第2話

 ─いつになったら「救済」は訪れる


 遺構のモニュメントに触れた瞬間から、男はずっと考えている。


 ワールド0、そこは男が生まれ育った世界だった。科学技術が発達し、豊かな生活を送ることができる世界。


 科学技術の進歩は目覚ましく、人々の活動領域は次元の超越という段階まできていた。

 

 その先遣隊として、初めて次元の狭間を訪れた一行。そこで目にしたのは、秘匿されるように狭間に建てられた遺構とモニュメントだった。


 暗い宇宙空間に検出された時空の歪みを、次元空間艇でこじ開ける。

 艇を降りる一行。彼らに邪悪さなどは一切なく、ただ知的好奇心の赴くままに行動していた。


 作った者は分からない。いつ頃作られたものか、それもまた分からない。

 何気なしに近づき、触れた時から、男の人生は大きく変わった。


 ─役職ドラグーン?なんだこれは


 ぼんやりと頭の中で、その文字列がイメージとして浮かんでいた。


 ─元の世界を取り戻したくば、狭間の民を討ち滅ぼす?それが次元の扉を開けてしまった罪?


 ─救済を……!


 頭に浮かぶイメージが、さながら音声となって脳内を駆け巡る。


 ふと後ろを振り返ると、共に調査に来ていたクルー達の姿は既になかった。次元空間艇で開けたスペースはみるみる閉じていく。

 遠くに見える母星が黒く染まっているのは、気のせいだろうか。


 男はパニックになっていた。このまま次元の狭間に取り残されては、死んでしまう。


 ─さあ、行きなさい


 その瞬間、男は目の前が真っ暗になった。そして目を覚ますと、草木の生い茂る大地に横たわっていたのである。

 

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