暗躍
待機している間に色々聞いた。
それぞれの名前。元の職業。使う武器。能力。
話を聞いていて驚いたのは、全員がアレイの友人…というか、知り合いだったことだ。
そして10分後。
「武器庫へ行こう」
4人を連れ、部屋を出ようとした。
「待って!」
緑の目の娘、ミリーに呼び止められた。
「何?」
「その前にはっきりさせておきたいんだけど…
あなた、水兵じゃないでしょ?何者?」
「…なんでそんなこと思う?」
「なんだろう…あなた、なんか雰囲気が違う。目付きもどこか暗いし。見た目こそ水兵そっくりだけど、でも…」
「ほう…」
「教えて。あなたの正体はなんなの?」
この子は14才で、元は酒場で働いていたという。
探し物の場所がわかる能力を持ち、短剣で戦うこともできるらしい。
ここまで完璧に変装しても正体を見破れるとは…
この子はなかなかに利口そうだ。
「私…いや、俺はな…」
ここで口調を戻した。
「冥月龍神、殺人鬼だよ」
「!?」
水兵たちは驚いた様子だった。
「冥月龍神…聞いたことある。指名手配されてる殺人鬼…
そんな人がなんでここに…?」
「まあ話せばちょい長いが…
外で偶然、脱走したばかりの君らの同族に会ってな。
話を聞いて、君らを助けるためにここに侵入した」
「私たちを…?」
「本当に…私たちを助けてくれるの?」
「勿論だ。そのためにわざわざ知り合いの力を借りて、変装してここに来たんだ」
「ちょっと待って」
そう言ったのはセレン。ここの4人のリーダー格らしい。
元々はライフセーバーで、風の能力と薙刀を扱うとのこと。
「どうした?」
「殺人鬼が、何の理由もなく人助けをするとは思えない。
何か企んでるんじゃないの?」
「ご心配なく、特に何も企んじゃねえよ。
純粋に君らを助けたいだけだ」
「その言葉、どこまで信用できるのかしらね」
まあそうなるわな。
こういう時は、普段なら信じてくれとは言わない。
けど、今は信じてもらわないと困る状況なんだよな。
「セレン、彼は私たちを助けてくれるって言ってるのよ。信じてあげてもいいんじゃない?」
「そうよ。殺人鬼だからって、みんながみんな悪人とは限らないでしょ。優しい殺人鬼が絶対にいないとは言えないはずだし、何より私たちには他に頼れる人がいない。
今は、彼についていきましょうよ」
イアとキュリンが言った。
イアは造船所で働いてた水兵で、武器は棍、能力は水。
キュリンは元々発電所で働いており、武器は扇を使い、重力を操る能力を持っていたらしい。
それを聞いたセレンはため息をつき、
「わかった。今はあなたを信じましょう」
と言ってくれた。
「そうこなくっちゃあな。
時間があまりない、武器庫に急ぐぞ」
武器庫の入り口には確かに兵士がいた。
しかし一人だけ、武装も槍と盾だけだ。
「待ってろ。見つかるなよ」
水兵たちを曲がり角の影に隠れさせ、単独で近づく。
案の定、槍を向けてきた。
「お前たち水兵は、ここに入る用はないはずだ!
早々に去れ!」
「水兵は用はないかもしれん。だがな…」
刀に手を掛け、
「俺はあるんだよ」
即座に切り捨てた。
そして後ろをむき、
「見張りはやった。入れ」
水兵たちを呼んだ。
武器庫には剣や薙刀、弓が置かれていた。
「薙刀がある…」
セレンは一本の薙刀を取り、軽く振って手応えを確かめていた。
他の水兵はというと、
「棍はないのね…取り敢えず、剣でいきましょう」
イアは長身の剣を持ち、
「短剣のほうがよかったけど…ないよりはましかな」
「重い武器は不得意だけど、今は仕方ないわ」
ミリーは弓を、キュリンは兵士が持っていた槍を、それぞれ持っていた。
「全員武器は持ったな…よし、部屋に戻ろう」
「え?」
「この城の構造や動きを知りたい。
それにいい時間だ。そろそろ舞踏会が終わるころだろう。今動くと見つかる可能性が高い。
だから、一旦戻った方がいい」
「わかった。一度戻りましょう」
セレンは納得してくれたようだ。
◇
▢
ミリー·スタッド
レークに暮らす水兵の一人。「探知」の異能を持ち、アレイとは同い年で店が近いため帰り際等によく話している仲。
同年代の水兵と比べるとやや幼稚な面もあるが純粋で、かつなかなかに鋭い。
戦闘では短剣を使い、体の小ささを生かして俊敏に動き回り、隙を見て確実に攻撃を当てる…という戦法を得意とする。
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