第5話 調教その3(好きな人と本当のこと)
【重大告知!明日の配信では登録者数700万人記念、質問コーナー&重大発表!?リンが好きな人は絶対に集まれー!!】
〔質問考えるのに今日1日費やす、定期〕
〔重大告知ってなんやろ、オフ会とか?〕
〔重大告知楽しみすぎるんだが…。気になりすぎて夜しか眠れん…〕
リンのTwitterにて、明日の配信についての告知を見ていた。
今日で通話も最後か…。
それにしても重大告知ってなんだろ…。
「今日は、特に教えることもない気がするな…」
動画を漁りながら、つぶやく。
リンとの繋がりが消えかけているこの状況への虚無感がでかい。
今日は、ただ話すだけじゃダメかな…。
∴∵∴ ୨୧ ∴∵∴ ୨୧ ∴∵∴ ୨୧ ∴∵∴
コール音が1音も鳴り終わらないうちに今日は通話が繋がった音がした。
今日は、俺が深呼吸をする。
今日で終わり、これが最後…。
「もしもし」
『あ、もしもし!』
「今日は出るの早かったな。昨日言ってた用事とやらは大丈夫なのか?」
『あはは、今日で通話最後だと思ったらスマホ持って待機しちゃってて…。それで早かったんです。昨日の用事は…実はありません!この通話のためにこの時間はちゃんと何の予定も入れないようにしてるので…。駆け引き、してみようと思ったんです…』
「そんなことだろうとは思ったけど…。俺は恋の相手じゃないんだから駆け引きなんて必要ないだろ」
『…恋の相手じゃない…ですか…』
「ん?なんか言ったか?」
『い、いえ!そうですね、使う相手間違えちゃいました!でも、実践練習も大切ですよねっ』
「そうだな…。そういえばさ、リンって本名なの?」
『本名ですよ!凛とするの凛です!』
「いい名前だな…。でも、自分で聞いといてなんだけど活動者が本名を視聴者に言っていいのか?」
『へ?悠斗くんはもうただの視聴者じゃありませんから。特別です!』
「…。っ、そうか…」
『はい!悠斗くんは漢字どう書くんですか?』
「悠久に悠に北斗七星の斗」
『かっこいい名前です…!うふふ』
「何笑ってんだよ?」
『なんとなく、普通の会話ができるのが嬉しくて…』
「…。俺もだよ…」
『あ、あの!ずっと気になってたんですけど…!』
「お、おう…」
『悠斗くんって彼女いるんですか?』
「…。生まれてこの方いたことねえよ。てか、俺の気にしてどうすんだ?誰得情報だろ」
『…私得情報です…』
「ん?なんて?」
『な、なんでもないです!気にしないでくださいっ!』
「そ、そうか…」
『あ、あの。じゃあ、好きな人は…』
「…」
『…?』
「いる…かも…」
『かも…?』
「うん、よく分からん。元々めちゃめちゃ好きだけど。それが恋愛のそれに変わっていってるのかどうなのか確信がない」
『な、なるほど…?でも、いるんですね…。同じ高校の人ですか?』
「…いや、会ったことない…かな」
『そ、そうなんですか…!?じゃあ、私にもチャンスあるってことでしょうか…』
「チャンス?なんの?」
『な、なんでもないです!!』
「そ、そうか。そっちは彼氏はいたことないにしても、好きな人は?」
『へ、え、えと…』
「無理に言わなくてもいいけど」
『い、います!好きな人…』
「いるんだ…。同じ高校?」
『い、いえ!声しか聞いた事ありません…』
「ふーん…。そう、なんだ…」
『はい…、そう、なんです…』
「…」
『…』
「きょ、今日でこの通話も終わりだな」
『そ、そうですね…。最後、ですもんね』
「寂しいって言ったら変なのかもしれないけど…。やっぱり終わるのは寂しいよな」
『私も寂しいです…。一日の中で楽しみな時間でしたから…』
「変なやつ…。そっちからしたらもう変な講義聞かなくてよくなるんだぞ?」
『そういう問題じゃないんです!通話が終わるってことは、悠斗くんとの繋がりも無くなるってことだなって思ったら寂しくて…』
「あのなぁ…。お前、好きな人いるなら誰にでもそういうこと言うのやめた方がいいぞ?」
『誰にでもは言いません!悠斗くんにしか言いませんから…』
「…そういうやつだよ。好きな人だけ特別扱いしろ。男なんて勘違いしやすいのばっかりなんだから」
『悠斗くんも勘違いしますか?』
「俺は、リンの恋愛耐性の無さを知ってるから大丈夫。でも他の男たちはリンは恋愛を知り尽くした女だと思ってるわけだから、勘違いされちまうかもしれないぞ?ほら、思わせぶりも恋愛テクのひとつだって話しただろ?」
『悠斗くんになら勘違いされても…いいって。思うんです…』
「……。俺だって男だからな、言われすぎると、勘違いしちまうかもしれない。そうなる前に切るわ」
『え?切っちゃうんですか?』
「おう、明日の配信に備えて早めに寝た方がいいだろうしな」
『それは…そうですけど…』
「今まで…まあほんと短かったけど楽しかった…よ。じゃあな、明日、頑張れよ」
『はい、ありがとう…ございました…』
残念そうなリンの声を残して、通話は終わった。なんの時間だったんだろう。
たくさん勘違いしてしまいそうなことを言われたけれど、きっと全部鵜呑みになんてしちゃいけない言葉たちなんだろう。
そして、俺の中のこの気持ちもきっと、確実なものにしちゃいけないものなんだと。
そう思うんだ―。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます