知らないフリをあなたに。

第8話 交差する想い

「大河内くん、おはよう！」

「おはよう、友美」

「学校は慣れた？」

「まあ、」

「ほんと！よかった！実はちょっと心配してたの。大河内くん他の人とは何だか違うから。」

「友美のおかげだよ。」

「そうかな？ならいいんだけど！」

「ちょっとちょっと〜！

何してるのよ〜！」

清水が茶化しに来た。

「それはこちらのセリフだわ。」

友美は言った。

「嫉妬しちゃうんですけど〜ぼきゅ〜」

「清水、あなたねぇ…」

呆れた顔で友美は言う。

「大河内くんのこと好きすぎじゃないの」

「べ、別に

親友として心配and祝福をしに来たんだ！」

(好きって？

俺にはわからない好きが

このモヤモヤはなんなのだ？こんなのはじめてだ)

「祝福？どういうことなの？」

「だって、お前ら付き合ってるんじゃないのか？」

清水は暗い表情で言った。

「付き合ってないわよ？それにどうしてそんなに暗い…」

「本当か！本当なのか！？」

清水は嬉しそうに言った。

「本当だけど一体何なのよ…」

友美は呆れていた。

「ならいいんだ！じゃ！」

「ちょっとどこに…」

「バ！イ！ト！」

「あらそう。」

「清水くん！」

大河内は勇気をだして呼んだ。

「なあに？」

「バイト応援してるよ。」

「ありがとう。嬉しい。」

清水はにっこりとした顔でバーへ向かった。

「と、友美」

大河内は聞きたかった。付き合うとは付き合ってないとはどういう事なのかを

「どうしたの？」

「付き合うってどういうことなんだ？」

「難しい質問ね。」

友美は少し考えた。眉間にシワがよっている。だが、そんなところすら大河内は愛おしく思っていた。

「付き合うって契約みたいなものだと思う」

「契約？」

「あなたはわたしのもの、わたしはあなたのもの、みたいな」

「それは…」

「それがいいのか悪いのかわたしにはまだ分からないわ。でもわたしはねそんなことはどうでもいいの。好きで愛する人が幸せならそれで、そばに居るだけでいいの。」

そう言った友美の顔を見て大河内は複雑な気持ちになった。これもまたはじめての感情だった。何かは分からないが嫌な予感がした。

「わたしね、好きな人がいるの。」

その一言で大河内の心は土砂崩れのように崩れ落ちた。何人殺そうが、何人裏切ろうが感じたことの無い痛みだった。辛い、痛い、だがどうしたら治るのか、絆創膏を貼る？消毒液をつける？いいや違う。大河内には分からなかった。

ただ黙って友美の話を聞いているしかできることは無かった。

「それでね、その人には好きってこと言えてないんだよね。言ったら関係を壊してしまいそうで、今まで過ごしてきたように過ごせなくなってしまいそうで…。」

大河内には少しわかるような気がした。

友美に愛してると伝えて何になる？僕の標的はあなたです。上から命令されたら今すぐにでも殺さなければいけない。そんなこと言えるわけが無い。

「わかる。僕もそんな感じだから。」

「えっ！なに？！大河内くんにも好きな人がいるの？初耳なんだけど！」

友美は興味津々だった。まさかその相手が自分だとは夢にも思っていないだろう。

まさかその人が自分を殺そうとしてるなんてことも。

「ああ。まあ」

大河内は頷いた。

「ええ！誰なの？だれだれ？」

「それは…」

「うんうん。」

「秘密だ。」

さすがに言えるわけなかった。

「えー。まあいつか教えてね、。いつか」

「ああ、いつか。」

今はただこの日常が続けばいいのに、

そうみんな願っていた。