訴え
私が目を覚ましたのは、配属されている部屋だった。
なんで私はここに?と思ったら、兵士の姿が目に入ってきた。
兵士は私の着替えを指差し、着替えてホールに行けと言ってきた。
今気づいたけど、武器を奪われている。
術を使おうかとも思ったけど、まずは状況を知りたい。
取り敢えず大人しく従う事にした。
ホールにいくと、みんな綺麗な服に着替えさせられて整列させられていた。
そしてステージには、中央に王。
王の後ろの壁際には剣を持ったノグレ(ジーク全域を統治する中央王国)の役人が並び、王の左側には両手を縛られ口を塞がれた龍神さんと朔矢さんが立たされていた。
(龍神さん、朔矢さん…!)
私の顔を見て、1人の役人が口を開いた。
「最後の水兵が来てくれたようだ。
では、始めよう」
(始めるって、何を…?)
「まず水兵諸君、この殺人鬼たちはそれぞれ、冥月龍神と甘爛朔矢という。
知っている者もいるかも知れないが、龍神は200万テルン、朔矢は80万テルンの賞金首だ。
こいつらは、このリアースの王が諸君らを虐げ、苦しめていたと言っているのだが、それは事実なのか?」
事実だ、間違いなく。
そう声をあげたかったのだけど、ステージ上に立つ王の無言の圧力を受けると黙ってしまう。
それは、きっとみんなもそうだろう。
「では王にお聞きしよう。
ヴラド王、あなたが彼女らを虐げていたというのは誠か?」
「そのような事実はない。
私は水兵達に最低限の兵役の義務を与える代わりに生活を保証し、貴重かつ重要な種族である彼女らをこの城で守ろうとしていただけだ。
こいつらは、彼女たちを上手いこと騙して連れ去ろうとした。そのくせ善人ぶり、自分達の悪行を取り繕う為に嘘を言っている。所詮は殺人鬼、下劣極まる種族よ」
「そうか…
では念のため、諸君らにもう一度尋ねるが…
この王が言っている事は事実か?
本当に、諸君らはここで満足な生活を送っていたのか?
殺人鬼たちの言っている事は嘘なのか?」
やはり、皆は黙っていた。
いや、言いたくても言えないのだろう。
「…!」
私は思わず走ってステージ上に上がり、みんなの方を見て言った。
「この人たちは、本気で私達を助けようと行動してくれました。私が命懸けで城に戻り、行動したのも、彼らがいてくれたからこそです。
皆さん、これが最後のチャンスです。
怯えてはいけません。
この城で、この王に、虐げられたと思う人、辛い思いをした人は、手を上げて下さい」
すると、1人2人と手を上げ始め、最終的には全員が手を上げた。
「…っ!」
それを見て、王はにわかにうなり声を上げた。
「…どうやら、今回ばかりは殺人鬼達が正しいようだな。
ヴラド王、こちらへ来て頂きたい。
詳細は出城で伺おう」
でも王はもう、そんな話なんて聞いてなかった。
「…おのれ!」
王は激昂し、槍を取り出した。
それを見て、みんなが悲鳴を上げた。
「余計な事を言いおって!
貴様も殺人鬼も、まとめてわしがじきじきに始末してくれる!」
王は真っ直ぐ私を狙ってきた。
突きだされた槍を、しゃがんで交わす。
その上で素早く後ろに回り込み、
「氷法 [氷閉じ]!」
王の腰から下を氷に閉じ込め、動けなくした。
「…!おのれ、貴様…!」
闇雲に槍を振り回す王の手を押さえ、役人に言った。
「早く…拘束してください!」
すぐに役人たちが王を取り囲み、押さえつけた。
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