものだが、そんな事をする間もなく、みるみるうちに意識が消えていった…









「龍神さん!」

どうやら落とし穴が仕掛けてあったらしい。

縁に駆け寄って中を覗き込んだけど、彼は完全に雪に埋まってしまっていた。

「ああ…どうしよう…」

セレン達に声をかけようと振り向こうとしたその時、

「…?」

いきなり殴られて意識を失った。




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