第2話

 あの大広間を出た俺たちは食堂に案内された。


 自分の席へと座ると食事が運び込まれてきた。運び込まれてきた料理を見た少年たちが目を輝かせるほど豪華な料理だった。


 これは……。


 一口食べて思ったのだが、この世界の食材の味はダンジョン産の食材にそっくりだったのだ。


 ただ、香辛料がふんだんに使われており、美味しいとは感じなかった。

 ただそう思ったのは俺だけのようで少年少女たちは美味しそうに食事をしていた。


 確かに地球の普通の食材だダンジョンから獲れる食材では天と地ほど味の差があるのは確かなのだ。


 食事を終えた俺たちは美女からの提案で自己紹介をすることとなった。


「私の名前はアンネローゼ、この国の王妃になります」


 豪華なドレスに身を包んだその姿に映画のワンシーンのようだった。

 王妃と告げられても納得してしまうだけの魔の美貌。それが彼女にはあった。


「俺は小鳥遊大和たかなしやまと。星凛高校に通う高校2年生だ。他の三人と同じ生徒会に所属していて、庶務を務めている!」


 髪を金色に初め、中途半端にオシャレに気を使っている感じはまさに高校デビューをしました。といったところだろうか?

 大和はこちらを向くと勝ち誇ったような笑みを浮かべる。


「私の名前は高槻凛たかつきりんと申します。星凛高校に通う高校3年生です。生徒会では会長を任せていただいております。よろしくお願いします」


 髪を腰まで伸ばし、ぺこりとお辞儀をする彼女は大和撫子の姿を体現したかのようだった。


「私の名前は小鳥遊千穂たかなしちほです……。星凛高校1年生です……。書記です……「そして俺の妹だ!!!」


 前髪が目元まできており、眼鏡をかけている少女はか細い声で自己紹介を行うが兄を名乗る大和が途中で遮ってしまう。


「私は高柳陽奈たかやなぎひなって言いまーす!星高2年で副会長やってまーす。よろしく!」


 髪を茶色に染め、唯一制服を改造していたギャルの少女は無理して元気を出しているように感じられた。


 みんなの視線が注目する中、席を立ち上がる。


「俺の名前は松下龍空。DSSを先日卒業した物だと。年齢は20と少し高めだと思うがよろしく頼む」


 ここまでの彼らの言動に違和感を持った俺は自己紹介で一度試すことにした。

 探索者専門学校とは別名ダンジョン・シーカー・スクールと呼ばれ、DSSと略されることが多い。

 手の内を晒したくなかったこともあり、略称で答えさせてもらった。


「DSSとは何のことでしょうか?」


 みんなを代表するように高槻が俺に質問する。

 これで一つ分かったことがある。

 彼女たちは俺の住んでいた地球とは別の世界からこちらに来たのだと。


「すまない。俺の通っていた専門学校の通称だ。忘れてくれ」


 厨二病か何かだと思われたのか憐憫の眼差しでこちらを見られる。

 そう思われても仕方がない……か。


「皆様には明日から訓練に参加して頂きたいと考えております。内容につきましては明日の朝食時に話させていただこうと思います。皆様もお疲れのことだと思いますので今日は部屋まで案内させていただきます」


 自己紹介が終わるとアンネローゼがそう言い手を叩く。すると数人のメイドが現れ俺たちを各人に振り分けられた部屋へと案内していった。


「こちらがリク様のお部屋になります」


 俺が案内された部屋は廊下の片隅にあった。ここまで来る途中に見た部屋に比べると呼ばれるかなり簡素な作りになっていた。


「ありがとう」

「何か用事がございましたら部屋に備え付けられておりますベルでお呼びください。それでは失礼いたします」


 ぺこりとお辞儀をするとメイドは去っていった。


 部屋を探索するとありがたいことにシャワーが備え付けられてあった。

 そのシャワーを浴びた俺はベッドへ寝転び今日起きたことについて考えていた。


 そこで一つの疑問が浮かんだ。

 俺は確かにダンジョンへ入った。ならばステータスを与えられていないのはなぜだろうか?


 原因を探るために元の世界に伝わる言葉を口ずさんだ。


「ステータスオープン」


 そう言うと俺の目の前には今日見たステータス画面ではなく、今まで欲しがっていたスキルツリーが映し出された。


 そのスキルツリーに映し出された俺の才能。そこには剣神と探索者が映し出されていた。


 当たりだ!


 剣神は剣士系列の最上位であり、探索者はドロップアップやマッピングなど探索を有利に進めることができる才能である。


 剣士系列の才能だと魔法を扱うことはできないが、それでもお釣りがくるほど有能であることは間違いない。


 睡眠時間が少なかったこともあり、気づいた時には寝てしまっていた。

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