ガールズトーク

「モテるんだね、丹恋は」


 結莉が教室のベランダの手摺に手をかけて、丹恋をにやにやと見つめていた。弁当を食べ終わり、暇を持て余していたとき、丹恋が苦笑しながら昨日の出来事を話すとピラニアのように食いついてきた。


「いや、こんなの初めてだし」

「じゃあ、丹恋ちゃんにモテキが来たってことだぁ」

「一人に告白されただけじゃモテキじゃないでしょ」

「そうだねぇ」


 さっきから結莉と璃子は似たような言葉を繰り返している。基本的に丹恋を冷やかしてやろうという意識が根底にあるに違いなかった。


「で、OKしたの?」

「速攻断った。一目惚れとか実際言われたら怖いだけだし」

「そう? 恋愛ものって一目惚れから始まるの多くない?」

「フィクションだから受け入れられるんじゃないの? それに、一目惚れって言って私の中身なんにも知らないで付き合いたいなんてろくなことにならないでしょ」

「丹恋ちゃんは大人だねぇ」

「そんなんじゃないから。それに、そいつの視線がなんかエロかったのが気色悪くてさ。どこに一目惚れしてんだよ、って感じ。はい、この話は終わり」


 丹恋が強引にこの話題を切り上げたとき、救いの手を差し伸べるようにチャイムが鳴った。昨日から徐々に授業が始まっていて、今日は午後一番で体育があった。小耳に挟んだ情報によると、初回は本館に接するグラウンドで二クラス対抗のドッジボールが行われるらしい。

 昼食後に激しく運動して弁当の白米やら焼売が食道を上がってこないだろうか。丹恋はそっと胃のあたりを撫でた。

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