第4話
身体が軽くなる感覚に襲われた。
ステータスを確認すると探索者としての才能が上がっていた。
探索者がダンジョンで優遇されている点。そして、その理由とも言える異能が解放できるようになっていた。
ちょうどいい。そう思いその異能をアクティベートする。
「ストレージ」
対象を念じ、そう宣言すると先程までそこに転がっていた一角兎の死体が虚空へと消えていった。
そして俺の目の前に存在するウィンドウに一角兎の一文が追加された。
そう、探索者が当たりの才能と呼ばれるている理由。それは序盤にこの二つの異能に目覚めることができるという点にある。これがあるだけで成功は約束され、どんなパーティからも勧誘を受けることは間違いないだろう。
元の世界に戻った時のことを考え浮かれる気持ちを切り替える。
急な状況であったがゆえ、俺の手元にあるのは元の世界から持ってきた探索用のカバンと支給品のスマホだけだ。
新人ダンジョン後に才能にあった武器を借り、少しだけ低級ダンジョンに潜ろうと準備はしていた。そのため中には多少の飲食物やアイテムは入っているが切り詰めて2日ほどだろう。
それ以上の期間それだけで生活できるほどの物資はなかった。
早いところ人が住む場所か住める場所を見つけることができなければ飢えて死んでしまうだろう。
俺はマップを頼りに道を探すことにした。
敵が多いな。
森を彷徨っていると何度も一角兎やスライムといったモンスターに遭遇する。
索敵に慣れないうちは戦闘になることも多かったが、それを続けていると体力が持たない。そう判断し索敵にさらに気を使うようになった。それからは接触を避けれるようになっていた。
一時間近く歩いているとマップの端に変化が現れた。
僅かに水色が映った。さらに進んでいくとそれは鮮明になり、そこには水辺が存在した。
貴重な水が入手できるかもしれない。
そう考えた俺は水辺に向かうことにした。
辿り着いた先は木々の隙間から溢れる光を反射し、水面がキラキラと光る姿はとても美しい湖だった。
ストレージに収めていたカバンから水質検査キットを使い飲める水かを調べる。
幸いにも検査結果に異常はなく飲んでも問題はなさそうだった。
ペットボトルに水を汲み、モンスターの気配を感じないことを確認するとちょうど良いサイズの石に座り休息を始める。
「ふぅ」
張り詰めていた気持ちをため息と共に吐き出す。
今のところ一角兎やスライムなどの低レベルのモンスターとしか戦闘を行っていないが、それでも訓練通りの動きを出せていることにホッとする。
この世界のモンスターの強さがどんなものかは分かってはいないが、この森で生き抜くだけならできそうだと感じていた。
そろそろ行くか。
疲労度を考えながら長めにとった休息を終え、また歩き出した時だった。
その先から悲鳴が聞こえてきた。
「きゃー!誰か助けてー!」
俺は助けることができればこの場所について聞けるかもしれない。そう思い、悲鳴の聞こえた先へと走り出した。
悲鳴の聞こえた先、そこでは人形ほどのサイズの羽の生えた少女が武装したゴブリンに囲まれていた。
ゴブリンたちは少女を下劣な目で見ているようだった。
どうしようか。策を考えている時だった。少女と目が合った。
「そこの人!見てないで助けてー!!」
一か八かといった様子で少女が大きな声で叫ぶとゴブリンたちが一斉にこちらを向いた。
「ゲゲゲゲ」
意思疎通を図るためか謎の言語を発するとこちらに襲いかかってきた。
近くいたゴブリンにボロボロの剣を振るわれる。振り回すだけのそれを避けるのは簡単だった。
しかし数が多すぎる。拙い連携ゆえに何とかなっているが、反撃の隙を探すのが難しい。
やるしかないか……。
覚悟を決めた俺はゴブリンの攻撃を転がるように避ける。地面に手を付いたタイミングで石を数個ストレージへ保管する。
一度距離を取り体勢を立て直すと同時に近くの剣を持つゴブリンへと駆け出す。周りのゴブリンがフォローに向かうが、そいつらに先程拾った石を投げつけ隙をつくる。
「グゲッ!?」
ゴブリンの剣が振るわれるよりも早く腕を蹴り飛ばす。強い衝撃にゴブリンは剣を地面へと落としてしまった。
すぐさまその剣を拾い攻撃をしかける。ボロボロの剣とは思えないほど綺麗な断面でゴブリンを真っ二つにする。
すごい。真っ二つだなんて。これが剣神の才能か……。
こんな状況だが自分の実力を一番分かっていたからこそ驚愕した。
剣術は同学年でも上位に入るほど得意では合ったが、ここまでの実力は無かった。
剣の振りやすさもそうだがら剣をどう振るえば良いのか直感的に理解できる。
そこからは一瞬で方がついた。剣神に剣を渡せばどうなるか分かるであろう。鬼に金棒、その言葉で表せるほど圧倒的だった。
武器を振り回すだけしかできない数匹のゴブリンなど烏合の衆にすぎず、逃げることすら許さなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます