悠久と黄昏のドラグーン

ロボットSF製作委員会

第1話

 ─また救えなかった。


 灰燼に帰した大地、そこはかつて、緑豊かな楽園であった。

 その不毛な大地にそびえ立つ王宮。今まさに男の眼前で燃え落ちていくその建造物には、数億の民を束ねる勇敢な王が立て籠もり、邪悪な敵に抵抗を続けていた。


 そんな戦いも、まさに終わりを迎えている。この次元には、もう「奴ら」と戦える戦力も、戦意も、残ってはいない。


 奴らは今しがた刈り取った王の首を掲げ、キーキーとした特有で気色の悪い高音で騒ぎまくっている。


 ─まただ。また救えなかった。


 男は後悔し、苦悩した。だが、既に9つ目の世界を見捨て、新たな戦場に赴く覚悟は出来ていた。


 ─すまない、すまない。


 悠久を旅するドラグーンでありながら、行き倒れていた自身を救世主だと崇め、生活を顧みずに宿や食事を用意してくれた村人達。

 その噂を聞きつけ、自軍へと招き、共に世界の終末に抗った勇敢な王と戦士達。

 恐怖に屈することなく最後まで彼らに付き従い、よく世話をしてくれた女子供達。

 

 そんな彼らが蹂躙され、凶刃に貫かれ、断末魔と血飛沫を撒き散らして死んでいく姿を背に、男は次元の扉を開き世界を後にする。


 黄昏のドラグーンは、未だ世界を夜明けへと導かず。彼の行くところに待つものは、ただ死のみであった。


 

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