夜明け

部屋で城の構造を四人から聞いた。

そしてこんな話も聞けた。

この城では定期的に他の城から貴族やら何やらを呼んで舞踏会や演劇鑑賞会をするのだが、その際水兵たちは貴族たちが到着する前に強制的に部屋に戻らされ、いつもよりはるかに早く就寝させられる。

就寝時間後は部屋から出る事は禁止されているため、客に姿を見られる事はないという。

ただし舞踏会がある日は城の貴族たちも早く寝るらしい。

そして、今日は丁度その舞踏会がある日だ。

「今8時で4時起きだから、今から寝れば8時間は寝れるな。しっかり寝て、体力をつけておけよ」


「あなたは寝ないの?」


「ああ。俺は睡眠は短くても問題ないし…

それに、一応城の構造を実際に見ておきたいからな」


「いいけど、見つからないようにね…

あなたが、今の私たちの唯一の希望だから…」


「ああ。君ら全員、必ず助けるからな」

そして俺は部屋を抜け出し、城内を探索した。

既に貴族たちが寝ているというのは本当らしく、まだ8時すぎなのに真っ暗かつ静かだ。

「雷法 [小雷球]」

術で灯りを灯し、あたりを照らしながら進む。



一通り巡ってみたが、ほとんどセレンたちから聞いた通りだった。

これならわざわざ出てくる必要はなかったかもしれんな…

そんな事を思いながら部屋に戻った。


セレン達は部屋でごろ寝をしていた。

なんでも寝具が一切与えられないため、こうせざるを得ないらしい。

防寒具も一切与えられない。しかも今は冬場だから、凍死する者も出るとの事だ。

こんな所、やはり放ってはおけない。

まあ、明日の今頃にはこんな城壊滅させてやるがな。





まだ日も昇りきらぬうちにけたたましく鐘が鳴った。これが夜明けを知らせる鐘らしい。

水兵達はというと、寝起き早々どこかへ行こうとしていた。

「仕事か?」


「いえ、今日は集会があるのよ」


「集会?」


「月に一回、朝一番にホールで行われるのよ。

遅れると酷い目にあうから、急がないと!」

聞いてた通りだ…

いよいよだな。

「俺も行くよ」

水兵の衣装を身につけ、セレン達についていった。




ホールには数百人の水兵が並んでいた。

丁度、学校の全校朝会みたいにな。

ただ、その誰もがひどく痩せこけていた。

セレンたちは列の前の方に並んだが、俺は一番後ろに並んだ。

服は朔矢が作り出してくれたものだから、着れば肌や髪の色、体格など、外見上の全てが水兵のそれになる。

だから顔をよく見られない限り、変に思われたりはしないだろうとは思ったが、別の目的があったので最後尾の方が都合がよかった。

左右に下と繋がった階段がある上のスペースに王らしき男が出てきて、何か喋りだした。

だがそんなのを聞く気はなかった。

後ろを向き、一目散に出口目掛けて走り出した。

何だか怒号が聞こえてきたが、おかまいなく走った。

そうだ、別の目的ってのは、脱走しようとした奴がどうなるのか知りたかった、って訳だ。

すると脱走者を知らせると思われる鐘が鳴り響き、もう少しで出口という所で男の兵士に囲まれた。





朝会をやってる中、王の前に引きずり出された。

王は俺を見て、

「…見覚えのない顔だな。新入りか?

まあいい。脱走しようなど生意気な事を。

二度とそんな事が出来ぬようにしてくれる」

と槍を抜き、突き刺してきた。



「…?」

片手で槍を受け止め、瞬時に奪い取って放り投げ、天井に突き刺した。

王は不思議そうな表情をした。

すかさず水兵の衣装を脱いで叫んだ。

「俺は殺人鬼だ!

この一晩で、貴様の犯した蛮行は全て理解したぞ!」

そしてすぐに朔矢につながる無線をつけて言った。

「戦闘開始だ!今すぐ来い!」


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